松浦俊夫|“記憶”に残るアーティスト、ウェルドン・アーヴィン
松浦俊夫|from TOKYO MOON 1月13日 オンエア
“記憶”に残るアーティスト、ウェルドン・アーヴィン
日曜の夜、上質な音楽とともにゆったりと流れる自分だけの時間は、おとなたちの至福のとき。そんな時間をさらに豊かにするのが、DJ松浦俊夫によるラジオプログラム『TOKYO MOON』――。彼が世界中から選りすぐったすばらしい音楽や知的好奇心を刺激するおとなのためのトピックスを、毎週日曜日Inter FM 76.1MHzにて24時からオンエア。ここでは、毎週放送されたばかりのプログラムを振り返ります。今週は、1970年代を中心に活躍した作曲家/ピアニスト、ウェルドン・アーヴィンにスポットを当ててお届けします。
Text by MATSUURA Toshio
現在の音楽シーンを予見したかのようなクロスオーバーサウンド
1980年代後半から90年代、クラブシーンを中心に巻き起こったレア・グルーブ・ムーブメントで、ソウル、ジャズそしてヒップホップとジャンルを超えた多くの音楽愛好家から70年代の作品が再び評価されたことにより、一躍脚光を浴びたアーティストのひとり、ウェルドン・アーヴィン。
スピリチュアルでソウルフル。ポップでありながらアクの強さを持つという、ある意味、現在の音楽シーンを予見したかのようなクロスオーバーなサウンド。反面極めて多面的でカオティックという、ひと言で説明することが難しい音楽性であるものの、衝撃的な自殺から10年が経った今なお、彼の残した音楽は我われの記憶に強く残っています。
ピアニスト、コンポーザー、劇作家、社会運動家……と多彩な才能の持ち主だった彼は、60年代後半にジャズ・シンガー、ニーナ・シモンのバンド・メンバーとなり、彼女の音楽監督を務めたことによりその音楽センスを開花。自身のレーベルからの2作、そしてスピリチュアル・ジャズを代表するインディペンデント・レーベル、Strata Eastから1作を発表し、その後メジャー・レーベルからファンの人気が高い『Cosmic Vortex』、『Spirit Man』、『Sinbad』の3枚のアルバムを発表しました。
そしてこの度、メジャーでの3作の直後、大学時代に専攻した文学の才能を生かし、自ら原作・脚本・音楽を担当し、出演までこなしたミュージカル作品「Young, Gifted And Broke」の音楽のマスター・テープが発見され、35年の時を超えた新作がここ日本で発表されました。
番組で紹介したメロウなジャズ・ファンク・ナンバー「Only Yesterday」から、コーラスのハーモニーが美しいソウルやグルービーなファンクまで、多数収録されています。そして貴重な映像が収められたドキュメンタリーDVD、初心者から彼のファンまでが楽しめる解説と資料が満載のブックレットまで素晴らしいパッケージング。
ぜひ手に取って欲しい作品です。
(映像はドキュメンタリーDVDに収録されたものと同内容の一部)
REVIEW|TRACK LIST
01. Darkstar / Young Heart's (Warp / Beat)
02. Sam Sanders / Loser (180 proof / BBQ)
03. Weldon Irvine / Only Yesterday (Shout Productions)
04. Jamie Lidell / Don't You Love Me (Warp / Beat)
05. Lucas Arruda / Sambadi -Patchworks Remix (Favorite)
06. Gabriele Poso / A Night with You -Yoruba House mix (INFRACom!)
07. LaRom Baker / You’re the Best -Tom Noble Disco Edit (Jazzman)
08. Weldon Irvine / I Love You (RCA Victor)
Lucas Arruda 「Sambadi 7」
Gabriele Poso
「Roots of Soul Remix EP」
V.A. 『Soul Spectrum 1』
Weldon Irvine 『Sinbad』
松浦俊夫『TOKYO MOON』
毎週日曜日24:00~24:30 ON AIR
月曜日24:30~25:00(再放送) ON AIR
Inter FM 76.1MHz
『TOKYO MOON』へのメッセージはこちらまで
moon@interfm.jp
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