INTERVIEW|DJ 沖野修也、自伝『職業、DJ、25年』に綴った七転八起の音楽人生
LOUNGE / MUSIC
2015年3月26日

INTERVIEW|DJ 沖野修也、自伝『職業、DJ、25年』に綴った七転八起の音楽人生

INTERVIEW|自伝『職業、DJ、25年』出版記念

DJ 沖野修也が記した四半世紀とその未来

「KYOTO JAZZ MASSIVE(キョウト・ジャズ・マッシブ)」をはじめとするさまざまなプロジェクトで、日本発の世界基準の音楽を生み出してきた沖野修也が自伝を出版した。タイトルは『職業、DJ、25年』。この本のなかには、つねにあたらしい価値観を模索してきた彼の、失敗と成功の物語が記されている。インタビューの冒頭で発せられたのは「自伝を書きたいとは考えてもいなかった」という意外な言葉だった。

Photographs by NISHIMURA TomoharuInterview & Text by IWANAGA Morito(OPENERS)

DJとは、自分の世界を作り上げる仕事

――今回は自伝という内容ですが、執筆のきっかけは?

当初はビジネス寄りの書籍の話をしていたのですが、編集者の方が「ハウツー本にするよりも、沖野さんの人生を描いたほうがおもしろいし、役に立つんじゃないですか?」と。それがきっかけですね。自伝を書きたいとは考えてもいませんでしたが、おもしろいかなと思いまして。それにDJをはじめて25年という節目でもありましたから。

タイトルにも「DJ」と、あえて使いました。逆説的に、DJはただレコードをかけて踊らせる人じゃない、ということを示したかったんです。知らない人は、タイトルのままに手にとって読みはじめるかもしれないけれど、読み進めるうちに、そうではないことに気づいてもらえるはず。僕にとってのDJというのは、いろんなヒトやモノ、コトを集めて自分の世界を作り上げる仕事なんです。

INTERVIEW|DJ 沖野修也、自伝『職業、DJ、25年』に綴った七転八起の音楽人生 01

内容は僕の音楽人生の話です。書き出してみると、本当にいろいろありました。七転八起といいますか、生命を脅かされるようなことも……。そのたびにいろんな人との出会いがあり、シーンが変わる。そこは読み物にして、おもしろい部分だとは思いました。

――これまでの出会いのなかで、この本を最初に読んでほしいと思った方はいますか?

INTERVIEW|DJ 沖野修也、自伝『職業、DJ、25年』に綴った七転八起の音楽人生 02

「MONDOGROSSO(モンドグロッソ)」の大沢伸一くんですね。20代前半での出会いから海外に行くまで、濃密な時間を彼と過ごしたので。

大沢くんと僕は別の人間なので、感じ方はちがうと思うんですよ。でも僕は、彼のことをあらためて振り返ってみると自分なりにいろいろ感じることがあったんですよね。だから最初にゲラを送りました。

 

「悪いことばかり、良いことばかりの人はいない」

――本のなかには、血の気が引くような失敗談も書かれていました。沖野さんにとっての“失敗” とは? 

できれば、失敗はしたくないと思っています。でも失敗すると、まちがったやり方を学習できますよね? 「これはやっちゃダメ」というのをつづけていくと、「これはOK」にたどりつくわけです。

本には書かなかったんですけど、訴えられそうになったこともありました。それは海外のアーティストと曲を作ったときですね。日本ではコマーシャルで音源を使用すると、使用料が免除になるんです。てっきりそれを世界共通のものだと思っていて、楽曲を使用したんです。共作した人にその旨を伝えると、「NO」と。危うく2500万円の使用料を要求されるところだったんです。和解しようと何度も渡航して話をしに行ったんですけど、ダメでしたね。

最終的には、たまたま友人の知り合いにレッド・ツェッペリンの顧問弁護士という方がいて、彼の電話一本で解決しました。なんとか危機を回避できたわけれすが、次からは友人とはいえ事前に確認しなければいけないこともあるんだと学びました。

