nendo 佐藤オオキが見た、BMW 3 シリーズ グランツーリスモ|BMW
BMW 3 Series Gran Tourismo|ビー・エム・ダブリュー 3 シリーズ グランツーリスモ
デザインオフィス nendo 代表 佐藤オオキが見た
BMW 3 シリーズ グランツーリスモ
セダンともツーリングともちがう。広い室内、広いラゲージ・ルームで、抜群の実用性を誇りながら、デザインはクーペのようにスポーティで、エレガント。それが、世界的に好評を博し、2012年を代表するクルマとなった、BMW 3 シリーズにくわわった、あらたな選択肢「BMW 3 シリーズ グランツーリスモ」だ。OPENERSは、この、あらたな3 シリーズに、プロダクトデザイナーとして、建築家として、世界が注目する日本人クリエイター nendoの佐藤オオキ氏とともに注目。はたして佐藤オオキなら、この1台、どう見る? どう使う?
Text by SHIOMI SatoshiPhotographs by MOCHIZUKI Hirohiko & JAMANDFIX
新鋭×新鋭
待ち合わせ場所に現れた佐藤オオキさん。すらっとした長身で、セオリーの白いシャツとダメージジーンズ、CAMPERのスニーカーというシンプルな出で立ちがよく似合う。
海外出張が多く、一度出張すると長期にわたることが多いので、国内にいる間はできるだけ一緒に過ごすという愛犬「きなこ」が足元を離れない。
1977年、カナダ・トロントで生まれ、大学で建築を学んだ後、デザインオフィス「nendo」を設立。
グラフィックから家具、そしてさまざまな企業の依頼を受けてプロダクトデザインを手がける、いまもっとも多忙を極めるデザイナーのひとりだ。
世界中にクライアントをもつ気鋭のデザイナーに、長い伝統をもつBMW 3 シリーズの一員としてあらたにくわわった「BMW 3 シリーズ グランツーリスモ」はどう見えるのか──
エレガンスとユーティリティの共存
BMW 3 シリーズ グランツーリスモは、セダンとも、クーペとも、ツーリングともことなる、あたらしいモデルとして、日本をはじめ、世界各国で発売されたばかり。
クーペライクなルーフラインと長いホイールベースが特徴で、流麗なデザインと高いユーテリティを両立。パワートレインには、定評ある3 シリーズの3種類のガソリン・エンジンと8速ATを採用する。
BMW 3 Series Gran Tourismo|ビー・エム・ダブリュー 3 シリーズ グランツーリスモ
デザインオフィス nendo 代表 佐藤オオキが見た
BMW 3 シリーズ グランツーリスモ(2)
佐藤オオキはBMW 3 シリーズ GTのデザインをこう見る
広いスペースに置かれたカラハリ・ベージュの「BMW 320i グランツーリスモ Modern ライン」。佐藤さんはまずゆっくりと周囲を一周して「きれいなラインをしていますね」とひと言。
しゃがんでフロントのエアダムを触りながら「でもこの辺は複雑な造形で、遊び心も見えます」
フロント・ホイール・アーチに設けられた「エア・ブリーザー」、せり出す「アクティブ・リヤ・スポイラー」など、何かを確かめるように次々と気になるパーツを見て、触れてチェックする。
運転席へ乗り込み、ワイドなモニター、オーディオスイッチ群、それからダッシュパネルのみならずドアにまでつづくパネルを眺めながら「エクステリアからも感じたんですが、インテリアも水平のラインがデザインテーマになっていますね」と、BMWの特徴を指摘。
さらに、スイッチ類について「『押す』スイッチも『回す』スイッチも、どれも操作感がおなじになるようにそろっていてドイツらしさ感じるな」などと、矢継ぎ早に感想を述べていく。
もっとも長い時間をかけてチェックしたのは、3 シリーズ グランツーリスモの特徴のひとつである広大なラゲージ・ルームだったのだが、この時はデザイナー目線というよりも経営者目線も入り交じっていたようだ。
「いやデザインオフィスというのは、作品の移動が多いんです。会社にこのクルマがあったら便利だろうな」
BMW 3 Series Gran Tourismo|ビー・エム・ダブリュー 3 シリーズ グランツーリスモ
デザインオフィス nendo 代表 佐藤オオキが見た
BMW 3 シリーズ グランツーリスモ(3)
デザインの自由
