第2回 ハイエックセンターに建築家が込めた、大胆な着想と、その背景にあるもの
第2回 ハイエックセンターに建築家が込めた
大胆な着想と、その背景にあるもの
銀座の新名所、「ニコラス・G・ハイエックセンター」は、表と裏の通りをつなぐ“アヴェニュー”や、ショールームからブティックへと誘うエレベーター“トランスポーター”といった、独創的なアイディアの塊。今回は、その大胆な着想と背景にあるものに迫った。
文=名畑政治写真=スウォッチ グループ ジャパン
気鋭の建築家、坂茂のアイディア
東京・銀座にオープンしたスウォッチ・グループの日本における新たな拠点「ニコラス・G・ハイエックセンター」。
その設計を担当した気鋭の建築家、坂茂(ばん・しげる)氏は、表通りと裏通りを繋ぐ“アヴェニュー”の構想と、そこに設置された7つのショールームが、そのままブティックへと導く“トランスポーター”となる独創的なアイディアをこのように説明する。
7つのブティックを同列に扱うには
「スウォッチ・グループは、このビルに7つのブティックを入れたいと考えていました。しかし、別々のフロアに各ブランドのブティックを置いた場合、どうしても1階は良い場所なので、そのブランドを優遇してしまうことになります」
「でも私は、すべてのブランドを同じように扱い、 同じように見せたいと思ったのです。ところが、普通に考えると、すべてのブティックが1階に集中してしまい、どうしても窮屈になってしまいますよね?」
「そこで私は1階を表と裏を結ぶ公共の“通り”にし、この通りに各ブランドのショールームを置くことにしました。人々はこの通りを、各ブランドのショールームを眺めながら散歩できるのです」
「ポイントは、ショールーム自体が油圧式エレベーターになっている点です。そしてもっとそのブランドの時計を見たいと思ったら、ボタンを押すだけでブティックに行くことができるのです」
壁に設けられた小公園
また、このビルのもうひとつの特徴は、ひとつの壁面が完全に緑で埋め尽くされていることだ。
「私はこのスペースを小さな公園のようにしたいと思いました。このビルの周辺には緑あふれるリラックスできる場所がありませんからね」
「しかし、1階には庭を造るスペースがないので、かわりに庭を壁から吊すことにしたのです。クリスマスには赤いポインセチアを植えるなどして、一部は季節ごとに変えることになります」
坂氏ならではの驚きのアイデアを具現し誕生した「ニコラス・ G・ハイエックセンター」だが、そこで働くスタッフたちの意識は、どうなのか?
スウォッチ・グループ・ジャパ ン・コーポレートビジネスデベロップメントの水谷竜太朗氏に話を伺った。
「このビルの登場によって、銀座散策がまるで違うものになる。そんな驚きを体験できる空間芸術。それがニコラス・G・ハイエックセンターだと思うんです」
「それは五感に訴えてくる、感性を揺さぶられる場所。日本人って、新しいショッピングモールができても、もはや驚いたりしませんが、ここは われわれの心が失った“驚き”を提供してくれるはずです」
「だから私は、このビル自体がハイエック会長自身だと思うんです。そう考えるととてもよく理解できる。なにしろ銀座に新しい通りを造ってしまったわけですし、ショールー ムが動きだし、床から駐車場は出てくる。ホントにビックリ! これこそハイエック会長だな、と感じるんです」
ウェブ・サイトへのアクセスが3倍に!
水谷氏によれば、ハイエックセンターのオープン後は、スウォッチ・グループのウェブサイトのアクセス数が3倍に跳ね上がったという。
それだけ一般のひとが、この新しいビルの出現に驚き、期待をかけているという証明であろう。
もちろん、そこに設けられた7つのブティックの評判も上々。では、そこは一体、どのような時計が我々を待っているのか?
次回は、個々のブティックにスポットを当て、それぞれの世界観に迫ってみよう。