パワートレーンを一新したDS3シックに試乗|Citroen
CAR / IMPRESSION
2015年1月13日

パワートレーンを一新したDS3シックに試乗|Citroen

Citroen DS3 Chic|シトロエン DS3 シック

4年を経ても埋没しない個性

パワートレーンを一新したDS3シックに試乗

シトロエンの個性派モデルがそろうDSラインのなかでも、もっともコンパクトな「DS3」のパワートレーンが変更となった。かつての1.6リッター4気筒+4ATにかわって登場したのは、1.2リッター3気筒+5段シングルクラッチという、まったくあたらしい組み合わせ。単純に数字をくらべると、燃費と引き換えにパワーをダウンさせたようにみえるが、実際に乗ってみるとどうなのか。小川フミオ氏が試す。

Text by OGAWA FumioPhotographs by HANAMURA Hidenori

キャラクターを明確にしたDS3のラインナップ

デビューから4年たっても、スタイリングコンセプトからあたらしさが失われていないシトロエン「DS3」。このコンパクトなハッチバッククーペに、さきごろ、燃費効率にすぐれた新エンジンが用意された。

今回あらたに搭載されたのは、「燃料消費量とCO2排出量を低減した」と日本法人のプジョー・シトロエン・ジャポンが謳う1.2リッター3気筒エンジンだ。「DS3 Chic(シック)」として、さる2014年2月17日に日本で発表された。

くわえて5段のロボタイズド マニュアルギアボックスと、アイドリング時にエンジンを停止、および走り出すときに始動を自動的におこなうストップ&スタートシステムが標準装備されたのが、あたらしい点だ。

1.6リッター4気筒に4段ATの組み合わせだった従来のDS3 Chicに較べると、燃料消費量は「約49パーセントアップし、(燃費は)18.6km/!へと改善」と、プジョー・シトロエン・ジャポンではする。

いっぽう6段マニュアル変速機を搭載する「DS3 Sport Chic」は156psの1.6リッターのままカタログに残る。今回のラインナップ見直しで、燃費志向とパワー志向と、明確にDS3を分けたことになるのだ。

Citroen DS3 Chic|シトロエン DS3 シック

4年を経ても埋没しない個性

パワートレーンを一新したDS3シックに試乗 (2)

NAの気持ちよさを味わえる

すでに、プジョー「208」や同「2008」といったモデルで既報ずみの、この新エンジン。プジョー・シトロエン・グループが次世代パワーユニットとして開発したものだ。ベースモデル用のエンジンとして位置づけられており、最高出力は82ps、最大トルクは118Nmとなる。

フリクションロスを約30パーセント低減し、なめらかな回転マナーとともに、静粛性と耐久性にすぐれていることが謳われる。燃費とパワーの両面で最適な燃焼効率を得るために無段階可変バルブタイミング機構を搭載した。

実際に体験すると、アクセルペダルの踏み込みに応じて、高回転域まで気持ちよく一気呵成に回るのに感心するほどだ。最大トルクは2,750rpmから発生する設定だけあって、3,000rpmから上でもりもりと力が出て、気持ちよい加速を味わうことができる。しかもターボチャージャーのない自然吸気エンジンだけに、回転計のレッドゾーンが始まるところまで、きっちりパワーが出るのが気持ちよい。

トランスミッションは、オートマチックのようにクラッチ用のペダルを持たず、油圧を利用したアクチュエーターによりシフトアップとシフトダウンを行う仕組みだ。慣れていないと、とくに下の回転域ではつながるにややぎくしゃくとするところがある。

Citroen DS3 Chic|シトロエン DS3 シック

4年を経ても埋没しない個性

パワートレーンを一新したDS3シックに試乗 (3)

見かけ以上に楽しめる走り

走りだしはシフトアップが予想よりはスムーズに行かず、やや慣れが必要だが、あとはハンドルから手を離さず操作できるパドルシフトにより変速をおこなうようにすれば、こちらは期待以上に気持ちよく走ることができる。