実は佐藤さん、大学で建築を学んでいる頃は、そのルールや制約の多さを少し窮屈に感じていたという。転機は卒業後に見た国際家具見本市「ミラノサローネ」。海外のデザイナーたちはあらゆるものを自由にデザインしていた。色も形も国籍も関係なく、自由で柔軟な発想でデザインしたいという思いを込め、オフィスの名をnendo(粘土)とした。
店舗デザイン、シューズ、消臭剤、家具のプロデュース……nendoへの企業からの依頼は途切れることがない。
「デザインはモノと人間がコミュニケーションをとる手段です。それぞれ専門の業界からは出てこなかった考え方、見方を吹き込むのが僕の役割。昔は技術的に使えなかった素材や色が使えるようになっているケースも結構ありますし、一度トライしてまったく売れなかった色が、その後もずっとタブーになっていることもあります。携帯電話のグリーンとか。でもそれは本当にダメなのか」
佐藤さんはBMW 3 シリーズ グランツーリスモにもBMWのあたらしさ、柔軟さを感じるという。
「人を乗せるのはセダン、カッコつけるのはクーペ、荷物を載せるのはワゴンといった固定観念をいったん捨て、『荷物をたくさん積めるクーペがあってもいいんじゃないか?』『クーペよりも美しいワゴンがあってはダメなのか』という柔軟な発想によるデザインなんだとおもいます」
BMW 3 Series Gran Tourismo|ビー・エム・ダブリュー 3 シリーズ グランツーリスモ
デザインオフィス nendo 代表 佐藤オオキが見た
BMW 3 シリーズ グランツーリスモ(4)
揺るぎない本質と挑戦する精神
BMW 3 シリーズ グランツーリスモの運転席で、ステアリング・ホイールやシートの感触を確かめていた佐藤さんが、何かを納得したような表情になった後、ゆっくりと言葉を選びながら話しはじめる。
「CAMPERの靴や店舗のデザインをお手伝いしているんですが、CAMPERはスポーツ用のスニーカーでもなければ、フォーマルな革靴でもなくて、正直、当初は捉えにくいブランドだなとおもっていたんです」
「でも、彼らの『履いてみればわかってもらえるとおもう。歩くことを楽しんでもらうためのブランドだということが』という説明を聞いてからは、どんどんイメージが膨らんできました」
「BMW 3 シリーズ グランツーリスモもCAMPERと似ているところがあるような気がします。スポーツカーとかセダンといった従来のカテゴリーには当てはまらないけれど、乗ってもらえればまごうことなきBMWだとわかってもらえる自信が、彼らにはあるんでしょうね」
自身がデザインにかかわったルーフボックスが国内メーカーから発売間近の佐藤さん。クルマのデザインの可能性も?
「いつかクルマそのものもデザインしてみたいですね。グラフィック、工業製品、家具など、いろいろな分野の製品を手掛させていただいていますが、クルマのデザインはそれらの全ての要素が交じり合ってるので、今まで経験してきたことが活かせると思うんです」と意気込む。
BMW designed by nendoを見てみたい!
SATO Oki|佐藤オオキ
1977年カナダ生まれ。2002年、早稲田大学大学院修士課程修了後、有限会社nendoを設立。プロダクトデザイン、インテリアデザイン、グラフィック、建築と幅広い分野で活躍し、2006年、Newsweek誌の「世界が尊敬する日本人100人」に選出された。2008年には「cabbage chair」がニューヨーク近代美術館の永久収蔵品となっている。http://www.nendo.jp
BMW 320i Gran Turismo|ビー・エム・ダブリュー 320i グランツーリスモ
ボディサイズ|全長4,825×全幅1,830×全高1,510mm
ホイールベース|2,920 mm
トレッド 前/後|1,540 / 1,585 mm
最低地上高|165 mm
最小回転半径|5.7 メートル
トランク容量|520 - 1,600 リットル
重量|1,660 kg
エンジン|2.0リッター 直列4気筒 DOHC BMW ツインパワー・ターボ・ガソリン・エンジン
最高出力| 135kW(184ps)/ 5,000 rpm
最大トルク|270Nm / 1,250-4,500 rpm
トランスミッション|電子油圧制御式8速AT
駆動方式|FR
タイヤ|225/55R17(写真のModern ラインは225/50R18)
0-100km/h加速|7.9 秒
最高速度|230km/h
燃費(JC08モード)|15.0 km/ℓ
価格|494万円、スポーツ/モダン/ラグジュアリーは514万円、Mスポーツ(2013年秋日本導入予定)は543万円