――以前、沖野さんは人は他人の不幸の話に、本能的に引きつけられてしまうというお話をされていました。今回の自伝では、あえてそれをさらけだしているようです。

誰だってそんなに物事はうまくいかない。でも、メディアで露出しているような人は、それを見せない。日々悪戦苦闘している人が、それを見たとき、共感できるからおもしろいんだと思います。

実際に、現場で自分が狼狽(ろうばい)しているようすなんて、本当にイケてないから、誰もさらしたくないでしょう。でも僕はこの本で、あえてそれを文章化して、ドラマ仕立てにしています。

INTERVIEW|DJ 沖野修也、自伝『職業、DJ、25年』に綴った七転八起の音楽人生 03

頑張っているところとダメなところ。幸いにして僕は、それが交互にやってきた。でも、みんなそうじゃないかな? 悪いことばかり、良いことばかりの人はいないはず。

――執筆を終えたあとで、心境の変化はありましたか?

もっとネタがいるな、と思いました。それは自伝のネタというわけではなく、DJとして語れるところです。僕にしかできないことを、行動や発言で表現していかないと。この25年を振り返って、悪くなかったとは思ったものの、これから先がそれ以上におもしろくなかったら、意味がないと思うんです。だから、先日の安倍総理への手紙(※)もそうです。校了したあとだから、本には入っていませんが、そういうことを、もっとやっていかなくちゃいけない。

※2014年9月、沖野氏が安倍晋三首相に宛てたクラブ規制の緩和を求める要望書を発表し、国会へ提出。ジャイルス・ピーターソン、ジェフ・ミルズ、アレックス・フロム・トーキョー、パトリック・フォージといった海外DJが署名に名を連ねた

DJというクリエイティブな世界に、華やかなイメージをもっている人もいるかもしれません。でも、25年この仕事を生業(なりわい)にしてきた僕は、ひどい目にもいっぱいあっているので、この本を読んで「こんな感じなんだ」と笑ってもらえるといいかな。もちろんそれ以上に素晴らしい経験も綴っています。僕のこれまでを通して、“人生” の醍醐味を伝えられればなと思っています。

『職業、DJ、25年』
著者|沖野修也
価格|2160円
発行元|DU BOOKS
発売中
http://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK095

kjs_150

『MISSION』
KYOTO JAZZ SEXTET
発売日|4月15日(水)
価格|2916円(UCCJ-2121)
全8曲
参加ミュージシャン|類家心平(tp)、栗原 健(ts)、平戸祐介(p)、小泉P克人(b)、天倉正敬(ds)、ゲスト: 菊地成孔(ts)

『KYOTOGRAPHIE presents
「KYOTO JAZZ SEXTET tributes to BLUE NOTE RECORDS」
沖野修也×菊地成孔スペシャル ジャズディナー at Hyatt』

日程|4月26日(日)
時間|18:00開場 18:30開演
会場|ハイアット リージェンシー 京都 ザ・ボールルーム
Tel. 075-541-3161
料金|1万2000円(ディナー、ファーストドリンク付き)
出演|KYOTO JAZZ SEXTET with 菊地成孔/沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)/沖野好洋(KYOTO JAZZ MASSIVE)
http://kyoto.regency.hyatt.jp/ja/hotel/news-and-events/events/kyoto-jazz-sextet.html

Kyoto Jazz Sextet 『Mission』 Special Live 2015 Guest 菊地成孔
日程|5月25日(月)
会場|ビルボードライブ東京
時間|1st: 17:30開場 19:00開演/2nd: 20:45開場 21:30開演
料金|サービスエリア: 6800円/カジュアルエリア: 4800円(1ドリンク付き)
出演|類家心平(tp)、栗原 健(ts)、平戸祐介(p)、小泉 P 克人(b)、藤井伸昭(ds)、沖野修也(se/mc)、ゲスト: 菊地成孔(ts)
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=9434&shop=1

           
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