MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエルの魅力を語る
Fashion
2015年3月20日

MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエルの魅力を語る

MARGARET HOWELL|マーガレット・ハウエル

鼎談──マーガレット・ハウエルの魅力を語る

マーガレット・ハウエルの魅力はどのようなものか。一見して派手なデザインやカラフルな色に溢れているわけではないその服は、玄人好みと捉えられがちだが、果たしてそうなのだろうか。バイヤー、そしてプレスという立場から接してきたユナイテッドアローズの伊東正彦さんと、女性ながらメンズに定評のあるスタイリスト、杉本学子さん、それにマーガレット・ハウエルのPRを務める杵淵元樹さんの3人に、マーガレット・ハウエルの魅力について語っていただいた。

Photo by SHINOHARA Hiroaki

──それぞれの“なれ初め”

伊東 僕がマーガレット・ハウエルを知ったのは、高校生ぐらいのとき、雑誌で見ていいなと思ったのが最初です。アイテムはシャツだったと思います。シンプルだけどデザインされている服、という印象でした。

アングローバル 杵渕元樹さん

杉本 私は中学生くらいのときにはじめて知りました。兄がずっとマーガレット・ハウエルの服を着ていたんです。だからなのか、マーガレット・ハウエルにはいまでもメンズのイメージがあります。

杵淵 僕も高校生のとき雑誌で見たのが最初です。いい服だけど値段もいい、というのが当時の印象でした(笑)。実際に買えたのは大学生になってからですね。今でもそのシャツは持っています。今でも全然着れますよ。

伊東 基本的には変わらないんですよね。パターンメイキングやサイジングは多少変わるんですけど、基本ベースはあまり変わらない。

杵淵 生地やボタンは変わらないですね。

伊東 自分が仕事として取り扱うならシャツと決めていました。お客さんにもマーガレット・ハウエルの何を伝えたいかといえば、それはシャツなんです。

杵淵 ブランドのスタートがメンズのシャツなので、ブランドのアイコン的なものですね。シャツは自社工場をもっているほどですから。

杉本 私もみなさんとおなじでマーガレット・ハウエルといえばシャツというイメージです。女性がつくっているということを知って最初はびっくりしました。メンズのスタイリングをしていて思うんですが、女性と男性とでは服に求めるものがちがいますよね。それを実際に着ていない女性が作るというのは、ずいぶん苦労しただろうし、そこをあえて追及してつくっているというのを知ってますます好きになりました。

伊東 そこがすごいんですよね、マーガレットさんは。メンズは機能をデザインすること。それを女性でやっているのはほかにはあまり知らない。

それにファンがいるというのは貴重なことですよね。好きだからやっているのであって、商売でやっていない。結果として商売になっているだけ。それはすごいと思う。

杵淵 アイテム数の多いレディスと比べて、メンズウェアは自然と型数が限られてくるので、こだわりや、妥協していない部分がさらに引き立つのかも知れません。

──英国的であるということ

杉本 私がスタイリングで使わせてもらうようになってから、イメージが大きく変わったということはないと思います。

ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ 伊東正彦さん

でも何年か前のシャツを今でも新鮮に着られるというのはなかなかないこと。ずっと見てきたなかでも、変わらないんだけど、でもどこかは変わっている。そんな服だと思います。“着せたい”服ですね。私は年齢が上の方をスタイリングすることが多いんですが、服を持っていって見せたときの皆さんの反応が自然な感じでいいんです。

伊東 マーガレット・ハウエルはいまのままがいい。そこに余計なものはあると、ブランドイメージやマーガレット・ハウエルのよさが薄まってしまうと思うんです。だからこのままでいい。強いていえばイギリス生産のものがもっとあってもいいかなとは思いますが。

杵淵 イギリス製のシャツを日本で買えるのは、いまのところ神南をはじめ一部のショップだけですね。

スタイリスト 杉本学子さん

伊東 ひとつのシャツのなかにイギリスっぽい部分を残すところと残さないところのプラスマイナスがある。全部イギリスっぽくするわけでもなく。そこが“くすぐられ”ますね(笑)。女性ならではで、そのあたりのことをよくわかっている。そのバランスがすごくいい。

杉本 英国的というとすぐに思い浮かぶのが伝統的ということ。ウールやツイードの使い方だったり。それはほかのどのブランドにもない重厚だけどでも軽かったり。スリーピースとかもそうですよね。

杵淵 ウェストコート(ヴェスト)は、毎シーズンかならず出てくるアイテムですね。

杉本 ロンドンのお店に行ったことがあるんですけど、そこも伝統的なんですよね。周囲には大理石の建物が多くて。でもなかに入るとそういうものとはまったく違ちがうイメージの無機質な空間が広がっている。そういうところも“あたらしい”と思いました。

伊東 イギリスっぽいところ、崩してはいけないところをちゃんと残して、そうでないところをあたらしい表現にしている。服もそうなんですよ。品揃えやスタイリングを見ていてもそう思います。

──デザイナー、マーガレット・ハウエル

杵淵 マーガレット・ハウエル自身もメンズっぽいものをうまく取り入れて着ています。身長があるので似合うというのもあるでしょうね。彼女の着こなしをそのまま男性が着ても格好いいだろうと思いますよ。

もちろんドレスを着ることもあるんですけど、普段はメンズっぽい。考え方がファッションデザイナーというよりは、プロダクトデザイナーや建築家っぽい気がします。

伊東 機能的なことをいちばんに考える、ということなんでしょうね。

杵淵 ものを付け足していって格好よくするのは誰でもできるから、いかにミニマムなところで、それを新鮮に見せることが大事かということを言われますね。引き算をして美しく見せる。

杉本 知らないひとが見たら女性デザイナーが作ったと聞いてびっくりする服だと思うんですよ。そういことを感じさせないところも支持される原因ではないですか。女性らしさが出すぎると男性には受け入れられないと思うんです。女性が作る服というのはデザイナーが自分で“着ていない”服。「それ大丈夫?」となるんですが、彼女の場合はそういうことを感じさせない。本当に“知っている”ひとの服なのかなと思います。ほかのブランドとも合わせやすいですし。

伊東 それは重要な機能ですよね。風から身を守ったりとか、もともとの機能もあるとは思うんですが、なんにでも合わせられるというのは、現代人のための服づくりということなんだと思います。

アングローバル
Tel. 03-5467-7874
www.margarethowell.jp
           
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