コンビ結成35年目に知る相手への思い

極楽コンビ“ローレル＆ハーディ”が誕生したのは、1926年のことだ。それまで別々に活動していたスタン・ローレルとオリバー・ハーディは、ハリウッドの名プロデューサー、ハル・ローチの提案によりコンビとなった。以来、2人はスター街道をまっしぐら。映画がトーキーに移行しても、それまで得意としていたパントマイム的ギャグコメディに、歌や言葉遊びを取り入れて、スターの地位を保持し続けたのだ。

そんな黄金時代から十数年後の1953年。第一線での活動もなくなり、2人は過去の存在となっていた。再び人々に笑いを届けたいと英国ツアーを行うが、待っていたのは安宿に場末のホール、ガラガラの客席。自分たちの現状に直面することとなる。さらに、体調不良や相方への隠し事など、互いに不安要素を抱えるスタンとオリバー。さらに、過去に起きたトラブルからのわだかまりも解決せず、結成35年目にしてコンビ解消の危機が訪れるのだった。

彼らの間にあるわだかまりのひとつは、かつて契約の問題で共演できないことがあった際、オリバーが別のパートナーと組んで映画出演してしまったことだ。スタンはそのことをずっと許せずにいて、あることをきっかけに「裏切りだ。友情を踏みにじった」と責める。一方のオリバーは、自分たちはあくまで仕事仲間で「君は友人じゃない」と冷たく言い放つのだ。

確かに2人はローチが組ませたコンビで、友人だったわけではない。化学反応はばっちりでも、あくまでも仕事仲間なのだ。コンビやグループにトラブルがつきものなのは、ご存知の通り。ファンが「メンバーは仲良しに違いない」という理想を抱くのは自由だが、実のところ彼らは友達ではないことが多いのだろう。仲間意識と友情とは異質のもので、それはローレル＆ハーディにとっても同じこと。仕事とプライベートの線引きがはっきりした欧米では、より違いが明確だったのかもしれない。だが、「コイツでなければ」という強い思いに気づいたとき、関係性は変わっていく。互いへの思いは、全盛期よりも辛い時期にこそ気づきやすいものなのだ。

ここに描かれているのは、友情と信頼の積み重ねが、長い年月を経て愛情へと昇華していく様子だ。コンビ名はローレル＆ハーディだが、原題は二人のファーストネームを取って“スタン＆オリー”。つまりこれは、私たちが知らなかった素顔の二人の物語なのだ。彼らは私たちが理想とする、とてつもない愛情で結ばれた奇跡のコンビ。果たして、彼らが迎えるラストステージとは？　舞台裏を知った後で知る最後のショーは、実に感動的。映画黄金期を築き上げた名スターたちの美しき友愛をぜひ堪能してほしい。

★★★★☆　
“伝説“への敬意を示しつつ、その上で人間臭いスターたちの素顔とプロ意識を描ききった映画愛溢れる一作。

『僕たちのラストステージ』
出演:スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー、ニナ・アリアンダ、シャーリー・ヘンダーソン、ルーファス・ジョーンズ、ダニー・ヒューストンほか
製作:フェイ・ウォード
監督:ジョン・S・ベアード
脚本:ジェフ・ポープ
2018 年/イギリス・カナダ・アメリカ/英語/カラー/スコープ/DCP5.1ch/98 分
配給:HIGH BROW CINEMA
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018
4月19日(金) 新宿ピカデリーほか全国順次公開
laststage-movie.com

< 試写会情報 >

公開直前の一般試写会に、OPENERS読者5組10名様をご招待！

---

映画『僕たちのラストステージ』試写会プレゼント
日時：4/9（火）18：00開場/18：30開映
（上映時間98分）
会場：一ツ橋ホール
東京都千代田区一ツ橋2-6-2

---

必要事項を明記の上、openers_info@sma-media.comまでご送付ください。
必要事項｜①氏名（読み）／②年齢／③性別／④職業／⑤住所／⑥電話番号
抽選・当選通知｜当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます
締め切り日｜2019年4月2日（火）24:00まで
※応募多数の場合は抽選とさせていただきます