ジャン=ミシェル オトニエルによる展覧会『マイ ウェイ』来日|Jean Michel OTHONIEL “MY WAY”

ジャン=ミシェル オトニエルによる展覧会『マイ ウェイ』来日|Jean Michel OTHONIEL “MY WAY”

LOUNGE ART

フランスを代表する現代美術作家のこれまでとこれから

『ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ』

パリで3カ月のあいだに20万人を集めるという記録的な成功をおさめた展覧会『ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ』が来日。品川、原美術館にて2012年1月7日から3月11日まで公開されるこの展覧会では、パリよりもさらに充実した子どものためのワークショップ『ふしぎな現実』も併催。OPENERSでは来日したオトニエル氏へのインタビューの機会をえた!

Interviewer&Text: SUZUKI Fumihiko(OPENERS)Photo: JAMANDFIX

フランスを代表する芸術家と昭和初期の名建築の出会い

1938年建造の私邸を改装して1979年から美術館として運営されている品川の原美術館。住宅が軒を寄せ合う界隈に、ゆったりと庭を構えるこの瀟洒な洋風建築は、優しい陽光につつまれ、別天地のように穏やかだった。そこでは陽光とおなじように穏やかであたたかいフランス人芸術家が、愛情を込めて作品を並べたばかり。パリのメトロ駅「パレ・ロワイヤル」の入り口を飾る作品『夢遊病者のキオスク』や、群馬・ハラミュージアム アークの野外インスタレーション『kokoro』などで知られる現代フランスを代表する芸術家、ジャン=ミシェル・オトニエルが、パリで催した展覧会を原美術館のために再構成したのだ。

ガラスを使うことによって訪れた転機

── 今回の展覧会は『マイ ウェイ』というタイトルですが、キャリアを振り返るという意味でしょうか?

ええ。この展覧会では20年以上にわたる僕の作品がカバーされています。僕のこれまでを一気に見るような、ちょっと学問的っていうのかな、僕にとっての節目となる時期ごとに部屋をわけて、それを歩きながら体験してもらう。それで、僕の人生というのか、考え方みたいなものが表現できたらいいなと思っているんです。

この部屋(ギャラリーII)はちょうど転換期といえる時期ですね。ガラスを使い始めた時期ですから。それまでは硫黄とか、鋼鉄、鉛、布、刺繍といった素材で作品を作っていました。やわらかくて、変化する素材です。それで、液体から固体になるガラスに出会ったとき、これが変化する素材として一番いいなと感じたんです。この壁にかけてある黒いガラスの作品が僕の最初のガラス作品です。僕にとっては大事な作品で、火山由来のガラスを2年間、フランスのガラス研究所で、どうやったら素材として使えるか学びました。

ジャン=ミシェル オトニエルによる展覧会『マイ ウェイ』来日 02

最初のガラス作品『語音転換(Le Contrepet)』 1992年
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

── このガラスは最初から黒いんですか?

そうです。黒くて、透過性がない。これが最初の挑戦でした。これを作るときに、ガラス加工の世界を知ったんです。そこに可能性っていうかな、ガラスは彫刻みたいなものとして使えるんじゃないか、と感じました。

── これはオトニエルさんひとりで作ったんですか?

型を作ったのが僕です。そこが転機になったところで、この作品を作るまで、僕はひとりぼっちで作品を作っていたんですよ。アトリエにこもって、硫黄なんかをこねて、ひとりぼっちなんです。でも、ガラス作品はひとりじゃ作れない。チームで働くんです。ガラス職人、ガラスを吹く人、と、いろいろな人がいて。

ジャン=ミシェル オトニエルによる展覧会『マイ ウェイ』来日 03

『無題(Sans titre)』 1997年
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

ジャン=ミシェル オトニエルによる展覧会『マイ ウェイ』来日 04

『自立する大きな結び目(Le Grand Noeud Autoporté)』 2011年
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

それで、小さめのガラス作品を作るようになって──あそこにぶら下がっているものもそうです。小さいでしょ。それになんだかすごく個人的なものという感じで。こう、身体的で、ちょっと外に出せないみたいな。エロチックなくだものみたい。初期のガラス作品はこんな感じなんです。まだこのころの僕は引っ込み思案でした。でもだんだん気が大きくなってきて、作品も大きくなっていく。この時期の最後のころの作品はあの『自立する大きな結び目』だけれど、もう建築みたいなサイズでしょう。つまり、この部屋は、引きこもりっぽい、内向的な僕が、オープンになっていく時期なんだ。

── チームは何人ですか?

作品の構想はパリでやっていて、僕をふくめて4人のチーム。それから、職人の仕事なわけだけれど、大きなプロジェクトだと30~40人。職人はヴェネツィアのムラーノ島のイタリア人なんだ。ムラーノの職人がつくるガラスは色も素晴らしいし、素材も最高だよ。窓の外の作品を見てよ。すごいでしょ。今日は天気もいいし。幸せだね。

── 不定形のガラスの輪などにも型があるんでしょうか?

いやいや、そういうものは手づくりです。そういった形ができるのがガラスのいびつさというか、規則に従ってはくれないところで、作り方は、いまの時代としてはかなり込み入ったものです。というのも、普通ガラスというのは、キッチリと形が出る素材なんですね。だから有機的な形を与えるのは難しいんです。

ジャン=ミシェル オトニエルによる展覧会『マイ ウェイ』来日 04

── そこがオトニエルさんにとってのガラスの魅力でしょうか?

うーん。そうとも言い切れないけれど僕は技術的な部分にもすごく惹かれるんだ。もちろん、アイデアに形を与え、大きなものを作り、多くの人に公開し、みんなを魅了したい。そういう気持ちはあるけれど、モノを作るというところがまた面白いんです。職人さんからもすごく刺激を受けるよ。