メルセデスAMG C 63にポルトガルで試乗|Mercedes-AMG
Mercedes-AMG C 63|メルセデスAMG C 63
Cクラスのトップ オブ レンジ
メルセデスAMG C 63にポルトガルで試乗
メルセデス・ベンツ「Cクラス」のフラグシップモデルとして、去る5月に日本にも導入されたメルセデスAMG「C 63」をレーシングドライバーの佐藤久実氏が試乗した。その舞台に選ばれたのはポルトガル南部の都市ファロ。「AMG GT」譲りの新開発V8ツインターボエンジンを引っさげたニューマシンを、一般道とサーキットのふたつのシチュエーションでテストする。
Text by SATO Kumi
快適性を犠牲にしないバランス
昨年発売され、販売好調なメルセデス・ベンツ「Cクラス」。そのトップ オブ レンジとなるメルセデスAMG「C 63」が発表された。ひと足先に、ポルトガル・ファロで開催された国際試乗会でテストドライブする機会を得た。
試乗拠点となるファロ空港に整列して出迎えてくれたメルセデスAMG C 63は、相変わらずの存在感を示していた。スタンダードモデルに対して、ボンネットフードを50mm延長して尖ったノーズとなり、さらにフロントフェンダーを17mm拡大することで、よりワイド&ローのプロポーションとなっている。
早速、ドライブモードの「コンフォート」モードをチョイスして走り始めると、まず感心したのは、タイヤの当たりがマイルドで快適な乗り心地だった。ミシュランの「パイロットスーパースポーツ」という、スポーツカー向けハイパフォーマンスタイヤを装着しているにもかかわらず、だ。しかも、さすがAMGとおもったのは、18インチのホイールを装着している点。
最近は、見た目重視で大径ホイールを設定する傾向にあり、Cクラスのスタンダードモデルでさえ、19インチを装着するものもある。だがAMGは、やみもくにインチアップせず、パフォーマンスに見合ったタイヤとホイールをチョイスしている。もちろん、ホイールデザインやフェンダーとのクリアランスなど、ルックスにもこだわりはあるが。
先代は、かなりスポーティな性格に変貌を遂げた一方、やや尖った乗り心地は否めず、ハンドリングのために快適性がトレードオフされた側面があったが、ニューモデルはもはやそんな妥協はまったく見られない。
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ワインディングではスポーツモードが軽快
「Eクラス」、「Sクラス」はカンパニーユースが多いとのことだが、それに対して「Cクラス」は、プライベートユースが多い。AMGモデルを選ぶからにはスポーティな走りやパワーフィールを楽しみたいというニーズがあるとおもうが、とはいえ走行ステージは圧倒的に一般道。やはり快適性は重要なポイントであり、この日常シーンで実感できる進化はユーザーベネフィットも大きいだろう。
ドライブモードを「スポーツ」にすると、多少路面の路面のをうねりを拾ってゴツゴツしたフィーリングになった。が、突き上げのキツさはなく、むしろワインディングではスポーツモードの方が軽快なハンドリングを味わえた。
ポルトガルの高速道路の制限速度は120km/h。日本よりちょっと高いアベレージスピードでの走行であったが、高い安定性とフラットな乗り味が快適。静粛性も高く、ロングドライブも苦にならない性能を確認できた。
かくして、外気温約20度、青空のもと、快適なドライブで辿り着いた先は、「アルガルベ サーキット」。ここでは、さらなるハイパフォーマンスモデルのメルセデスAMG「C 63 S」が用意されていた。
ところで、新型メルセデスAMG C 63には、新開発のV型8気筒4リッターツインターボエンジンが搭載される。先代の6.2リッター自然吸気からダウンサイジングされたが、もちろん、パフォーマンスはアップしている。V8バンクの中に2個のターボチャージャーを搭載する「ホットインサイドV」レイアウトを採用することでコンパクト化を図るとともに、レスポンスの向上や排ガス低減などのメリットも狙ったものだ。
ちなみにこのエンジン、AMGのフラッグシップモデルである「AMG GT」直系とのこと。Cクラス向けにデチューンされたのかとおもいきや、最高出力350kW、最大トルク650Nmのアウトプットは、最高出力/最大トルクともにC 63の方が数値は上。
車重が重い分、クルマに見合ったパワーにしているそうだ。そして、AMG C 63 Sは、さらに出力が25kW、トルクが50Nmのパワーアップが図られている。
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サーキットで「C 63 S」を試す
メルセデスAMG C 63 Sは、エンジン以外にも、サーキットを速く走るためのスペシャルな装備を持つ。C 63の機械式ディファレンシャルに対し、よりトラクション性能に優れた電子制御式ディファレンシャルを採用。そして、「ダイナミックエンジンマウント」を備える。エンジンの下にダンパーが付いている、とイメージしてもらえれば良いだろう。
磁性流体による制御で、一般道など快適重視の際はソフトにして振動をいなし、サーキットのようなダイナミックな走行時は、エンジンの動きを抑えてよりステアリングレスポンスを向上させる。
