東京モーターショー 2015 リポート|Volkswagen
Volkswagen|フォルクスワーゲン
東京モーターショー 2015 リポート
持続可能な社会に向けて電動化をすすめるVW
9月に発覚したディーゼルエンジンの排出ガス不正問題で揺れるフォルクスワーゲンだが、東京モーターショーには予定通り大きなブースを構えた。不正は問題としつつも、彼らの持続可能なモビリティに対する取り組みはディーゼルだけではなく、さらなる先へ進みつつある。
Text by OGAWA FumioPhohographs by ARAKAWA Masayuki
ディーゼルエンジンのゆくえ
白とブルーを基調に広い面積を使ったブースでの記者会見が、押すな押すなの満員となったフォルクスワーゲン。当然、一般誌(紙)やテレビの記者が期待していたのは、米国でのディーゼル排ガス検査での真相について。「ご迷惑をおかけして申し訳ないです」。フォルクスワーゲン グループ ジャパンのスウェン・シュタイン代表取締役が、来場者の前で深く頭を下げた。
フォルクスワーゲン乗用ブランド取締役会のドクター・ヘルベルト・ディース会長が、つぎに登場し、「大変ご迷惑をおかけしてお詫び申し上げます」と重ねて語った。たしかに、公的機関をあざむき、窒素酸化物の排出量を偽ったことはいかなる基準に照らしても許されることではない。米国では、自車の排出する窒素酸化物の量が、自分が信じていたより多かったことを知ったユーザーで、リコールを望むひとも当然いるだろう。
日本では、米国のリコールが響いたのだろうか、ディーゼルモデルの導入が遅れると発表された。外国の話とはいえ、新聞やテレビの報道に影響されたユーザーの心理を考えての決定と思われる。「導入は予定どおりおこなう。しかし、導入時期については見なおす」。スウェン代表取締役はそう語った。新型「パサート」や、まもなく日本市場に導入される新型「ティグアン」にも搭載予定だったはずだが、しばらくおあずけだ。
静かでトルクがたっぷりあって ―― というフォルクスワーゲンのディーゼルエンジンのできのよさを知っている身としては、導入延期は残念に思える。アンモニア(尿素)を噴射して窒素酸化物を無害化するSCR触媒を装着した、いわゆるユーロ6規制対応の“クリーン”ディーゼルまで、アレルギー反応で拒絶してしまうのはもったいない。
フォルクスワーゲンは、しかし、環境性能はけっしておろそかにしてしない。
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持続可能な社会に向けて電動化をすすめるVW (2)
進む電動化
フォルクスワーゲン グループ ジャパンの戦略は、ドイツ本国に準じたものになりそうだ。「innovate」(発明する)と書かれたパネルを前に並べられたのは「e-up!」「e-Golf」といった電気自動車。他メーカーに較べて早い導入だったが、とりわけゴルフは、先取の気性に富んだユーザーが少なくないため、欧州でのセールスは好調だという。
電気自動車と並んで、あるいはそれ以上に、ラインナップにおける核となっていくのは、プラグイン ハイブリッドだ。フォルクスワーゲン グループ ジャパンでは、「ゴルフ GTE」「パサート GTE」、さらに2016年導入予定の「ティグアン GTE」を並べた。
「GTE」というサブネームが示しているように、これらのモデルはプラグイン ハイブリッドでありつつ、走りのよさを追求したところに特徴をもつ。すでに日本市場に導入されている「ゴルフ GTE」で価格は499万円。ただし「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金」が約38万円交付されるなど、税金とともに購入価格はここから下がるだろう。
フランクフルトの自動車ショーでお披露目されたばかりの「ティグアン GTE」が、このショーでベールをとられた。発売は少し先になりそうだが、ゴルフとプラットフォームを共有するため、操縦性も期待できる。
しかもこの環境適合車は、あたらしい技術としてソーラーパワーも燃費に役立てていることが注目に値する。ルーフにソーラーパネルをはめこんであるのだ。南欧や日本のように太陽光線が強いところでは充電効率がよくなり、トータルで年間1,000キロぶんの充電をカバーするそうだ。
日本では販売されていないが、フォルクスワーゲンブランドのトップモデル、「フェートン」は新型を開発中だったものが、先頃、一時的に中止するという発表があった。あらたな開発計画では、次期フェートンは電気自動車になるという。フォルクスワーゲンの未来戦略は、東京モーターショーのブースでも垣間見えるはずだ。