Salvatore Ferragamo|フェラガモ パルファム ルチアーノ・ベルティネッリ氏インタビュー 02
フェラガモ パルファム 社長 ルチアーノ・ベルティネッリ氏インタビュー
春の風光、空に舞うヴァラリボン 01
春の、やわらかな木漏れ日のようにあたたかでありながらも確かな色を女性に与える香り、「インカント ブルーム」──春霖に烟る三月の東京で発表された。「インカント」と名づけられた作品はこれまでにもいくつかあったが、それらとは異なる様相で、あらたなライン「インカント カルトコレクション」の幕を開けた。フェラガモのアイコン、ヴァラリボンを添えたフォルムでフェミニティなエスプリを伝える。その新作を手に、社長のルチアーノ・ベルティネッリ氏が来日。まもなく季節は、桜の花が香りを放ちはじめるころを迎える。
文=渡部玲写真=鈴木健太
“タイムレス”の言葉で示す、「サルヴァトーレ フェラガモ」のエスプリ
――「サルヴァトーレ フェラガモ」というブランドをどのように捉え、考えていらっしゃいますか?
ご存知の通りとても歴史のあるブランドで、ちょうど2年前の2008年に80周年を迎えました。世界各国に500店舗以上あり、日本国内では約70店舗を展開。これほどの規模で展開し、“made in Italy”にこだわりをもっているブランド、それが「サルヴァトーレ フェラガモ」です。一方で、ファミリー企業という形態を今でも守りつづけているという一面もあります。世界でも希有な形態が描くブランドのイメージは、高品質なものを提供することで守り得るのだと考えています。
――今、ブランドのイメージとのお話が出ましたが、どのように思われているのでしょう?
革の国イタリアで生まれた「サルヴァトーレ フェラガモ」は、職人がハンドメイドで製品を作ることに誇りとこだわりをもっています。そして今後も変わることのない、この考え方に高い支持を頂いているのだと思います。 「サルヴァトーレ フェラガモ」のブランド マインドのひとつに、“タイムレス”があります。この言葉は“時間を超越した”の意味ですが、今のファッションブランドというものは、シーズンごとの短い時間で移り行くものだと考えられがちだと思っています。しかし、その潮流とは異なる、いつまでも愛していただける洗練された商品を提供したい。その思いは、2002年の「フェラガモ パルファム」の誕生以来、ずっと変わることなくつづいています。
フレグランスをまとう愉しみ
――新作「サルヴァトーレ フェラガモ インカント ブルーム」が、その理念の化身のひとつだと言えるのだと感じたからでしょうか、社長にとってフレグランスとはどういうものなのか知りたくなりました。
香りとは、過去の記憶や経験が蘇るものですよね。たとえば、「タスカン ソウル」(注1)。日本では2008年の秋に発売を開始したフレグランスですが、この香りが最初にできあがったときのことは今でも鮮明に思い出されます。私がまだ青年だったころ、イタリア人の女の子とビーチ──とくに朝においての──を歩いていた時に感じた、潮や柑橘系の香りが一気に蘇りました。ボトルのオレンジ色は、その記憶を紐解くのに一役買っているのかもしれません。
「タスカン ソウル」は愛用しているフレグランスのひとつで、毎日と言っていいほど使っていますね。でも、付け方や使い分けをおこなう必要はある。一日の、朝や夜の時間帯によって当然、異なります。朝、起きて地下鉄を使ってオフィスなどの公共の場所に出かけるときには軽めのものを選んでいます。かたや、隣に女性のいる夜には、男性らしさを主張するべく、強めの、個性を演出できるものを用いて楽しんでいますね。
ただ、僕自身は、自信の個性の演出という役割よりも、むしろそのときどきの感情を変えるためのものであることのほうが多い。たとえば楽しかったり、寂しかったり、辛かったり、ハッピーだったり……その自分の感情のバランスを整えるためのものが、フレグランスなのです。
――「サルヴァトーレ フェラガモ」ブランドにおけるフレグランスのポジションとは?
ファミリービジネスがベースにあり、トータルファッションブランドのなかのひとつのディヴィジョンとしてフレグランス事業を営んでいます。これはすべての事業部に共通しますが、フェラガモ ファミリーのGOサインなしでは進むことができないのです。そのなかでもっとも大切にしていることは、ファッションとフレグランスがしっかりとリンクされているということ。おなじ世界観をもちながら質の高い、愛される商品を創ること。そのための調香師は、そのときどきのイメージやストーリーに合った方に依頼しています。新作「インカント ブルーム」は、その考えを伝え得るものだと思います。
注1:サルヴァトーレ フェラガモ タスカン ソウル オーデトワレ スプレー|調香師ピエール ブルドンによって創造されたシトラスノート。ベルガモットとプチグレインで描かれる、清澄な序章にみずみずしいマグノリアやオレンジブロッサムを重ねる。精彩な女性像を映し出す、そのセンシュアルで力強い香りに“トスカーナの魂”の名を付した。(価格|6720円(40mL)、9240円(75mL)、1万3125円(125mL))
フェラガモ パルファム 社長 ルチアーノ・ベルティネッリ氏インタビュー
春の風光、空に舞うヴァラリボン 03
官能性を秘めたフェミニンの化身
――その「インカント ブルーム」ですが、若い女性に向けた香りだとうかがいました。でも、年齢というものを考えなくてもいい、世代を決めてしまうのは無粋かもしれない、と思わせる香りでした。
これまでは、若い女性に向けたフレグランスを提供してきました。そして今回の、一年以上もの時間をかけて創った新作は、自分のスタイルをもっている、20代の女性を想定したものです。でも、あらゆる年代にさまざまなシーンで、このフレグランスを楽しんでほしい。それができる香りに仕上がったことによろこびを感じています。
サルヴァトーレ フェラガモ
インカント ブルーム オーデトワレ スプレー
価格|6090円(30mL)、9030円(50mL)、1万2180円(100mL)
グレープフルーツフラワーとフリージアで幕開けし、ティーローズとチャンパカフラワーの豊潤な花のエッセンスに、フレッシュで清爽な魅力を溶け込ませたフローラル・フルーティ。ラストのムスクとカシミアウッドがセンシュアルな色を落とす、洗練のフェミニンにヴァラリボンを見る。
Luciano Bertinelli|ルチアーノ・ベルティネッリ
フェラガモ パルファム CEO
1956年、ローマに生まれる。ローマ・ラ・サピエンザ大学にて人口統計学を学ぶ。卒業後は、ブルガリ社 S.p.Aに入社。マーケット・リサーチおよびプランニング・オフィス・マネジャーにつづき、フィナンシャル・プロシージャーやシステム・マネジャーの重責を担う。その後、フェラガモ パルファムS.p.Aに入社。ワールド・ワイド・マネジメント・ディレクターを経て、2008年5月より現職。
インターモード川辺
Tel. 03-3352-7161
www.kawabe.co.jp/
(4/1 フレグランス事業部サイトオープン予定)