そして、ドライブモードに「RACE」モードがくわわる。もちろん、サーキットではこのモードを選択した。
ところで、アルガルベ サーキットは、アップダウンに富み、ブラインドコーナーも多く、とてもじゃないが初見で走るのは難しい。AMGワークスドライバー先導のもとでの走行であったが、ペースを抑えるというよりは道案内役といった存在で、キッチリフォローしていくと、ほぼ全開に近いペースでの走行となった。
ストレートでアクセルを開けると、ドカーンとすさまじいトルク感とともに加速していき、アッという間にスピードが出る。だが、低回転域からトルクがあり、野太いエギゾーストサウンドのせいもあるのか、回転の上昇とともに盛り上がっていく、という雰囲気ではなく、また、安定性も高いため、意外とスピード感はない。つまり、安心してアクセルを踏める。
そしてもちろん、ハイパワーにバランスされたストッピングパワーも備える。ブレーキのペダルタッチが軽いので、最初こそ一瞬、不安感を抱いたが、踏めばしっかり効いてくれ、コントロール性も良い。
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安全で快適でありながらドライブフィールを堪能できる
メルセデスAMG C 63にはパドルシフトが装備されるが、レブリミットに達すると自動的にシフトアップしてくれるし、ブレーキで減速すればダウンもしてくれる。しもかそのタイミングも絶妙なので、クルマ任せで楽して速く走れる。
C 63との比較をしていないので確証はないが、おそらくは例の、ダイナミックエンジンマウントが奏功しているのだろう、コーナーのターンインでステアリングを切り込むと、スッとレスポンス良くノーズが入っていく。
立ち上がりでアクセルを踏み込むと、路面を蹴飛ばすようなトラクションがかかる。が、なにしろ700Nmのトルクがあるから、舵角を残したままアクセルを踏み急ぐと、アッという間にリアが滑り出す。一瞬ドキッとするが、滑り出すスピードとおなじくらい素早いタイミングでESPが作動し、横滑りを抑えてくれる。
ドライビング時には若干介入のタイミングが早いとも感じたが、スポーツモデルとはいえサルーンカー。さらに、もっと横滑りしてしまうと、これだけのトルクゆえ、そうそう簡単に制御はできない。なので、冷静に考えれば妥当な制御といえそうだ。
そう言えば、この時まで、まったくESPの存在を感じさせるシーンはなかった。
ひと昔前までのAMGは“直線番長”で、パワーはあるが、ひたすらアンダーステアのハンドリングだった。しかも、コーナー進入時から至るところで電子デバイスが頻繁に作動したものだが、このあたらしいC 63 Sは、パワーとハンドリングがバランスされ、サーキットでも走りを堪能できた。
メルセデスAMG C 63は、街中からサーキットまで、安全に、そして快適に、スポーティなドライブフィールを味わえるモデルだ。
Mercedes-AMG C 63|メルセデスAMG C 63
ボディサイズ|全長 4,755 × 全幅 1,840 × 全高 1,430 mm
ホイールベース|2,840 mm
トレッド 前/後|1,610 / 1,545 mm
重量|1,790 kg
エンジン|V型8気筒 3,982 cc ツインターボ
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|10.5 : 1
最高出力| 350 kW(476 ps)/ 5,500-6,250 rpm
最大トルク|650 Nm(66.3 kgm)/ 1,750-4,500 rpm
トランスミッション|7段AT(AMGスピードシフトMCT)
駆動方式|FR
サスペンション 前|4リンク
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/35R19 / 265/35R19
0-100km/h加速|4.1 秒
最高速度|250 km/h
燃費(JC08モード)|9.7 km/ℓ
トランク容量|445 ℓ
価格│1,195万円
Mercedes-AMG C 63 S|メルセデス AMG C 63 S
ボディサイズ|全長 4,755 × 全幅 1,840 × 全高 1,430 mm
ホイールベース|2,840 mm
トレッド 前/後|1,610 / 1,545 mm
重量|1,790 kg
エンジン|3,982 cc V型8気筒 ツインターボ
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|10.5 : 1
最高出力| 375 kW(510 ps)/ 5,500-6,250 rpm
最大トルク|700 Nm(71.4 kgm)/ 1,750-4,500 rpm
トランスミッション|7段AT(AMGスピードシフトMCT)
駆動方式|FR
サスペンション 前|4リンク
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/35R19 / 265/35R19
0-100km/h加速|4.0 秒
最高速度|250 km/h
燃費(JC08モード)|9.5 km/ℓ
トランク容量|445 ℓ
価格|1,325万円
メルセデスコール
0120-190-610