連載・柳本浩市|第34回 西澤明洋氏とブランディングデザインについて語る(後編)

連載・柳本浩市|第34回 西澤明洋氏とブランディングデザインについて語る(後編)

How to see design

柳本浩市×西澤明洋対談

デザイナーがデザインマネジメントをするという行為について考える

第34回 西澤明洋氏とブランディングデザインについて語る(後編・1)

今回は、西澤明洋氏(EIGHT BRANDING DESIGN)を迎えて「ブランディングデザイン」についてお話を伺っています。前編中編につづいて、ブランディングデザインの現状と課題を語り合います。

前編はこちら
中編はこちら

Text by YANAGIMOTO Koichi

「経営者のデザインリテラシーの問題は重要です」(西澤)

柳本 西澤さんのおっしゃるとおり、デザインだけで終わっているプロジェクトがすごく多いですよね。30年くらい前に、上の世代が地場産業と組んでやってきたことがことごとく失敗しているのは、おそらく表層的なデザインだけをやったということが原因なのではないかと。デザインが悪いから売れない、という発想でデザイナーに発注してしまった。それがそもそもの間違いですよね。マネジメントができないデザイナーが結局自分たちのデザインを発表する場を作っただけなんですよ。

西澤 そうなんですよね。それはつまりリテラシーの問題で、ひとつはデザイナーの方に経営リテラシーが足りなかったこと。もうひとつは発注する側の問題もあるんですね。発注する側がデザイナーという人種を知らなさすぎたということが問題で。両方とも無知だったという話で、それは仕方のなかったことかもしれませんが、私たちはその失敗と反省を十分に生かさなくてはならない世代だと自覚しています。そうでないと、たまに産地などで講演させてもらう際に、地元のひとに「またいかがわしい横文字連中が来たな」みたいに警戒されてしまいます(笑)。

柳本 それは過去にみんな痛い目にあってきているからですね(笑)。

西澤 経営者のデザインリテラシーの問題は重要で、やっぱり勉強してもらわなくてはいけないと思っています。私が今、力をいれているのが経営者のデザインリテラシーの底上げです。私の講演会は、ほとんどがデザイナー向けではなく経営者向けです。世の中のあらゆる企業にデザイナーをもっとちゃんと活用してもらいたいと思っています。

デザイナーをどう使うかというのは、使いどころなんです。たとえばブランディングのステージにかんして、マネジメント、コンテンツ、コミュニケーションの3階層の話をしましたけれど、私だって、これら3階層全部をデザイナーができるなんて思っていません。ただ、「経営戦略を考える際にデザインをうまく使ってくれたら、デザイナーらしい発想とか、そのビジュアライズ能力を生かして、今、普通に経営しているよりも、もっとコミュニケーションが良くなる可能性があるよ」ということを理解してもらいたいです。コンテンツ開発になるとさらにもっとデザインの貢献度は高くなると思います。デザイナーの発想力や仮説構築力は、コンテンツの企画・開発に必ず役に立つはずです。

そしてコミュニケーションにかんしていうと、お客さまとの接点になるコンタクトポイントすべてにおいて、デザイナーがなんらかかかわりコントロールすべきだと思っています。大きくデザインが貢献できる領域なわけです。

つまり経営者にとって、お付き合いしていくデザイナーが、何が得手で何が不得手なのか、それを見極めてきちんと経営資源に積極的に活用していこうという意識が非常に重要です。これが経営者から見た場合のデザインマネジメントなわけです。

ブランディングというロジックのもとに経営者も歩み寄ってもらいたいし、私たちもデザイナーも歩み寄らなくてはならない。経営とデザインがきちんと融合すれば、結果を出す確率はぐっと上がると思います。

デザインのことをよくわかっている経営者には、スキルの高い外部の専門デザイナーを使わなくとも、社内のインハウスデザイナーだけでもブランドにとって良いデザインを作りだせることができるひとがいます。要はデザイナーのスキルというよりは「デザイナーを活かす」スキルなわけです。

デザインを活かすという考え方が社会的にもっと普及しないと、いつまでたっても良いデザインは生まれてこないと思っています。もちろん、デザイナーの上手い下手の問題はたしかにあります。しかしそれ以上に「デザイナーを活かす」視点は重要になります。

柳本 まったくそのとおりですね。

柳本浩市|西澤明洋 02
柳本浩市|西澤明洋 04

「ブランディングとは経営そのものです」(西澤)

西澤 とくにデザインマネジメントにとってはそこが本当に大切です。デザインをどう経営に活かすかということが大事で、ここを真剣に考えているひとが意外と少ないし、それを勉強しているひとも少ない。なので、ブランディングというものを表面的に撫でてはダメなんです。言葉として流行っているので勘違いしがちですけど、ブランディングとは経営そのものです。経営をデザインするということはどういうことなのか、そこを真剣に考えないといけません。

逆も一緒で、デザイナーで経営に疎いというひとはたくさんいますけど、もうわからないではすまされない時代に突入していると思っています。自分が社長だったらどうするかということを真剣に考えるだけのシンプルな作業です。本気でそのブランドのことを考えたら、そんなに難しいことではありません。私はそのシミュレーションがけっこう好きですね。

たとえば、はじめて面談する企業さんがいたら、普通のデザイナーが聞かないようなことまで徹底的にヒヤリングをします。社歴だったり売り上げだったり、組織体制だったり、中期経営計画だったり。そこまで教えていただくとデザイナーなりの思考で、「自分がここの社長だったらこうするのにな」というアイデアが浮かんできます。私はそれこそが、デザイナーがデザインマネジメントをするという行為だと思っているんです。もちろんそれは偏ったものの見方ということはわかっています。なので、今度はそれを経営者とディスカッションして、「いや、そうじゃない、こうだろう」と検証してみたり。そういう経営者とデザイナーのやりとりが大事なんですね。そこでうまく経営者と納得できる筋道が整理できれば、その会社のブランディングはだいたい成功します。私はそこを大事にしてクライアントとお付き合いしています。

ABOUT
YANAGIMOTO Kouichi

幼少のころ、植草甚一に影響を受けジャズと古本に目覚め、その後小学校1年生のときに発売された『Made in USA cartalog』でアメリカ文化の虜に。 そのころから古着と家具などを集めはじめる。その後、現在に至るま …