コスメの殿堂│ブランド#08 パルファム ジバンシイ(全4回・第1回)
Beauty
2015年3月19日

コスメの殿堂│ブランド#08 パルファム ジバンシイ(全4回・第1回)

ブランド#08 パルファム ジバンシイ(全4回・第1回)

美のカルテットに求める、あくなきエレガンス
「エレガンスの秘訣とは、自分自身であること」──ユベール・ド・ジバンシィ

ファッションメゾンとしてはあまりにも有名で、もはや、説明の必要などないかも知れない。
ユベール・ド・ジバンシィが想い描いた洗練のモード──
その長い歴史を支える人気のクチュールブランドが手がける“ビューティ”とはどのようなものなのか。それを構成する、
フレグランス・メイクアップ・スキンケア・スパについてPRマネージャーの佐藤香恵さんに聞く連載第1回。

構成と文=渡部 玲Photo by Jamandfix(still life)

オードリー・ヘプバーンとの出会い、そして彼女のためにつくられた香り

Photo by Emiko HARA

パルファム ジバンシイ
PRマネージャー

佐藤香恵さん

外資系コスメブランドを経て2006年より現職。


──ビューティ ラインをつくるに至った経緯を知る前に、まずはファッションメゾンとしての歴史から教えてください

『パルファム ジバンシイ』は、クチュリエであるユベール・ド・ジバンシィが1952年に、若干25歳の若さで自身のオートクチュールメゾンを創設、発足させたクチュールブランドです。
彼のつくりだすオートクチュール作品を発表する場所には、当時、多くの有名著名人がいらしてくださっていました。ジャクリーヌ・ケネディ、ウインザー公夫人、グレース王妃、そしてオードリー・ヘプバーンなどが顧客であったといわれています。

そのサロンでお披露目されるファッションはとてもきらびやかで、精巧なディテールであるものがつねとされていた時代に、ジバンシィが提案したものは、それに上質さを与えながらも普段使いのできるファッション。“セパレーツ”と称されるそれは、ブラウス(=“ベッティーナ”ブラウンス)とスカートに分かれ、それらは単体でも着用できる斬新なデザイン──現在では日常着としても、あるいはおしゃれ着としても当たり前のファッションを紹介しました。
サロンで紹介されるオートクチュールといえば、ドレスが主流。もちろん、ユベールはドレスも発表しましたが、革新的で多くの注目を集めたのが “セパレーツ”です。

──25歳の、若き新しい感性だから生み出し得たのですね

ええ、とても斬新なアイデアであったと伝え聞いています。そんななか、翌年の1953年にユベールはオードリー・ヘプバーンと出会います。当時の彼女は、まだまだ女優としては駆け出しで、のちに“永遠の女優”といわれるまでになろうとは想像することもできないほどの超若手でした。そんなオードリーと、26歳の新鋭デザイナーが出会うのです。
その年、1953年に彼女の主演作である『麗しのサブリナ』のドレスを仕立てたことが、彼らのその先の交遊の最初になったわけです。運命的な出会いが生んだ、そのドレスこそが映画部門でオスカー賞の栄誉に浴したものであり、ユベールの認知度をぐっと上げることになりました。以降、ユベールのデザイナー人生において、彼女は永遠のミューズでありつづけました。

──互いの人生を影響しあい、変えていったユベールとオードリーの出会いがフレグランスをもつくってしまった……

1957年に初めてのフレグランスを発表したのですが、このとき、「ランテルディ」と「ル ド」の2本をつくりました。当初、発売することは考えてはいなかったのですが、あまりに出来が良かったため、売り出すに至ったのです。
当時は、天然香料を用いた香りが主流とされていました。香料といえば、天然のもの以外は考えられなかったのです。でも、この2本の香りは“アルデヒト”と称される化学香料(=化学の力を駆使してつくられた香料)を使用。新しい発想である“アルデヒト”の技法を用いた香りはとてもパウダリーで、当時のクリエイターたちは夢中になり、人々の心を魅了していたのです。
その技法を用いてつくられた「ランテルディ」はオードリーのためにつくられた香りで、彼女への友情の証を形にしたものです。

──しかし、いま、多くの人に愛されている一本になり、広く知られている香りとなっています

自分のためにつくられた香りをとても喜んだオードリーは、この香りを肌身離さず使っていたそうです。ユベールは、それを自分のブティックにだけは置いていました。売るためではなかったのですが、ブティックにいらっしゃる多くの方々がこの香りが欲しいと、望む声をたくさんいただきました。
そこで、ユベールは考えを改め、オードリーに相談したところ「これは私が大好きな香りだから、私以外は使っちゃだめよ」と。その、彼女の言葉をネーミングした香りは、誕生から50年目を数える2007年10月、復刻版として蘇りました。ボトルに付した「ランテルディ」とは、“禁止”の意味をもつ言葉です。

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右/初代の誕生から50年目を迎えたことを祝して復刻された香りがパルファム ジバンシイの過去といまをつなぐ。ランテルディ オーデトワレ(ナチュラルスプレイ)1万3125円(100ml)

クチュールブランドの多くは、洋服をつくり、その後にバッグ、革小物などのアイテムを増やしていきます。それでも、イメージする人がいて洋服があるだけではブランドとして未完成。

フレグランスとは、フレグランスそのものに女性像を投影してつくるもの。ファッションとフレグランスとは一対である、とつねにクチュリエたちは考えています。だから、彼らは自分たちの想い描く女性像をイメージしたようなフレグランスをつくるのでしょう。

