PORSCHE 918 RSR|ポルシェ 918 RSR 公開
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2015年3月11日

PORSCHE 918 RSR|ポルシェ 918 RSR 公開

PORSCHE 918 RSR|ポルシェ 918 RSR

伝統を背負うハイブリッドスポーツ、918 RSR 公開

ポルシェAGは、デトロイトモーターショーのプレスデイで、スタディモデル918 RSRのワールドプレミアをおこなった。

文=松尾 大

最高出力767psを発生するパワートレイン

ポルシェ 918 RSRはミッドシップ2シータークーペで、911 GT3 Rハイブリッドに採用されたテクノロジーと、918スパイダーのデザインとを融合させた、ハイブリッドスーパースポーツカーだ。テクノロジーのベースとなった911 GT3 R ハイブリッドは、フライホイールジェネレーターを備えたレーシングマシンとして、ニュルブルクリンク24時間耐久レースのほか、アメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)がおこなわれた米国、ロードアトランタやインターコンチネンタル・ル・マン・カップ(ILMC)の開催地である中国の珠海で、その圧倒的なパフォーマンスを証明し、注目を集めたモデルだ。

デザインは、2010年に姿をあらわした918スパイダーとおなじ文脈で造形されており、ポルシェのデザイナーは908ロングテールクーペ(1969)や917ショートテールクーペ(1971)などのクラシックなポルシェの長距離レーシングマシンが築いてきた伝統を踏まえながら、「形態は機能に従う」というモダニズムの理念を具現している。力強いホイールアーチ、ダイナミックなエアインテーク、空力特性に優れた形状のコックピットなどが、エレガントなラインを生み出している。

ねじれ剛性に優れた、軽量なカーボンファイバー強化型プラスチック(CFRP)製モノコックボディの内部に搭載されるのは、プロトタイプレーシングマシン、RSスパイダーのV8直噴エンジンに改良をくわえたもので、最高出力414kW(563ps)/10,300 rpmを発生。さらに、左右のフロントホイールに設置されたモーターは、各75 kW(102ps)を発生し、エンジンとモーターの合計出力は564kW(767ps)と、“超”がつくほど強力だ。なお、モーターから発生するパワーはブレーキング中に生み出される、いわゆる回生ブレーキシステムで、バッテリーではなく、助手席位置に搭載されたフライホイールジェネレーターに蓄えられる。

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このフライホイールジェネレーターはモーターの一種で、最速36,000 rpmで回転するローターが回生エネルギーを蓄える。フロントアクスルに組み込まれた2個のモーターは、ブレーキング中には機能を反転させてジェネレーターとして働き、充電をおこなう。そのエネルギーは加速や追い越し時にスイッチ操作ひとつで利用することが可能で、システムがフル充電されている場合、追加パワーは約8秒間得られるというものだ。

このモーターは、フロントアクスルにおいて可変トルク配分をおこなうトルク・ベクトリング機能を備えているというのも注目すべき点だ。これにより、俊敏性とステアリングレスポンスがさらに向上しているという。トランスミッションはRSスパイダー用をベースにしたもので、このコンスタントメッシュの6速トランスミッションは、前後方向に配されたシャフトと直歯平歯車を採用しており、レーシングステアリングホイール背後に備えられたふたつのシフトパドルをつかって操作する。

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レースラボとしてのあるべき装備群

そのほかの装備をみると、ルーフにもうけられたエアインテーク、CFRP製リッドのフロントおよびリアフードを素早く操作するためのロック、ピットラジオとテレメトリー用の2本のルーフアンテナ、RSスパイダーに似た小型のサイドのフロントフリック、フロントリップの下のエアスプリッター、センターロックシステム採用の19インチホイールに装着されたスリックタイヤなどに、「レースラボ」としての性格が色濃く出ている。

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インテリアも非常にレーシーで、918スパイダーとは大きくことなる簡素なものだ。レーシングステアリングホイールはギアが点滅し、ディスプレイ画面前のステアリングコラムにもうけられたディスプレイがドライバーに情報をあたえる。また、918スパイダーではエルゴノミクスの最先端を行くタッチ式ユーザーインターフェースつきの未来的なセンターコンソールが採用されていたが、この918 RSRではロッカースイッチがついた最小限のコンソールが装備されているだけだ。

ちなみに、今回のショーモデルにつけられたスターティングナンバー「22」は、ポルシェ モータースポーツがル・マン24時間レースで初の総合優勝を飾った1971年、ヘルムート・マルコ/ジィズ・ヴァン・レネップ組のポルシェ917ショートテールクーペにつけられていたナンバー。この車両が樹立した総走行距離5335.313 km(平均速度222.304 km/h)という記録は、2010年まで39年間にわたり破られることがなかった。この917も「レースラボ」として時代を大きく先取りし、マグネシウム製のスペースフレームは軽量構造の分野であたらしいスタンダードを打ち立てるものだった。その「22」を背負ったことから、この918 RSRもなんらかのレース活動をおこなっていくのではないかとみられている。

           
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