前田司郎監督×小泉今日子×二階堂ふみ『ふきげんな過去』|MOVIE
LOUNGE / MOVIE
2016年6月18日

前田司郎監督×小泉今日子×二階堂ふみ『ふきげんな過去』|MOVIE

MOVIE|小泉今日子×二階堂ふみW主演が話題

異才の劇作家・前田司郎監督作品『ふきげんな過去』

劇団「五反田団」を主宰する異才の天才劇作家・前田司郎監督と、強烈な魅力を放つ二人の女優、小泉今日子×二階堂ふみがタッグを組んだ、眩しく可笑しくも切ない愛と孤独と成長の映画『ふきげんな過去』は、6月25日(土)、テアトル新宿ほか全国ロードショー。

Text by OPENERS

映画全体が「ふきげん」さで覆われている映画

冒頭からこだまするセミの声、首都高の騒音、二階堂ふみ演じる果子(かこ)の眉間のシワや、だるそうな話し方、ビニール傘をコンクリートで引きずる音、そのすべてが「ふきげん」さを前面に醸し出している。主人公・果子の「毎日が死ぬほど退屈でつまらない」という気持ちが具現化しているようだった。「この退屈な毎日から抜けだしたいのに、お金も行くとこもないし、どうしていいかわからない」という思春期特有の「ふきげん」さを、二階堂ふみは見事に演じている。

サブ5

©2016「ふきげんな過去」製作委員会

サブ2

そんな「ふきげん」な映画のスパイスとなるのが、小泉今日子演じる18年前に死んだはずの伯母・未来子(みきこ)の登場である。戸籍も消滅している前科持ちの未来子の登場は、それまでの現実の世界から一気に非日常を作り出す。夜の森に小舟を漕いで向かったり、爆弾を作ったり、怪盗のように夜の星となって消えたり…未来子が行う一つ一つの突拍子もない行動。自分の出生や家族に感じていたもやもやとした秘密も少しずつ明るみになり、退屈していた女子高生の果子(過去)は未来子(未来)に憧れを抱かせる。

この映画で特に印象的なのは、「ワニ」と「爆弾」と「豆」の存在だ。多くは語れないが、物語の舞台である北品川の食堂「蓮月庵」では女たちが毎日豆をむいている。看板料理の下ごしらえなのだが、豆をむきながら淡々と家族の談話が行われるその姿はいつの世も変わらない平和で暖かい大切な空間を感じさせてくれる。

メガホンを取ったのは、三島由紀夫賞、向田邦子賞受賞、岸田國士戯曲賞など錚々たる賞を受賞し、劇団「五反田団」を主宰する、異才の天才劇作家・前田司郎。『ジ、エクストリーム、スキヤキ』では気負いすぎて「もう映画はいい…恐い」と言っていたが、故・市川準監督への想いを胸に、「今度は自分が観たいものを撮ろう!」と満を持してオリジナル脚本で人間ドラマに挑んだ。『ふきげんな過去』は過去と未来が隣接する物語。そのアイディアをゼロから生みだし、「今日」を描く。人間同士の〝わかりあえなさ〟と〝わかりあいたさ〟、ここではない世界を求めては孤独になってしまう人たち。そんな登場人物たちの滑稽さを、監督・前田司郎の真骨頂である巧みな台詞回しで操り、人間模様を浮き彫りにしながら、観る者をとつぜん独自の世界へと引き込んでいく。

サブ2

前田司郎監督 ©2016「ふきげんな過去」製作委員会

前田監督のもと、今回初共演となった二大スターの小泉今日子と二階堂ふみ。「今回初めてだったのですが、演じているときのプロフェッショナルなところと、21歳の素のままの女の子が共存していてとても嬉しかったです。」と若き実力派女優との共演を喜ぶ小泉と、「小泉さんは"素敵"という言葉が何よりも似合う方だと、現場でご一緒させて頂いて感じていました。美してくて儚くて強いお母さんと過ごした一時を、カコはこの先も追いかけ続けていくのかな、と思いながら。」と大スターとの共演の感動を語った二階堂。二人の強烈な個性は、ぶつかり合いながらも調和し、まるで本当の親子のように感じるほど。

主演と同様、脇を固める共演者も皆、一癖も二癖も持つ実力派が揃う。姉の男と結婚し、姉の娘を自分の娘として育て上げる肝っ玉かぁちゃんの兵藤公美、タバコをふかしながら二人の娘を想う母親役の梅沢昌代、ダメダメなのになぜか色気のある父親の板尾創路、非現実の世界を醸し出す高良健吾、対照的に現実を醸し出すおちゃらけた幼馴染の山田裕貴、チョイ役ながら思わず笑ってしまうコントユニット・シティボーイズの3方(大竹まこと、きたろう、斉木しげる)など。特に、いつも「カコちゃん、カコちゃん」と果子にまとわりつくいとこの子供・カナ役を演じた山田望叶の演技は、ホッと心を和ませ笑わせてくれる。

果子(過去)から未来子(未来)へと歩む眩しく可笑しくも切ない、愛と孤独と成長の物語『ふきげんな過去』は、6月25日(土)、テアトル新宿ほか全国ロードショー。

サブ5

©2016「ふきげんな過去」製作委員会

サブ2

毎日が死ぬほど退屈でつまらない、ふきげんな夏に

果子(二階堂ふみ)は、毎日が死ぬほど退屈でつまらない。けれどそこから抜けだして他に行くこともできず無為な夏を過ごしていた。ある日、果子たち家族の前に、18年前に死んだはずの伯母・未来子(小泉今日子)が、突然戻ってきて告げる。「あたし生きてたの」。戸籍も消滅している前科持ちの未来子。そして自分が本当の母親だというが・・・。

「みんな寂しいんじゃない?一人でいても家族といても――」 突然現れた伯母・未来子との同居が、果子の夏を特別な時間へと変える。

『ふきげんな過去』
主演|小泉今日子 二階堂ふみ
出演|高良健吾 山田望叶 兵藤公美 山田裕貴 / 大竹まこと きたろう 斉木しげる / 黒川芽以 梅沢昌代 板尾創路
監督・脚本|前田司郎 音楽|岡田 徹 主題歌|佐藤奈々子「花の夜」
製作|「ふきげんな過去」製作委員会 
2016年/日本/120分/5.1ch/ビスタ/カラー/デジタル ©2016「ふきげんな過去」製作委員会
http://fukigen.jp/

           
Photo Gallery