YVES SAINT LAURENT|インターナショナル メイクアップアーティスト、ロイド・シモンズ インタビュー
BEAUTY / FEATURES
2015年1月26日

YVES SAINT LAURENT|インターナショナル メイクアップアーティスト、ロイド・シモンズ インタビュー

YVES SAINT LAURENT|イヴ・サンローラン
イヴ・サンローランのあたらしいメイクアップクリエイションの担い手

ロイド・シモンズ インタビュー(1)

2011年1月某日、イヴ・サンローラン・ボーテのインターナショナル メイクアップアーティスト、ロイド・シモンズ氏が初来日した。彼が現職に着任したのは2010年6月で、彼の手による本格的なイヴ・サンローラン・ボーテのメイクアップコレクションは、今年の秋冬まで待たなければならないが、1月に発売された「ルージュ ピュール クチュール」、そして4月1日(金)発売の4色アイシャドウ「ピュア クロマティックス」と「ロングラスティング アイペンシル WP」は、彼がクリエイションにかかわっている。

インタビュアー=國藤直子(STRIPE)
写真=JAMANDFIX

この溢れるような色彩は、いったいどこから生まれてくるのだろうか?

まず、目をそらすことができないほどの強さで迫ってくるのが、「ピュア クロマティックス」の色彩の美しさ。さまざまな光沢に彩られた4つのハーモニーに一瞬で恋に落ち、そしてまぶたにのせれば、つぎつぎに感動が呼び覚まされる。というのも、ドライでも専用アプリケーターでウエットでも使え、ミックスしたり、レイヤリングしたり、ブレンドすることもできるし、ラインにも、広範囲にのばすことも自由だから。

「単色で、または組み合わせて使用できるように、調和をもって、あるいは対照的な効果を生み出すべく考案しました。ビロードのように繊細な淡い色合いからシャープでエッジーなラインまで。そして、かすかな優しい輝きからクロムメタリックの強い輝きまで万華鏡のように、ひとつのパレットでたくさんの色彩と光を表現しました。しかも、革新的なフォーミュラによって、控えめなデイタイムのメイクから、ドラマティックな夜のメイクまで、だれもが自在に簡単にアイメイクを楽しむことができるのです」と、ロイド・シモンズ氏。

イヴサンローラン|ロイド・シモンズ 03

4月1日(金)発売の新作

イヴサンローラン|ロイド・シモンズ 06

インタビュアーの國藤直子さんとロイド・シモンズ氏

理路整然と説いてくれる彼に、勝手に“理系のイメージ”を抱きながら、この溢れるような色彩は、いったいどこから生まれてくるのだろうか? と大きな疑問が。

「色は私の内側からわき上がってくる感性、人生の一部です。私は色で遊び、色に動きを持たせます。色が互いに引き立て合うとき、そこには全宇宙が存在します。色こそが、私が自己を表現する術。私にとって、色とは生命力であり、躍動力であり、創造力であり、舞踏や演劇など、ありとあらゆる表現がもつ力です。すべては色と光が根源なのです」

色について、ストイックなまでに突き詰めているからこそ、“色の魔術師” と称されているのだな、と納得。では、色そのもののインスピレーションの源は、いったいどこから? パリでは美術館に足を運んでアートに囲まれた生活をしているようだけれど、それだけではもちろんないようだ。

「インスピレーションの源は、私の身のまわりのすべてといえます。たとえば、この窓から見える(と、インタビュー中の部屋から見える向かいのビルを指して)葉の緑や、そこに差し込む光の具合、背景のレンガなどに美しさを感じることができます。ここからストーリーが生まれるのです」

なにげない生活のなかから必要なものだけをさっとすくい取って、記憶のなかに刻みつける。私たちもおなじように、さまざまな色や光を見ているはずなのに、なんと感じ取る能力の差があることか!

YVES SAINT LAURENT|イヴ・サンローラン
イヴ・サンローランのあたらしいメイクアップクリエイションの担い手

ロイド・シモンズ インタビュー(2)

色に命を吹き込むのが、ロイド・シモンズ氏の仕事

そんなロイド・シモンズ氏が、特別に「パワーを感じた」というのが、昨年、パリのプチパレで開催されたイヴ・サンローランの回顧展だ。

「20世紀の偉大なデザイナーである、イヴ・サンローランの圧倒的なまでの力強さを感じました。パーフェクトなフレームからはみ出すような冒険心、クラシカルなエレガンスのなかに見え隠れするグラマラスな危険性……。彼にとって色とは、自分らしさであり、人生への賛辞であり、またすべての女性を愛することでもあるのです。すべての色が互いにかかわりあい、ひとつひとつが感情を物語ります。そんな彼のパワーを、なんとかして私が表現しなければと思ったのです。それは、内面のさまざまな色をつうじて、ひとりの女性の魂を表現することにほかなりません」

