MOVIE|三ツ星に輝いた87歳の鮨職人、小野二郎の技と生き方に迫る『二郎は鮨の夢を見る』
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2015年6月22日

MOVIE|三ツ星に輝いた87歳の鮨職人、小野二郎の技と生き方に迫る『二郎は鮨の夢を見る』

MOVIE|三ツ星に輝いた87歳の鮨職人、小野二郎の技と生き方に迫る

全米で大ヒットとなったドキュメンタリー『二郎は鮨の夢を見る』

銀座の地下にあり、わずか10席ながらミシュランガイドの三ツ星に5年連続で輝く鮨の名店「すきやばし次郎」。初代店主であり、その技と心で世界中の食通を唸らせ、87歳のいまも現役で板場に立ちつづける職人小野二郎の生き方に迫る『二郎は鮨の夢を見る』が、2月2日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペースから全国順次ロードショーされる。

Text by YANAKA Tomomi

若きデヴィッド・ゲルブ監督が3カ月にわたり、密着取材を敢行

昨年3月、ニューヨークにあるわずか2館のスクリーンで公開された『二郎は鮨の夢を見る』。しかし、瞬く間に口コミで評価を広げ、異例の大ヒット作へと成長。今年のアカデミー賞にもっとも近いとうわさされるドキュメンタリーが舞台となった日本へとついに凱旋を果たす。

撮影当時まだ26歳だったデヴィッド・ゲルブ監督は、メトロポリタンオペラの総帥、ピーター・ゲルブ氏の息子でもある。子どもの頃から鮨に親しみ、日本に家族で旅行に訪れたこともある若きアメリカ人監督。料理評論家の山本益博とともに訪れた「すきばやし次郎」で、当時すでに85歳と高齢でありながら現役で己の技を磨きつづける小野二郎の職人としての生き様に魅了され、その人生と哲学を題材に映画製作をすることを決意。およそ3カ月にわたり、東京と小野の故郷である静岡と密着取材を敢行した。

ゲルブ監督のファインダーが映し出すのは、日本人のわたしたちが忘れかけた、小野の仕事に対する誠実な姿勢。親子であり師弟でもあるふたりの息子をつうじて描かれる、偉大なる父への敬意、そして葛藤だ。世界が認める名店を支える者たちのプライドと仕事にかける情熱を、温かくもモダンな映像、そしてクラシック音楽の旋律とともに美しく浮かび上がらせてゆく。

偉大なる父を越えようと切磋琢磨する二人の息子

東京でもっとも有名な鮨職人である小野二郎。彼は夜明けから夜ふけまで働きつづけ、あらゆる魚や素材の味を確かめ、弟子たちを細やかに指導し、ひとつひとつの鮨を完璧につくりあげる。

 

なかでも53歳になる長男禎一は「すきやばし次郎」本店の継承者だが、齢87歳の二郎はいまだに板場に立ち、現役で働きつづけている。「まだ引退するなんて考えたことはない」と映画のなかで話す二郎。禎一は年老いた師匠に敬意を払い、日々知識と技術を可能な限り吸収し、やがて世代交代するときのために準備をしている。そんな息子を二郎は誇りに想っているが、それゆえに忠実な息子がいつまでも自分の世界にとどまりつづけていることに対して葛藤を抱えているのだ。

 

世界に名だたる鮨店を経営し、職人として果てない道を極めつづける小野二郎。彼が鮨を握る芸術的な映像はもちろん、偉大な父親を超えようと切磋琢磨するふたりの息子たちを追った、珠玉のヒューマンドキュメンタリーとしても楽しめる1本だ。

『二郎は鮨の夢を見る』

2月2日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペースにて全国順次ロードショー

監督・製作・撮影|デヴィッド・ゲルブ

出演|小野二郎、小野禎一、小野隆士、山本益博

2011年/アメリカ/82分

© 2011 Sushi Movie,LLC

           
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