世界で50本だけのオロロジカル・マシン｜MB&F
MB&F｜エム・ビー・アンドエフ
まるでSF映画の宇宙船
世界で50本だけのオロロジカル・マシン
今回ご紹介するのは、ハリー・ウィンストン・レア・タイムピーシーズの元最高経営責任者、マクシミリアン・ブッサー氏が立ち上げた、世界初のオロロジカルコンセプトブランド、MB&Fだ。才気あふれる独立時計師たちとの協同プロジェクトを成功させ、世界の時計愛好家から注目されている。ごく一部の業界関係者だけに公開された新作「HM6」の全貌をご紹介しよう。
Text by SHIBUYA YasuhitoPhotographs by KISHIDA Katunori
日本のアニメがモチーフ
ひと目見て、「まるでSF映画の宇宙船じゃないか」と思ったあなたは大正解! この腕時計は日本のSFアニメからインスパイアを受けてデザインされた超絶トゥールビヨンモデルなのだ。その名も「オロロジカル・マシン No.6 スペースパイレート」。
前後左右、そして中央にある、裏側も合わせれば合計9つの透明なサファイアクリスタル製ドームは、チタン製の削り出しによるエルゴノミックなフォルムのケースで連結されている。そして奥の2つのドームの中にあるタービンが水平に回転しながら、中央のドームの下にあるプラチナ製ローターのエネルギーをしなやかに受け止めて香箱に蓄積。そのエネルギーを使って、中央のドームの中にある、60秒に1回転するフライングトゥールビヨン脱進機が駆動され、正確な時を刻む。そして時刻は手前側の２つのドームの中にある時、分ディスクで表示される。
時計愛好家はもちろん、SF好き、メカ好きの男性にはたまらないこの腕時計をクリエイトしたのは、世界の時計愛好家が注目、絶賛するMB&F（エムビー・アンド・エフ。マクシミリアン・ブッサー＆フレンズの略）。
「このモデルのデザインモチーフのひとつが僕とマクシミリアン・ブッサーがこどもの頃にテレビで観ていた日本のアニメ『キャプテン・フューチャー』シリーズの宇宙船。フランス語圏でも1980年代に放映されて、とても人気があったんだ。そしてアメリカのテレビシリーズの『スタートレック』や映画『スターウォーズ』シリーズに出てくる宇宙船もモチーフになっているよ」
同ブランドのマーケティング＆広報を務めるシャリス・ヤディガログルー氏は、いたずらっぽく笑いながら、だが真剣に原点を語った。
原案はエドモンド・ハミルトンの小説（スペースオペラ）だが東映アニメの手でテレビアニメ化され、1978年11月から79年12月まで約1年間放映された、広川太一郎氏の声で50代以上の人にはお馴染みのあの作品。
MB&Fマーケティング＆広報のシャリス・ヤディガログルー氏。
分表示と時間表示はそれぞれ半球型のアインジゲーターで表示。
中央部分に見えるのは、フライングトゥールビヨン。
MB&F｜エム・ビー・アンドエフ
まるでSF映画の宇宙船
世界で50本だけのオロロジカル・マシン(2)
世界に50本しかないレアピース
このモデルを立案し、デザイナーのエリック・ジルーを筆頭に現代スイス時計界のクリエーターたちの情熱と技術を結集して完成させたMB&Fのマクシミリアン・ブッサーは、ハリー・ウィンストン時代に、新進気鋭の独立時計師たちとのコラボレーションによる「オーパスシリーズ」を立ち上げ、超絶的な複雑メカニズムの複雑腕時計を発表。時計界におけるハリー・ウィンストンの名を頂点にまで押し上げた伝説のプロダクト・ディレクターだ。
ごく一部の業界関係者だけに新作が披露された。
才能豊かな人材と協力して、どこにもない先進的なコンセプトの機械式ウォッチを開発することに何よりも喜びを感じる彼が「アートとマイクロエンジニアリングの融合」を掲げて設立したコンセプトラボがMB&F。
その最新作がこの「オロロジカル・マシン No.6 スペースパイレート」なのである。総パーツ数475個、振動数毎時1万8000振動の自動巻きムーブメントは、新進気鋭のダヴィッド・カンドー・オルロジュリー・クレアティブとの共同開発。
「ケースのフォルムが、1970年代のバイオデザインを彷彿させるだろう。５つのサファイアクリスタル製風防はもちろんレ・アルティザン・ポワティエが製作した、グレード5のチタンで作られたケースにもフラットなところはまったくない。すべて曲面なんだ。そしてトゥールビヨンが中央の球体から浮かび上がって見えるように、フライングトゥールビヨンを採用したんだ。それに巻き上げ機構にかかるGを軽減するショックアブソーバーの役割をする２つのアルミ製タービンの動きも、このモデルのポイント。エネルギー効率を向上させるために、輪列の中に微小な傘歯車を使っている点もこのモデルの画期的なところだ」
そのうえ、スペースシップというコンセプトを忠実に反映して、太陽のからの熱核放射線、つまり紫外線による潤滑油の劣化を、フライングトゥールビヨン脱進機を取り巻く、半球形でチタン製の、リュウズを回すと開閉できる防護シールドで守る仕組みも備えている。
ここまでデコラティブだと、着け心地はどうなのか。本当に着けられるのか、疑問を持たれる方も多いだろう。でも実際に腕に着けてみてびっくり。驚くほど軽くフィット感も抜群なのだ。
「どんな人にもフィットして、毎日着けて楽しめるようにデザインしてあるんだ。僕らと同じようにメカニズムが好きでアートが好きで、起業家精神たっぷりの人たち、つまりジュネーブの旧市街にある僕らのギャラリーを訪れる人たちが、日常的に着けて楽しめる複雑時計として、僕らの製品は作ってあるんだ」とヤディガログルー氏。
製作数は世界でたった50本のみ。ごく近い将来、現実になる宇宙旅行でも、このトゥールビヨンなら宇宙で熱核放射線を受けても潤滑油が劣化する心配はないし、宇宙旅行気分が盛り上がること間違いナシ。「複雑時計＝クラシックデザイン」の常識の対極にあるこの最先端のトゥールビヨンモデル。普通の複雑時計ではもはや満足できない時計好き、メカ好き、SF好き、宇宙好きのあなたに、ぜひ一見をオススメします！
マクシミリアン･ブッサー氏。2005年にMB&Fを設立者。イタリア、ミラノ生まれ。
ケース｜グレード5チタン（レ・アルティザン・ポワティエ製）、シースルーバック
サイズ｜49.5mm×52.3mm×20.4mm
ムーブメント｜プラチナローターによる自動巻き
パワーリザーブ｜72時間
ストラップ｜カーフスキン
重さ｜75g
防水｜30m防水
価格｜未定（チタンバージョン世界限定50本・発売時期未定）アワーグラス銀座店
Tel. 03-5537-7888
http://www.mbandf.com