ロイド・シモンズ氏が莫大なアーカイブを見ることは、イヴ・サンローランの頭脳に分け入り、イヴ・サンローランの宇宙を探検すること。その宇宙をいかに表現するかが、ロイド・シモンズ氏に課せられている。この大任には、想像できないようなプレッシャーが伴いそうだけれど、このときばかりは、彼の厳しい目が柔和な笑みをたたえた。

イヴサンローラン|ロイド・シモンズ 10

イヴ・サンローランの回顧展のカタログより

イヴサンローラン|ロイド・シモンズ 12

イヴ・サンローランの回顧展のカタログより

「世界的なメゾンである、イヴ・サンローラン・ボーテのインターナショナル メイクアップアーティストという仕事に就けたのはとても光栄なことです。私の人生で、もっともエキサイティングなできごと。色をつくりあげるということは、女性を美しく見せるストーリーを生み出すことでもあるのです。メイクに完結はありません。一番重要なことは自分を知ること。色をつうじて自分を再発見し、自分のパーソナリティや輝きを表現してほしいのです」

色に命を吹き込むのが、ロイド・シモンズ氏の仕事。まさしく、白いアトリエで色と“対峙している”彼のVTRを見せてもらった。何枚にもおよぶアイカラーをつけた紙と、リップカラーをつけた紙をあれこれ置き換えて、ぶつかり合う色はどれか、調和する色はどれかなどを見ていくのだ。その表情はとても真剣。

「ふたつ、あるいは3つの色を融合させると、ストーリーが生まれます。それは、もうたんなる色ではありません。色は互いに共鳴し、変化し、まったく別のものに生まれ変わります。その体験は、とても刺激的。色のストーリーを生み出すときは、ものすごく集中します。音楽も好きですが、私にはバックグラウンドでの、ながら聞きはあり得ない。音楽を聴くときは、コンサートに行ってきちんと聴きます」

これまで彼が蓄積した財産をいかに色で表現するか、真価が問われる一瞬。研ぎすまされた集中力によって、ときには色自らが「私を見て!」と彼にアピールしてくるように感じることもあるという。色たちも、彼に選んでもらえて本望だろう……。

YVES SAINT LAURENT|イヴ・サンローラン
イヴ・サンローランのあたらしいメイクアップクリエイションの担い手

ロイド・シモンズ インタビュー(3)

理想のイヴ・サンローラン ウーマンとは

そんな彼から生まれた、もうひとつの4月発売の新作「ロングラスティング アイペンシル WP」も、定番のブラックやブラウンにくわえ大胆なブルーやグリーンが印象的。

「ラインを描いてすぐなら、ぼかすことも可能。そのかわり、いったん定着すると泣いても、泳いでも登山しても(笑)だいじょうぶ!」と、茶目っ気を交えてアドバイスしてくれた。

さらに、昨秋にデビューした口紅「ルージュ ピュールクチュール」は、「シャープで力強い赤の表現が魅力。この1月の新色は、そこに、ときに官能的でありながら洗練され、ぞくぞくするほど斬新なピンクの深い色合いをプラスしました。ブランドの象徴であるフューシャピンクをふくめ、ピンクという色は想像以上に多彩な広がりを見せるのです」と、ピンクに秘められたこだわりを語ってくれた。

イヴ・サンローランのメイクアップクリエイションは、ロイド・シモンズ氏によって、あたらしい息吹を与えられ、これから大きく羽ばたこうとしている。

イヴサンローラン|ロイド・シモンズ 14

イヴ・サンローランの回顧展のカタログより

イヴサンローラン|ロイド・シモンズ 16

イヴ・サンローランの回顧展のカタログより

「イヴ・サンローラン ウーマンはいくつもの顔をもっています。どんなスタイルにも縛られることなく、自分自身でありつづけること。自分自身を表現して、ほかの誰かになろうとしないこと。自分の奥深くに眠るものや、表現したい個性と遊ぶことができる女性こそが、イヴ・サンローラン ウーマンなのです。すべての女性の心のなかには、パリジェンヌが住んでいます。そして、すべての女性はスポットライトを浴びています。イヴ・サンローランのメイクアップで女性の小宇宙をパリの魔法で包み、女性を美しくクリエイト。私は、イヴ・サンローランの官能的で危険なまでの情熱を表現したいと考えています」

ロイド・シモンズ氏のクリエイション、本格的なお披露目は、この秋。イヴ・サンローランの頭脳をどんなふうに解釈して、あらたなエネルギーが吹き込まれるのかが、とても楽しみである。

Lloyd Simmonds|ロイド・シモンズ
カナダのブリティッシュコロンビア州生まれ。アート、バレエ、シアター、ファッション界でメイクアップアーティストとして活躍後、イタリアに渡る。その後、パリに移り住み、さまざまなファッションショーのメイクアップを手がけ、2010年6月、イヴ・サンローラン・ボーテのインターナショナル メイクアップアーティストに就任。その色彩感覚は“まるで魔法のよう”と称されている。

イヴ・サンローラン・ボーテ
Tel. 03-6911-8563
www.yslb.jp

           
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