同時にリリースした、「ランテルディ」と「ル ド」。2つの香りを同時に発表するのは他に類を見ないとても珍しいこと。でも、つづく、男性用フレグランスの発表の際もユベールは、「ムッシュ ド ジバンシイ」と「オード ベチバー」を同時に発表しています。

──ユベール・ド・ジバンシィのユニークな個性が、こういうところからもうかがいしれますね

彼は、とてもとても穏やかで、ひとりひとりのお客さまをそれはそれは大切にした人だったそうです。仮縫いも自らが行っていたそうで、通常では考えられないことです。それでも、そうすることを選んだのは、お客さまとよりパーソナルな時間をもち、深くライフスタイルを知ったうえで、洋服をクリエイトしたかったから。その姿勢が、現在のジバンシィをつくり得たのだと思います。

“人の肌は単色だけでは語れない。ましてや、美しい女性の肌は単調な色でなど表現できない”

──こうして、フレグランスが産声を上げ、いよいよ『パルファム ジバンシイ』というボーテ ブランドが広がっていくのですね

1989年、今から20年前にフレグランスと同様の考え方で、「ボーテ ジバンシイ」というメイクアップラインが誕生しました。このときに発表されたのが、初代の「プリズム」である「プリズム ドゥスール」。いまなお、パルファム ジバンシイを象徴するアイテムです。
ユベールの言葉である“人の肌は単色だけでは語れない。ましてや、美しい女性の肌は単調な色でなど表現できない”を形にしたことこそ、その象徴たるゆえん。コンセプトづくりにはじまり色のチェックに至るまで、ユベールの目と思いを形にした製品です。クリエイター、それも自分の名前を冠したクチュールブランドにとって、これは非常に希有なことですね。

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1989年に発表されたパルファム ジバンシイの代表作、初代「プリズム」

──しかも、それまで、1色だけで構成されるパウダーが主流だといわれていた時代に……

ピンクが入っていたり、ベージュやイエロー、ブルーが入っている──
単純に色の濃淡ではない4色で構成されたフェイスパウダーなのです。さらに、それを肌に乗せるのは当時にはない概念。そのスピリットは、現在のクリエイターであるニコラ・ドゥジェンヌに継承されています。

──そのメイクアップシリーズの発表に足並みを揃えるかのように、スキンケアラインをくわえていますね

はい、「スイスケール」も1989年にデビューしています。効果効能はもちろんのこと、“使うことで心までも満たされるものを”との考えからつくられています。良い香りがするものであったり、なめらかで快適な使い心地に、肌へのラグジュアリーを求めました。

──パッケージを確認しなくても“あ、ジバンシイだ!”とすぐにわかるほど、香りは特徴的ですね

花の香りです。これは、のちに発表になるボディケア製品も含めて、一部を除いて統一した香りを用いています。ケアすることで心が豊かになる、そんな香りに仕上げられています。

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右/スイスケール リフティング ドゥブル セカンス(販売終了)
左/3週間の集中トリートメントが気になるエイジングサイン
に力強く作用する。ラディカリー ノーサージェティクス
インテンシブ3万3600円(3ml×21個)

現在のスキンケアラインの旗艦製品は、「ノーサージェティクス」シリーズ。なかでも、最新作の「ラディカリー ノーサージェティクス インテンシブ」は、スイスラインの「リフティング ドゥブル セカンス」のノウハウを受け継ぎ、伝えています。

それはまだ、“集中ケアアイテム”というものが非常に珍しかった時代に早くから着目し、コンセプトとして取り入れたことにあります。集中ケアの最新作であり、旗艦ラインでもある「ラディカリー ノーサージェティクス インテンシブ」で、パルファム ジバンシイを体感していただきたいですね。

──そしていよいよ、ボディ アイテムがお目見えするに至るのですね

世界4ヵ所で展開されているスパのメソッドが活かされたアイテムです。パルファム ジバンシイには、フェイスケアはもちろん、痩身効果も望めるボディケアも備えたスパがあるのですが、それらはすべてファイブスター以上のホテルのなかにあります。最初につくられたのはヴェルサイユ、1991年のことです。

そして現在では、モーリシャスの「トゥエスロック ホテル」、スイスの「ラ ミラドゥール」、カナダの「トロワ クチュール」、クシュベルの「ホテル シュヴァル ブラン」をくわえ、世界の4ヵ所で展開するまでになりました。
ひとことでファイブスターといっても、その内容はさまざま。それを、調度品やサービスや立地などをチェックして厳選。パルファム ジバンシイの基準をクリアしたホテルにだけで展開しています。

「ジバンシイ スパ」の哲学を伝える
モーリシャスの「トゥエスロック ホテル」

施設などのハード部分はもちろんのこと、
サービスや施術そのものの技術の高さに定評がある

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至福の時間を約束する、「ジバンシイ スパ」でも使用され、国内でも入手可能なリラクゼーションシリーズの2品。
右/ノーコンプレックス スパ エクスフォリエーター(ボディ スクラブ)5775円(200ml)、
左/ノーコンプレックス スパ モイスチュア(ボディ 乳液)6300円(200ml)

──日本で受けることができないのが、非常に残念ですね

そういう声がとても多いのは、非常にうれしいです。現状ではオープンの予定もありませんが、スパで用いているアイテムは2007年より展開しています。
その心地よく広がる香りは、スパの理念を感じられるアイテムだと思います。

お問い合わせ
パルファム ジバンシイ
Tel. 03-3264-3941
http://www.parfumsgivenchy.co.jp/

           
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