三原康裕的日本モノづくり「第1回 テーラー&カッター」(2)
Fashion
2015年3月11日

三原康裕的日本モノづくり「第1回 テーラー&カッター」(2)

MIHARAYASUHIRO×Tailor&Cutter
第一回 テーラー&カッター(2)

ファッションブランド「ソスウ」のデザイナー、三原康裕さんと青山のビスポークテーラー「テーラー&カッター」のテーラー有田一成さんとのスペシャル対談。その2回めは――

構成=竹石安宏(シティライツ)Photo by Jamandfix

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ハウススタイルと日本の技術力

三原康裕 お客さんのオーダーでもあると思うんですが、 有田さんのスーツはフレアの袖が多いように感じます。それはなにかこだわりでもあるんですか?

有田一成 いや、フレアが多いように見えるようですが、案外ふつうの袖の方が多いんですよ。

三原 そうですか。ぼくもフレアでお願いしましたけど、ちょっとイヤミになるかなと心配でしたが、ダブルカフスのシャツに合わせると自然でキレイですよね。

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有田 本来フレアもむかしからあるディテールですからね。おなじように多いといわれるフロントのカッタウェイも、クラシックなカッティングのひとつなんです。じつは全然斬新なものではないんですよ。みんな知らなかっただけというか。フレアもダブルカフスと合わせるときに優雅に見せようと考案されたものであり、いってみればふつうなんです。
「有田さんのハウススタイルはカッタウェイフロントにフレアカフですよね」とよくいわれるんですが、「ちがいます」っていつもいいますよ(笑)。似合わないお客さんにはすすめませんし、つくりたいといわれても「いや、こっちの方がいいですよ」とちゃんといいますからね。

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テーラー&カッターの有田一成氏

三原 そうなんですか(笑)。ところで、有田さんは日本に帰ってきて銀座の「壱番館洋服店」で修行されたわけですが、日本のテーラーの長所と短所はどこだと思われましたか?

有田 長所としては、やはり技術が抜群に上手いということですね。職人も年配であればあるほど上手く、仕事に対してとても頑固でもある。でも、その頑固さは長所であると同時に、短所でもあると感じましたね。
たとえば、デザインなどの新しさは受け入れていかないと自分たちも受け入れられなくなってしまうと思うんですが、そういった面はどうしても難しい。自分たちは日本でトップのテーラーであるというプライドもあり、それがいいところにも悪いところにも出てしまっていると思いました。
若くて新しい感覚と日本一の技術が融合すれば、もっといいものができると思ったんですけどね。ただ、それをあえてやらない「壱番館」もすごいとは思います。

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若い世代とともに自分も成長していきたい

三原 なるほど。それにくらべて有田さんはイケイケですよね(笑)。これはあくまで僕のイメージですが、テーラーというと頑固で無口で取っつきにくくて、敷居が高いといった固定概念があるじゃないですか。でも、有田さんにはそういったイメージがまったくないですよね。よくおしゃべりになるし、自然体でお店も入りやすいし。そういう雰囲気が居心地いいなと思うんですよね。

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有田 それはなぜかというと、たとえば銀座などに敷居の高い店を出して、値段なども高額に設定したとしても、そういう店にくるお客さんはやはりラグジュアリーなおカネもちのオジサンじゃないですか。そういう人たちと楽しむのも面白いんですが、たとえばいま40歳の人はこれまで20年間スーツを着てきたわけです。おカネもあるし、高額なブランドなどいろんなスーツを着てきたでしょう。そんな20年間で築き上げてきたものをぼくが覆したら、怒られるわけですよ(笑)。
そういった面はお客さんが年配になればなるほど難しいですね。たとえば「こういうフィッティングはどう?」とお客さんに聞かれ、それがダメでも否定はせず「ぼくとはちがいます」というんです。それで「じゃあ、好きにしてみて」といわれて仕立てると、「ここが狭い」となるわけで。
もちろんそれまでお客さんが着ていたスーツにちかいものはつくれますが、それではぼくがつくる価値がないと思うんです。それなら20代、30代のこれからスーツを着なければならない世代と、一緒にスーツを楽しんでいきたいなと思うんですよ。年配のおカネもちに向けることもできますが、ほんとうにぼくがやりたいところは、そこではないんですね。

三原 テーラー&カッターは若い世代にきてほしいテーラーなんですね。

有田 現状ではそうですね。でも、今後このままでいきたいとは思ってないんです。いま20代、30代の方も歳をとって成長していくわけで、ぼくも変わっていくと思います。だから、お客さんと徐々にラグジュアリーになっていきたいですね。そうすればお客さんもラグジュアリーな世界に入りやすいでしょう。日本のスーツ文化全体も最近ではかなりオシャレになってきてますが、もっともっと成長していきたいですね。

三原 たしかにここ数年だけでも、日本のスーツ文化はめまぐるしく変わってきてますよね。

有田 そうですね。お客さんでもぼくらより詳しい人がいるくらいですからね(笑)。そういった人は今後も増えていくと思いますが、僕のスタイルを楽しんでもらえる方をすこしづつ増やしていきながら、いいお 店に成長していきたいですね。

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テーラー&カッター
東京都港区南青山6-3-11
Tel. 03-3499-7725
12:00~20:00
定休日|毎週火曜
http://www.tailorandcutter.jp/

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