2台のホットなアバルトに試乗|Abarth
CAR / IMPRESSION
2015年7月10日

2台のホットなアバルトに試乗|Abarth

ABARTH 500|アバルト 500
ABARTH 595 Turismo|アバルト 595 ツーリズモ
ABARTH 595 Competizion|アバルト 595 コンペティツィオーネ
ABARTH 695 Edizione Maserati|アバルト 695 エデイツィオーネ マセラティ

アバルト500でサーキットを走る

「アバルト500」は、フィアットのコンパクトハッチバック「500(チンクエチェント)」をベースにしたスポーツモデルだ。今年の「東京オートサロン」で発表があったように、そのアバルト500がラインナップを刷新。一部、装備を変更することで価格を引き下げ、より身近な存在になった。また、あらたに追加された「アバルト595」は、アバルト500よりも、さらにパワフルなエンジンにセミオートマチックトランスミッションを組みあわせる。この2台のアバルトに山崎元裕氏がサーキットで試乗した。

Text by YAMAZAKI Motohiro
Photographs by ABE Masaya

アバルト595とは

アバルトの日本導入モデルが、その魅力をさらに高めた。まずはその概要を簡単に紹介しておこう。

最大のトピックスといえるのは、新導入となる「アバルト595」シリーズ。ラインナップは「ツーリズモ」と「コンペティツィオーネ」の2タイプで、ツーリズモでは、クーペのほかにカブリオレのボディータイプを選択することができる。クーペのみの設定となるコンペティツィオーネとのちがいは装備メニュー。おなじ17インチ径ながら専用デザインのホイールを採用するほか、フロントシートを軽量タイプのアルカンタラ&レザー仕様に。クローム仕上げのヒーテッド電動ドアミラーや、ハイパフォーマンスエキゾーストシステムの「Record Monza」、ツインデュアルエキゾーストパイプ、ボディーサイドのABARTHストライプ等々、コンペティツィオーネには、20万円というツーリズモとの価格差を十分に納得できるだけのバリューがある。

ABARTH 595 Turismo|アバルト 595 ツーリズモ

ABARTH 595 Turismo|アバルト 595 ツーリズモ

アバルト500もより魅力的に

595シリーズの誕生で、こちらもさらに魅力的な存在となったのが、「アバルト500」シリーズだ。シートをレザーからファブリックに、エアコンをオートからマニュアルに変更したことで、価格は従来型比で30万円安の269万円にまで下がった。しかしこの500、単なるアバルトのエントリーモデルだろうと、その存在を軽視するわけにはいかない。

走りは、あるいは595シリーズ以上に魅力的かもしれないというのが、個人的な感想だからだ。

ABARTH 500|アバルト 500
ABARTH 595 Turismo|アバルト 595 ツーリズモ
ABARTH 595 Competizion|アバルト 595 コンペティツィオーネ
ABARTH 695 Edizione Maserati|アバルト 695 エデイツィオーネ マセラティ

アバルト500でサーキットを走る(2)

アバルト500は素晴らしい

500と595に搭載されるエンジンは、いずれも1,368ccの直列4気筒DOHC16バルブ+ターボ。最高出力&最大トルクは、それぞれ135ps&180Nm(SPORTスイッチ使用時には206Nm)、160ps&206Nm(同230Nm)というスペック。この25ps&26Nmの差をどう考えるのかが、モデルチョイスでの問題だろう。

だが実際に500をドライブしてみると、シリーズ中唯一、5段MTとの組みあわせが実現していることもあり、その走りは想像以上に刺激的なものに仕上げられているのが分かる。エンジンは驚くほどスムーズに吹け上がり、アクセルレスポンスも高速域ではさらにその鋭さを増す。

ABARTH 500|アバルト 500

ABARTH 500|アバルト 500

きちんとした操作感をもつ5段MTをシフトしながら加速をつづけると、4速のトップエンドでは、車速は約180km/h+にまで到達。同時にそのスタイルや、2,300mmという短いホイールベースからは想像できないほどの安定感にも驚かされることになる。

コーナリングの楽しさも圧倒的だ。135psの最高出力は、現代のスポーツカーと比較すれば、あるいは一笑されるほどに小さな数字なのかもしれないが、5段MTを駆使して最適なエンジンスピードを探り、正確なステアリングと、十分に引き締められたフットワークの恩恵を受けながら、コーナーを軽快にクリアしていく楽しさは、何物にも代えがたい。ちなみにこの500では、タイヤとホイールは16インチとなるが、あえて17インチへのサイズアップを考える必要もないだろう。実に素晴らしいトータルバランスをもつ1台だ。

ABARTH 500|アバルト 500
ABARTH 595 Turismo|アバルト 595 ツーリズモ
ABARTH 595 Competizion|アバルト 595 コンペティツィオーネ
ABARTH 695 Edizione Maserati|アバルト 695 エデイツィオーネ マセラティ

アバルト500でサーキットを走る(3)

595ならばどれがいい?

