特集|2014年国際映画祭速報|アカデミー賞
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2015年3月20日

特集|2014年国際映画祭速報|アカデミー賞

MOVIE|第86回アカデミー賞

各部門の受賞作品を最速リポート!

3月2日(日)、アメリカ・ロサンゼルスでおこなわれた第86回アカデミー賞授賞式。授賞式までの1年間、アメリカ国内の特定地域で公開された作品を対象に、6000人以上とされるアカデミー会員の投票によって受賞者を選出する。ときに予想だにしていなかった俳優やスタッフが選ばれる、“番狂わせ”が起こるのがこの映画祭の面白いところ。世界が注目する舞台で、今年オスカー像を手にしたのは?

Text & Edited by TANAKA Junko(OPENERS)
Photographs by The Academy of Motion Picture Arts and Sciences

アカデミー賞 02

© 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.

作品賞
脚色賞

『それでも夜は明ける』

製作国:アメリカ、イギリス
監督:スティーヴ・マックイーン
3月7日(金)より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国順次ロードショー

アカデミー賞の歴史を塗り替える“事件”!

自由の身として生まれながら、12年間にわたって奴隷生活を強いられた男がいた。ソロモン・ノーサップ。実在の人物だ。2008年の衝撃デビュー作『HUNGER/ハンガー』以来、一貫して極限状態にある主人公を描いてきたスティーヴ・マックイーンが、ノーサップの回顧録をもとに映画化。歴史に残る傑作を生み出した。

「ある男が家族から引き離され、黒いトンネルに引きずり込まれる物語。ただ、その先には光が見えるんだ。それはいつか愛する家族のもとに帰るという希望。希望は過酷さに勝つんだよ」と話すマックイーン。奴隷というテーマゆえ、製作は難航し、一時はプロジェクトの存続が危ぶまれたこともあったという。そのとき手を差し伸べたのは、物語の要となる人物を演じているブラッド・ピット。プロデューサーとして、完成まで全力で支援をつづけた。果たして日の目を見た『それでも夜は明ける』。黒人監督による作品が「作品賞」を受賞するという、史上初の快挙をなしとげ、50歳を迎えたピットにも初のオスカー像をもたらした。


アカデミー賞 03

Courtesy of Focus Features/Anne Marie Fox

助演男優賞

ジャレッド・レト『ダラス・バイヤーズクラブ』

製作国:アメリカ
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
公開中

俳優ジャレッド・レト、完全復活!

『シン・レッド・ライン』(1998年)や『ファイト・クラブ』(1999年)で名を馳せ、麻薬中毒に陥る主人公を演じた『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年)で高い評価を得たジャレッド・レト。多芸多才な彼は、俳優としてだけでなく、ロックバンド「サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ」のフロントマンとしても知られている。2009年の『ミスター・ノーバディ』を最後にスクリーンから姿を消したのも、音楽活動に専念したかったから。

そんな彼がスクリーンに帰ってきた。ロックスターから、HIVに感染したトランスジェンダーに姿を変えて。「5年というブランクが、頭をよぎったことは確か。だけど断ることなんて考えられなかった。生涯忘れられない経験が待っているとわかっていたから」。かくして18キロもの減量に挑み、マシュー・マコノヒー演じるロンとともに、HIV患者を救うために奔走するレイヨンを演じ切ったレト。初のオスカー像を手にした。


アカデミー賞 04

© 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. in the rest of the World. All Rights Reserved.

助演女優賞

ルピタ・ニョンゴ『それでも夜は明ける』

製作国:アメリカ、イギリス
監督:スティーヴ・マックイーン
3月7日(金)より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国順次ロードショー

デビュー作で栄光を手にした新星!

メキシコで生まれ、幼少期をケニアで過ごしたルピタ・ニョンゴ。その後渡米し、ハンプシャー大学、イエール大学の大学院「イエール・スクール・オブ・ドラマ」で、演劇や映画作りを学んだ。今年31歳。本作で長編デビューを果たしたばかりの“新星”だが、エンターテイメント界ではすでに10年近くのキャリアをもつ。『ナイロビの蜂』(2005年)や『その名にちなんで』(2006年)でプロデューサーを務める一方、テレビドラマや舞台で女優としても活躍。さらに2009年には、ドキュメンタリー『In My Genes』で監督デビューを果たしている。

ここにきて、女優ルピタ・ニョンゴの才能が一気に開花した。彼女の役どころは、キウェテル・イジョフォー演じるソロモン・ノーサップとともに、非情な雇い主エップスのもとで働く若い黒人女性、パッツィー。焼けつく太陽の下でひたすら綿を摘み、量が少なければ鞭で打たれ、夜にはサディスティックにもてあそばれる日々だ。絶望に打ちひしがれた女性を圧倒的な存在感で演じ切り、初の栄光を手にした。名前が呼ばれると、涙ながらに感謝を口にしたニョンゴ。「このオスカー像を見るたびに、わたしは思い返すことでしょう。生まれがどこであっても、夢は叶うものだと」


主演男優賞
マシュー・マコノヒー『ダラス・バイヤーズクラブ』
製作国:アメリカ
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
公開中

主演女優賞
ケイト・ブランシェット『ブルージャスミン』
製作国:アメリカ
監督:ウディ・アレン
5月10日(日)より全国ロードショー

脚本賞
『her/世界でひとつの彼女』
製作国:アメリカ
監督・脚本:スパイク・ジョーンズ
6月28日(土)より全国ロードショー

監督賞
アルフォンソ・キュアロン『ゼロ・グラビティ』
製作国:アメリカ
公開中

外国語映画賞
『グレート・ビューティー/追憶のローマ』
製作国:イタリア、フランス
監督:パオロ・ソレンティーノ
今秋公開予定

 

           
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