カリフォルニアで開催されたモータースポーツの祭典|Rolex Monterey Motorsports Reunion
Rolex Monterey Motorsports Reunion|ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン
憧れていたレーシングカーが目の前を爆走するイベント
モンタレーカーウィークの一環としてカリフォルニアのラグナシーカサーキットで開催されたモータースポーツの祭典「ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン」。懐かしいレーシングカーが爆音をとどろかせて走り回るこのイベントに、小川フミオ氏が足を運んだ。
Text by OGAWA Fumio
今年の目玉のひとつは100周年を迎えたBMW
憧れていたレーシングカーが眼の前を爆走する。そんなタイムトンネル感覚が大きな人気を集めるモータースポーツの祭典が、2016年もカリフォルニアで開催された。題して「ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン」。スイスの高級腕時計メーカーを冠スポンサーにいただくこのイベント、マツダレースウェイ・ラグナシーカ(日本ではラグナセカともいう)で8月20日、21日と“本戦”が行われた。ファンはキャンピングカーを連ねて事前のプラクティスからレース場に入り、戦前、戦後のスポーツカーをはじめ、アメリカ人が大好きなCANAMやトランザムといったレース車両などの走行を楽しむのだった。
OPENERSの読者にも昔のレーシングカーの魅力を知っている人は少なくないだろう。あまり縁がなくても、たとえばスティーブ・マックイーンが好きなら「栄光のル・マン」(1971年の米国映画)やプライベートショットで出てくるシェルビーコブラなどの魅力的なかたちを記憶しているかもしれない。マックイーンは70年代だからだいぶ前だけれど、今でもスポーツカーやモータースポーツはアメリカ人の趣味には欠かせないのだ。
同時期にモンタレーカーウィークの一環として「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」や「ザ・クエイル、ア・モータースポーツ・ギャザリング」などが開催される。これらが超のつく富裕層のためのイベントである一方、ラグナシーカでのモータースポーツ・リユニオンはより広い層のファンのためのものだ。レースに出走するクルマは希少価値が高く、買おうとすれば億単位のものばかりだけれど、同時に会場では数多くのユーズトカー専門店やパーツ屋が軒を連ねる。そこでクルマ談義をしたり欲しいクルマの相談にのってくれるのはクルマ好きの来場者の楽しみになっている。
2016年の目玉のひとつは、100周年を迎えたBMWが64台のレーシングモデルを持ちこんだこと。大きなブースを設置してミュンヘンのミュージアムやデザインセンターからも車両を運び入れた。航空機のエンジンメーカーだったBMWだが、いかに戦前からモータースポーツでも名声を馳せてきたかわかる展示である。実際のデモストレーションランもあり、「328(1936年発表)ってあんなに澄んだエンジン音だったんだね」などの会話が聞こえてきた。
「ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン」の楽しみ方はいろいろある。
Rolex Monterey Motorsports Reunion|ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン
憧れていたレーシングカーが目の前を爆走するイベント(2)
当時を彷彿させる息がつまるような走行シーン
「ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン」はサンフランシスコからロサンジェルス方面に2時間半ほどドライブしたところにあるマツダレースウェイ・ラグナシーカが舞台となる。1957年にここでレースが始まり、今年で50周年を迎えたCANAM(カンナム=カナディアン・アメリカン・チャンピオンシップ)やトランザムレースなどで世界的に知られるようになった。
ポルシェやマクラーレンやローラという大排気量のCANAMマシンが、15メートルの高低差の複雑なカーブの連続するコースを駆け下るさまは見ものだったといわれる。いまもモトGPのアメリカGPやアメリカン・ルマンシリーズの開催地であり、テストコースとしても多くのメーカーが利用している。モータースポーツ・リユニオンは本当のレースではないので迫力は多少違うだろうが、当時を彷彿させる息がつまるような走行シーンも堪能できる。つまり歴史のひとコマが再現されると同時に、レースとしても見どころがしっかりある。そのへんが人気の理由だろう。
個人的には大排気量、大パワーというクルマのもつ魅力の1つの側面を極限まで拡大したかのようなCANAMマシンのホンモノに出合えるのはここに来る楽しみだ。ポルシェ、マクラーレン、ローラ、それに「シェルビーコブラ」はもちろん、キャロル・シェルビーが「GT40」の前に英クーパーモナコのシャシーで作った「キングコブラ」といった希有なモデルがところ狭しと並ぶのである。フォード「マスタング」のさまざまなスポーツモデルや、シボレー「コーベット」のレーシングバージョン、それにアメリカ人が愛したポルシェ「356」のバリエーションの豊富さはさながらミュージアムだ。
米国はあらゆるものの巨大なマーケットだ。ヒストリックカーについてもしかり。会場では日本でかつて走っていたモデルも意外に多く見られて、海を渡って米国に残ったんだなあと妙な感慨にとらわれた。ただ悲しいというわけでもない。アメリカ人はクルマの来歴をきちんと理解しながら買って乗る。そしてモータースポーツ・リユニオンのように、基本的には当時のレースの年代やクラス分けをするヒストリックカースに出走する。古いクルマの文化が守られている点は大いに参考にしたいものだ。
レースカーだから走らせなくてはという考え方はいいことだ。ブツけたら大変だけれど、だから(おそらく)一所懸命に練習して乗る。ヒストリックカーを趣味で買うとはどういうことか、欧州人も米国人も近い考え方をしっかり持っている。たとえばレースで走るとか目的がなければ意味がないのだ。そんなおとなっぽいレースである。