もっとも小さいSモデル、アウディS1に試乗|Audi
Audi S1|アウディ S1
もっとも小さいSモデル、アウディS1に試乗
アウディのもっともコンパクトなモデル「A1」をベースにした「S1」。小さいボディに、最高出力231psを発揮する2リッターターボエンジンを搭載し、Sモデルらしくフルタイム4WD、クワトロが奢られる。アウディの全ラインナップでも希少となったMTのみという設定も特徴的といえる。そんなアウディのホットハッチ、S1に塩見智氏が試乗した。
Text by SHIOMI SatoshiPhotographs by ARAKAWA Masayuki
A1にぶちこまれた2リッターターボ
先日、A1に1リッター3気筒直3ターボエンジンを搭載したモデル、「A1 1.0TFSI」が追加された。最高出力95ps/5,000-5,500rpm、最大トルク16.3kgm/1,500-3,500rpmとカタログ上は控えめなスペックだが、実用域では力強く、7段デュアルクラッチ トランスミッションのギアリングの適切さ、伝達効率の高さも手伝って、車重1,120kgのクルマを活発に走らせるのにじゅうぶんだった。
アウディ史上もっとも小排気量で、JC08モード燃費22.9km/ℓともっとも燃費がよく、249万円からともっとも安い、記念碑的なモデルといえる。
3気筒だが、振動、騒音もよく抑え込まれていて、これならもう従来の1.4リッター直4ターボエンジンの搭載モデルは必要ないかも――とおもわせるのだが、おそらく交互に乗り比べれば1.4のほうがよりスムーズで、より静かで、よりパワフルなはずだ。プレミアムブランドはヒエラルキーを維持するためのつくり分けが非常にうまい。
とまぁ、1リッターと1.4リッターのどっちにしようかと迷う「A1」なのだが、そのA1に2リッターターボエンジンをぶち込んでしまったのが「S1」だ。アウディのスポーツモデルに「S」という車名が用いられるのはいつものことで、A1のスポーツモデルだからS1。もっとも小さいSモデルだ。
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「舐めるなよ!」
S1の場合、最高出力231ps/6,000rpm、最大トルク37.8kgm/1,600-3,000rpmを発揮する。最高出力も最大トルクも、実に3気筒のA1の2倍超。車両重量は1,360kg(S1スポーツバックは1380kg)に過ぎず、パワー トゥ ウェイトレシオはわずかに5.9kg/ps。
A1はFWDだが、S1はもちろんエンジン横置き用のクワトロ(4WD)システムが採用されている。現代のクルマとしては珍しく、トランスミッションは6MTのみ。S1をテストしたのはこれで2回目。2014年末、まだ噴火騒動前の箱根ではじめてドライブした時の興奮を、半年以上たった今でもおもい出せる。最初にエンジンをかけた時、小さい図体に似合わぬ野太い排気音を響かせたのだが、まるで「舐めるなよ!」と言われたようで少したじろいだのだった。
すべての操作系の剛性感が高く、バケットシートのホールド性も高いので、否が応にもその気にさせられる。“普段よりシートバックを立て気味にして運転したくなるクルマ”という表現は伝わるだろうか。
ゴリゴリとしながらも滑らかというほかない独特のフィールを感じさせる球状のシフトノブを動かして発進。現代のクルマらしく、ステアリングもクラッチペダルも重くない。
発進時に少々ラフなクラッチミートをしても、瞬時に必要なだけトルクがリアへ配分されるためにホイールスピンせず、そのまま乱暴な発進という結果につながる。低回転からトルクの厚さを感じさせ、踏んでいけばどんどん速度が上がる。ATに慣れきった身にはアップシフトが忙しい。けど楽しい。
スポーティな走りを実現するため、サスペンション形式に凝ったり、そのチューニングを煮詰めたりするが、車体がコンパクトであるということは、大前提として素晴らしい。
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小粒なほどピリリと刺激的
ステアリング操作に対し、素早く、正確に必要なだけ曲がってくれる。さすがに最近では、スポーティモデルといえども足まわりガッチガチというモデルはほとんどない。S1もその例に漏れず、ソフトではないがじゅうぶんに快適だ。4WDだからトラクション能力は高いし、コンパクトだからコーナリング性能も高い。つまりむやみに足を硬くする理由がない。
ボディの種類によって、3ドアの「S1」と5ドアの「S1スポーツバック」がラインナップされる。ホイールベースはおなじ2,465mm、全高が15mm高いだけなので、スポーツバックのほうが、リアがあきらかに広いというわけではないものの、乗降性のよさを考えると、3人以上乗車する機会が多い人はスポーツバックにすべきだろう。
Audi S1|アウディ S1
ボディサイズ|全長 3,990× 全幅 1,740 × 全高 1,425 mm
ホイールベース|2,465 mm
トレッド 前/後|1,460/1,455 mm
重量|1,360 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒 直噴DOHC インタークーラー付ターボ
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
圧縮比|9.6
最高出力| 170 kW(231ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|370 Nm(37.8 kgm)/ 1,600-3,000 rpm
トランスミッション|6段MT
駆動方式|4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|4リンク
タイヤ 前/後|225/35 R18
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
トランク容量|210 リットル
最小回転半径|5.0 メートル
燃費(JC08モード)|14.4 km/ℓ
CO2排出量|161 g/km
価格|423万円
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