連載・藤原美智子 2013年6月|“食”からシンプルな生き方について考える
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年1月13日

連載・藤原美智子 2013年6月|“食”からシンプルな生き方について考える

2013年6月|食がシンプルな生き方につながり、気持ち良い満足感をもたらす人生の根幹になる

「“食”からシンプルな生き方について考える」

最近、はまっている本があります。それはドミニック・ローホー氏のシンプルな生き方について説いている著書の数々。彼女の著書はベストセラーが出るほどの人気があり、日本だけでなく各国で数多く出版されているようです。“シンプルな生き方”は以前から私の憧れなのですが、なぜ、彼女の本に今はまったかというと──

Photographs&Text by FUJIWARA Michiko

「シンプル」という文字に思わず惹きつけられた理由

ドミニック氏のベストセラー本、『シンプルに生きる』(幻冬舎)が2010年に出版されて以来、何冊もの著書が日本でも出版されていたというのに、私がその存在を知ったのは今月のはじめ。本屋にブラリと入ったときにパッと目に入ったのが、本のタイトルの「シンプル」という文字。つまり中身よりも、まずタイトルに惹きつけられたということだが、それには理由がある。

じつは先月から「Evernote」というアプリに書類や資料、切り抜きなどをドキュメントスキャナでどんどん取り込んで整理していたからだ。そのお陰で机の引き出しの中も本棚もスカスカでスッキリ! 「無駄なものがないって、なんて気持ち良いんだろう!」と、以前はまった“断舎離”熱がぶり返してきた矢先のドミニック氏の本だったのである。ちなみに、Evernoteの良さは自分のアカウントでログインすると、すべての端末でおなじものを見ることができること。つまりPCでもiPadやスマートフォンでも、取り込んだものをすべておなじように見られるということ。それに、いろいろな資料を持ち歩いたり、「あの資料、どこだっけ?」と探したりしなくてもいいので超便利! (あっ、「とっくに知っているよ」という声が聞こえてきたような……)。

物への対処の仕方から生き方までブレがなく一貫しているシンプル論

“断舎離”については2010年11月の連載に書いているのだが、これは整理することで自分の生き方が見えてくるという内容の整理術。そしてドミニック氏が説いているのもまさに、そのこと。ただしドミニック氏の“シンプル本”はもっと徹底的に、より具体的に、より細やかにシンプルを極めるためのノウハウが書かれている。家具から食器や本、服といった“物”はもちろんのこと、メンタル面まで多岐にわたっている。

私が“目から鱗(うろこ)”だったのは『シンプルに暮らす』(中経出版)という本のなかの、「シンプルな暮らしは“食”が基本」という章。ハッキリいうと、“シンプルな生き方”を説く本はほかにも数多く出版されているし、内容はどれも似通っている。でも、突き詰めると真理は一つなのだから、それは当たり前のことだ。そのなかでもドミニック氏の著書がほかと少しちがう“匂い”がするのは、日本に30年在住して禅の修行をしたり、墨や絵を学んだりして日本の精神文化を学んだという背景にあるからだろうか。だからシンプルさの方向性やストイックさ加減が日本人の私にはストンと腑に落ちるのだろう。また、彼女のシンプル論は物への対処の仕方から生き方までブレがなく一貫している。そこに説得力を感じるからこそ、多くのひとが共鳴するのだろう。

「シンプルな暮らしは“食”が基本」とは?

さて、私が感銘を受けた食のシンプル論とはどういうものかというと、まず「“食べる”ことを学び直し、満腹を感じる能力を取り戻しましょう」というもの。よく「食べたいものこそが、身体が欲しているもの」というようなことを聞くが、それは上記のような能力がすでにあるひとが使う言葉。私のようにまだまだ“欲”で食べているひとが、それに従っていたらジャンクなものを、そして“もっともっと”という“食”に走るにちがいない。そんな風に満腹になっても食べつづけるのは、3歳以降の年齢になってからだという。それに人間はどの段階で食べるのを止めればいいのか本能的にわからない唯一の生物だという。なるほど、だから自分の本能に任せて食べるのではなく、知力を使って食べなければいけないということなのだ。

あるいは、「自由を増やすためには、自制できることが大切なのです」ということは経験上、納得できること。たとえば、120%食べないと気がすまないという“欲・食”をしているひとが70%分しか食べるものがないとしたら餓えを感じるだろうし、もっと食べたいというフラストレーションを感じることだろう。でもつねに70%の食事を意識的にしているひとならば、たとえ60%分の食料しかなくても、それは心地良さになるし、自制できたことがさらなる満足感になる。

「自制することがあらたな楽しみにつながることを忘れてはいけません」と書かれているが、まさにその通りだ。好きなものを好きなだけ、好きなことを好きなだけという生き方をしていると、その好きなものやことへの要求度は必ず上がっていく。たとえ、一瞬は満たされても少し経つと、もっと欲しくなる……。つまり満たされているのに、いつも満たされていないという感覚に陥ってしまう。人間が食べるのを止める段階がどこかわからないのとおなじように、自分の欲望をコントロールできないと際限がなくなる。だから自制できる能力を養うことが大切なのだろう。

量を控えた良い食事は、シンプルな暮らしの根幹となるものです

さて、この本には、食の欲望を自制できる具体的な方法がたくさん載っているのだが、私がハッとしたのは「食べる量を減らせば減らすほど、深く味わえる」ということと、「優雅に食べる」あるいは「洗練された食べ方をすること」といったフレーズ。減らすほど深く味わえるというのは断食をしたときに強く実感したこと。また、優雅さや洗練された食べ方を意識したらたしかに大食する気はなくなるし、おまけになぜか気分もしぐさも女らしくなるのが不思議。「おわりに」には「量を控えた良い食事は、シンプルな暮らしの根幹となるものです」と記されているが、つまり食がシンプルな生き方につながるということであり、それが気持ち良い満足感をもたらす人生の根幹だということだ。

ウーン、そうした心情のひとに早くなってみたいが、とりあえず、ちょっとずつ日常に取り入れて、ちょっとずつ習慣化してみることにしよう!

藤原美智子プロフィール

           
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