ベースモデルでの(とはいえフィアット・グループ全体のラインナップから考えれば、それでもアバルトは特別な存在だが)走りを楽しんだあとに、つぎは595ツーリズモのステアリングを握る。前で触れたように、この595ツーリズモではカブリオレをチョイスすることも可能だが、やはりここは硬派なクーペで、そのパフォーマンスを体験したいとおもった。

595ツーリズモのキャビンで、まず好印象を抱いたのは、そこに醸し出される高級感だ。アバルトはこのモデルを、「快適性と上質感を重視した」と説明するが、たしかに我が身を包み込むその演出には、非の打ちどころがない。そう考えると、さらにトップから太陽光が燦々と降りそそぐカブリオレこそ、595ツーリズモのベストチョイスといえるのか。

ABARTH 595 Turismo|アバルト 595 ツーリズモ

ABARTH 595 Turismo|アバルト 595 ツーリズモ

シングルクラッチのセミATもここまで来た

そのような迷いのなかでエンジンを始動し、組みあわされるATモード付き5段シーケンシャルミッションの「1」ボタンをプッシュ。それからまずはATモードを選んで、アクセルを踏み込むと、このセミATは実に巧みなクラッチ制御を見せながら、595ツーリングを滑らかに加速させていく。シフトアップはストリートレベルの加速では、意外に早いタイミングでおこなわれるが、クラッチの切断時間は比較的短く、シングルクラッチのセミATも、ここまで進化したのかと改めて感動させられた次第だ。

500にたいして25psという最高出力でのアドバンテージは、ストリートではほとんどそれを意識させられることはないだろう。だがステージがワインディング、そしてサーキットへと移ると、この25psの恩恵というものがより明確なものになってくる。セミATはパドルによるマニュアル操作も可能。それによってコーナリング時には、ブレーキングとステアリング操作に集中できるという大きなメリットが生み出される。サスペンションにはKONI製のダンパーが使用されるなど、ここでも595シリーズは500にたいしての差を主張するが、確かにコーナーでのロールは、その量や速度変化ともに、よりスポーティーで自然なフィールへと仕上げられていた。

さらにおなじ595でもコンペティツィオーネになると、エキゾーストシステムによる演出で、走りにはさらにスパルタンな感覚が生み出される。それはまさにイタリアンスポーツの、そしてアバルトの伝統的なスポーツカーの世界なのだ。

究極のアバルトは100台が日本に

そして日本仕様のアバルトには、ほかにも大きな話題があった。

それは世界限定499台の中で、実に100台が日本に上陸するという、「695エディツィオーネ マセラティ」。

専用のボディーカラーをはじめ、マセラティの名を掲げるに相応しい、エクステリア&インテリアでのラグジュアリーなフィニッシュは、まさに一見の価値あり。

こちらはマセラティのカスタマーはもちろんのこと、究極のアバルトを求めるカスタマーからも、高い評価を得ることになるだろう。
それに試乗する機会が訪れたら、ぜひそのレポートをお届けしたい。

ABARTH 695 Edizione Maserati|アバルト 695 エデイツィオーネ マセラティ

spec

ABARTH 500|アバルト 500
ABARTH 595 Turismo & Competizione|アバルト 595 ツーリズモ & コンペティツィオーネ
ABARTH 595C Turismo|アバルト 595C ツーリズモ

ボディサイズ|
(500 & 595)  全長3,655×全幅1,625×全高1,515mm
(595C)  全長3,655×全幅1,625×全高1,505mm
ホイールベース|2,300 mm
トレッド 前/後|
(500)  1,415 / 1,410 mm
(595)  1,410 / 1,405 mm
トランク容量|
(500)  185-550 リットル
(595)  182-547 リットル
重量|
(500)  1,110 kg
(595)  1,120 kg
(595C)  1,160 kg
エンジン|1,368cc 直列4気筒 DOHC ターボ
最高出力|
(500)   99kW(135ps)/ 5,500 rpm
(595)   118kW(160ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|
(500)   180Nm(18.4kgm) / 4,500 rpm(SPORTスイッチ使用時 206Nm(21.0kgm)/3,000rpm)
(595)   206Nm(21.0kgm) / 2,000 rpm(SPORTスイッチ使用時 230Nm(23.5kgm)/3,000rpm)
トランスミッション|
(500)  5 段マニュアル
(595)  オートマチックモード付き5段シーケンシャル
駆動方式|FF
タイヤ|
(500)  195/45R16
(595)  205/40R17
燃費(10・15モード)|
(500)  13.9 km/ℓ
(595)  13.7 km/ℓ
CO2排出量|
(500)  167 g/km
(595)  169 g/km
価格|
(500)  269万円
(595 ツーリズモ)  319万円
(595 コンペティツィオーネ)  339万円
(595C ツーリズモ)  349万円

           
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