連載|体感する読書~THE READING EXPERIENCE~|第1回「外見も中身もタダものじゃない!」
新連載|THE READING EXPERIENCE
今月の3冊|Apr. 2013
第1回「外見も中身もタダものじゃない!」
人生を左右する本との出合い。それは一瞬の出来事かも知れません。そんな特別な1冊を求めて世界を駆け巡るブックハンター、twelvebooksの濱中敦史さんがセレクトした写真集・作品集を3冊ご紹介します。見てよし、触ってよし、飾ってよし。ようこそ、体感する本の世界へ。
Selected by HAMANAKA Atsushi (twelvebooks)Photographs by JAMANDFIXText by TANAKA Junko (OPENERS)
なかからホテルが飛び出す本!?
オーストラリア・シドニーに、1970年代半ば建築家のハリー・サイドラー(Harry Seidler)によって設計された、円形状の建物「Commercial Travellers’ Association」があります。4階に広がるホテルフロアを厚紙で再現。それらを撮影し、まとめたのが本作です。円形状に16室の客室が並んだ建物の構造にならい、作品集もおなじ形状にディスプレイできるのが魅力的。公共施設とアーティストを繋ぐ、画期的なプロジェクトをおこなっている「Kaldor Art Projects」との共同出版です。
『The Dailies』
著者|トーマス・デマンド(Thomas Demand)
サイズ|370 × 340 mm
ページ数|64ページ
出版社|MACK (www.mackbooks.co.uk)
価格|2万6250円
販売先|1LDK/DEPOT.ほか
発売中
巧みな編集で事件を“魅せる”
アメリカ人フォトグラファー、クリスチャン・パターソン(Christian Patterson)による自身2冊目となる写真集。実際にアメリカで起こった殺人事件を基にした衝撃作。事件の現場や捜査資料、加害者や被害者の所持品などを複写したノンフィクションな部分と、そこからインスパイアされたイメージを形にしたフィクションな部分とが巧みな編集でまとめられています。捜査メモを想わせる紙切れが挟み込まれていたり……随所に徹底的なこだわりを感じさせる1冊。
『Redheaded Peckerwood – 3rd Edition』
著者|クリスチャン・パターソン(Christian Patterson)
サイズ|190 × 240 mm
ページ数|168ページ
出版社|MACK (www.mackbooks.co.uk)
価格|7140円
販売先|VACANTほか
発売中
マグナム・アイが写し出す教会
歴史ある写真家集団「マグナム・フォト」のメンバーでもあるイギリス人フォトグラファー、マーク・パワー(Mark Power)。彼はポーランドに在住していたとき、カトリック教会の許可を得て、じつに50カ所以上の教会を撮影。その支配力や影響力を独自の視点で捉えました。大きく写し出された集金用の細長い穴のページをめくると、壮観な教会でおこなわれるミサのために集まった大衆の姿が観音開きで表れるという仕様からも、作者の意図を感じます。
『Mass』
著者|マーク・パワー(Mark Power)
サイズ|202 × 250 mm (見開き=404 × 510 mm)
ページ数|118ページ
出版社|GOST (www.gostbooks.com)
価格|8820円
販売先|VACANT、FLOTSAMBOOKSほか
発売中
濱中敦史|HAMANAKA Atsushi
twelvebooks代表。2010年3月、現代写真を中心に、独自のスタイルをもつ出版社やアーティストの活動をプロモーションするプラットフォームとして、「twelvebooks」を設立。洋書や洋雑誌の国内流通を手がけるほか、写真展の企画や選書、ディレクションまで、書籍やイメージに関わる活動を展開する。www.twelve-books.com