「Pippi」デザイナー・佐藤葉子 インタビュー(後編)
Fashion
2015年3月5日

「Pippi」デザイナー・佐藤葉子 インタビュー(後編)

2009-10秋冬 注目のファッションデザイナー特集

日常性を大事にして、デイリーに履ける素敵な靴
「Pippi」デザイナー・佐藤葉子 インタビュー(後編)

レディなムードとガーリーなニュアンスが高い地点で融合する「Pippi」のシューズは、唯一無二の存在感を放つ。デザイナーの佐藤葉子さんは、クリエイションに対してどんな思いを抱いているのか。パーソナルな部分を紐解いていく。

取材・文=津島千佳写真=原恵美子

デザイナーという職業に憧れはなかった

──「Pippi」のシューズを見ていると、靴好きがデザインしたものだな、というこだわりが感じられます。洋服ではなく、とくにシューズに惹かれる理由はどんなところにあると思いますか?

母がすごくおしゃれなひとだったので、ファション好きは血筋かもしれません。母の足もとはいつもハイヒールで、子ども心に「きれいだなぁ」と眺めていたのを覚えています。靴好きのルーツはその辺りにあるのかも?
でもとくにデザイナーになろうとか、憧れはなかったので、服飾の専門学校に行くこともなく、普通の短大に入りました。学生時代に、セレクトショップでアルバイトしていました。大学卒業後は、企業のOLとして働きはじめたんですけど、やっぱりファッションの世界にもどりたいと思って、ユナイテッドアローズ原宿店のオープニングスタッフとなりました。

──ユナイテッドアローズ時代に、デザイナーになるきっかけがあったのでしょうか?

うーん、ブランドはよく覚えてないんですけど、ピンクのスエードでバックストラップの、すごく魅力的なサンダルが入荷したことがあって。それを見て、すぐに靴をつくろうって気持ちは起こらなかったんですけど、「やっぱり私って靴好きなんだな」って、再認識したというか、特別な感情が湧いたんです。ユナイテッドアローズで、靴に対する思いが蓄積していったのはたしかですね。

──履く側にいた佐藤さんが、デザインする側にいこうと思ったのはどうしてですか?

最近でこそ、デザインと金額のバランスがとれたブランドも出てきていますが、当時って、今以上にインポートのシューズは高かったんですよ。消費者としては、10万円以上もするインポートの靴は、素敵だけれどOLさんには手が出しづらい。じゃあ、3~4万円代で探すとなると、インポートは途端にデザインがシンプルになっちゃうし、国内のものだと、「わっ! 可愛い! ほしい!」って心が躍るデザインのものが少ない。
OLさんでも毎シーズン履き替えられる2~3万円代で、しかもデザインも魅了的なのがなかなか消費者に届かない状況なら、私が挑戦してみたいと、単純に思ってしまったのがきっかけですね。

──たしかに、「Pippi」のシューズはデザインで目を引いて、値札を見たら安い! と思うことはよくあります。

値段ありきではないんですが、「私の靴はこのくらいの価格帯」っていう基準はあります。ただコストを抑えようとか、全然計算してなくて(笑)。ものによっては、かなりがんばってるものもありますよ(笑)。

「Pippi(ピッピ)」3万3600円(RF16 PURPLE×NAVY)

「Pippi(ピッピ)」各2万6250円(SS14 PYTHON / WATERBEIGE)

私のいいと思うものに、共感してもらえた瞬間が幸せ

──今後、「Pippi」はこういう方向に行きたい、という目標はありますか?

靴デザイナーとしてのキャリアを積むにつれ、製品のクオリティ自体は上がっているとは思いますが、いま以上に勉強して、もっと質を高めていければいいですね。
「Pippi」は立ち上げ当初から、日常性を大事にしてデイリーに履ける素敵な靴をつくるという軸があって、それはいまもぶれてないと思うし、今後も変更するつもりはないんですね。
値段のことをあまり言いたくないけど、そこももちろん大切で。でも「Pippi」はファストファッションのように、素材の質を下げてまで安いラインを出そうという発想はありません。「Pippi」にとって素材はかなり重要なものなので。とにかく、これからも女性の気分をよくさせる作品をつくりつづけていきたいですよね。

──デザイナーになってよかったな、と思えることはありますか?

自分だけよければいいやって考えはないけど、私の理想を反映した靴をみんなに喜んで受け入れてもらいたいって思いが強くて。みんなの“いい”と、自分の“いい”とがちょうど半分ずつ混ざった作品がいつも目標だから、みんなに「いいね」って言われたときに一番達成感を感じます。
デザイナーになりたいっていうよりも、自分でどうにかしたいって気持ちが私のデザイナーとしての出発点だから、みんなが「ほしい」と言ってくれるのが一種の着地点なんですよね。

──では最後に、佐藤さんにとって靴とは?

下着に近い存在。ハイヒールにはすごく女性を感じますね。
自分の靴は、わが子、可愛くて大切な子どもたちなので、よろこんで受け入れてもらえるところに嫁に出したいですね、やっぱり。

──ありがとうございました。

取り扱い店舗
伊勢丹新宿店4F リ・スタイル
Tel. 03-3225-2558
ユナイテッドアローズ本店ウィメンズ館
Tel. 03-3479-8176
アクアガール ラグランアクアガール青山店
Tel. 03-5414-1260
エストネーション商品コールセンター
Tel. 03-5220-0205

ユナイテッドアローズ秋冬カタログ完成!
8月28日より、全国のユナイテッドアローズにて、お買い上げの方対象に
2009-10秋冬カタログ「PORTRAIT OF UNITED ARROWS 2009 FALL AND WINTER」を差し上げています。
UAの20周年の記念すべきカタログで、コラムインタビューページにPippiの佐藤葉子さんも登場!
ぜひ、UNITED ARROWSに足を運んでください。

           
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