個人的には、シフトレバーを前後に動かしてシフトアップおよびダウンの操作をするマニュアルパターンを使うほうがレースカーの気分が出て好ましい。

眼の前の回転計の針が4,000rpmあたりにあるようにギアを選ぶと、アクセルペダルに載せた足の力の微妙な加減にクルマが反応して加減速をおこなう、気持ちよいダイレクトな感覚を堪能できる。

積極的に高回転域を使うと喜ぶエンジンのようで、1.2リッター3気筒で、しかもターボチャージャーをもたないという予備知識がじゃまになるぐらい、力強さすら感じる。DS3はそもそも足まわりがしっかりしており、カーブでの身のこなしもよい。キュートでファッショナブルという外観イメージには似合わないほど、走りが楽しめるモデルなのだが、その印象は不変だ。

基本はマニュアル変速機なので、そこに2ペダルの安逸性を組み込むための工夫がいくつもある。ひとつは、発進時にクラッチをはやめにつなぐクリープ機構。もうひとつは、坂道の発進をスムーズにおこなうためのヒルスタートアシスタンスだ。

Citroen DS3 Chic|シトロエン DS3 シック

4年を経ても埋没しない個性

パワートレーンを一新したDS3シックに試乗 (4)

時宜を得たよきパートナーになってくれるだろう

さきに触れたように、DS3 Sport Chicが力強い走りを身上とするのに対して、今回のDS3 Chicは燃費効率を考えた設定を特徴とする。ゆえに、このクルマの味わいかたとしては。燃費を考えて低回転域を使う運転が向いているといえるかもしれない。

しかし、DS3でそれをするのは、クルマ好きには耐えられないほどの苦行である。なぜなら、先に触れたように、エンジンをがんがん回して走るのが楽しいからだ。せっかくキャラクターのたったハッチバッククーペに乗るのなら、楽しまなくてどうする、という作り手の声が聞こえてくる気すらする。

シトロエンのラインナップは、日本の女子には、個性が強すぎるフシがある。そのなかでDS3だけは、多くのひとに「かわいい!」と、日本女子の最大級の賛辞を受けてきた。そのよさは、存在感のあるタイヤ、活発な印象のプロポーション、ちょっとアグレッシブなヘッドランプとデイタイムラニングランプ、太くて安全性の高そうなCピラー、そしてほかに類のない車体のカラースキームなど、数多く列挙できる。

DS3 Sport Chic(278万円)には、さきごろフルモデルチェンジを受けた「MINI クーパー」(266万円)という強力なライバルが出現した。いっぽう、DS3 Chic(254万円)が投入された市場には、個性的なプロダクトとしては、ルノー「ルーテシア」(205.5万円から)やフィアット「500」(199.8万円から)がある。また、燃費経済性とクオリティの両立という点では、フォルクスワーゲン「up!」(154.8万円から)や同「ポロ」(227.6万円から)、あるいはフォード「フィエスタ」(約235.5万円)など強い競合車が存在する。

そのなかで埋没しない個性を備えたDS3。スタイリングが好きで、お財布に余裕があれば、より楽しみの幅が広いSport Chicをお勧めしたい。

だが、ガソリン代がどんどん上がっている昨今にあって、燃費は日常的につきあうための重要なファクターであることを考えあわせると、あたらしいパワートレーンとなったChicの登場は時宜を得たものだ。いろいろな意味でよきパートナーになってくれるだろう。

080507_eac_spec

Citroen DS3 Chic│シトロエン DS3シック
ボディサイズ│全長 3,965 × 全幅 1,715 × 全高 1,455 mm
ホイールベース│2,455 mm
トレッド前/後│1,465 / 1,455 mm
最小回転半径│5.4 m
重量│1,090 kg
エンジン│1,199cc 直列3気筒 DOHC
最高出力│60 kW(82 ps)/5,750 rpm
最大トルク│118 Nm(12.0 kgm)/2,750 rpm
トランスミッション│オートマチックモード付き5段ETG
ブレーキ前/後│ベンチレーテッドディスク / ドラム
サスペンション前/後│マクファーソンストラット / トーションビーム
タイヤ│195/55 R16
燃費(JC8モード)│18.6 km/!
定員│5人
価格(消費税込み)│255万円

シトロエン コール
free150120-55-4106(9:00-19:00、年中無休)

           
Photo Gallery