東京国際映画祭コンペティション作品『雪女』3月4日より公開|MOVIE
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2017年2月6日

東京国際映画祭コンペティション作品『雪女』3月4日より公開|MOVIE

MOVIE|怪奇文学「雪女」を映画化

繊細ではかなく美しい愛の物語

杉野希妃が監督・主演を務める『雪女』。第29回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、雪と光の映像美、クラシカルな美学、伝統を現代へ活かそうとする試みが高い評価を得た。豪華俳優・スタッフが贈る、自然と人間の関係性を静謐(せいひつ)に描き出した話題作だ。

Text by WASEDA Kosaku(OPENERS)

自然と人間の関係を端正に描く

100年以上前に小泉八雲が著した「怪談」は、日本各地の伝説を怪奇文学に昇華させた作品。その中の一編「雪女」を、杉野希妃氏が独自の解釈で映画化した。

ある時代、ある山の奥深く、吹雪の夜。猟師の巳之吉は、山小屋で、雪女が仲間の茂作の命を奪う姿を目撃してしまう。雪女は「この事を口外したら、お前の命を奪う」と言い残して消え去る。

翌年、茂作の一周忌法要の帰り道に、巳之吉は美しい女ユキと出会う。やがてふたりは結婚し、娘ウメが生まれる。14 年後、美しく聡明な少女に成長したウメは、茂作の遠戚にあたる病弱な幹生の良き話し相手だった。

しかしある日、茂作の死んだ山小屋で幹生が亡くなってしまう。幹生の遺体には、茂作と同じような凍傷の跡があった。ユキの血を引く娘のせいだと、巳之吉を激しく問いつめる幹生の祖父。巳之吉の脳裏に14 年前の出来事が蘇り、自分の中にあったユキに対する疑心と葛藤する。自分があの夜の山小屋で見たものは何だったのか、そしてユキは誰なのか…。

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本作は『マンガ肉と僕』、『欲動』に続く、監督第3作としてかねてから映画化を切望していた杉野氏が、監督と主演のふた役に挑む。主人公の巳之吉役に、活躍目覚ましい青木崇高、娘のウメに注目の若手山口まゆ。佐野史郎、宮崎美子、山本剛史、松岡広大など演技派、若手が脇を固め、大ベテランの水野久美がひきしめる。

杉野氏の故郷である広島県の全面協力のもと、映画の街で知られる尾道市を中心に、全編を広島県内で撮影し、台詞は広島弁を用いている。

第29回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、雪と光の映像美、クラシカルな美学、伝統を現代へ活かそうとする試みが高い評価を得た。

撮影に際し杉野氏は「小泉八雲の『雪女』の面妖さが、ここ数年私の心を離しませんでした。雪女はなぜ雪景色の向こうに現れ、人間と交わろうとするのか。それは何を象徴しているのか。わずか数ページの短編に心理描写などなく、様々な解釈が可能です。不思議なことに、畏怖の対象である雪女に私は温かなまなざしも感じました。その姿は、自然の化身が人間の魂に寄り添おうとしているかのようにも思えました。実態のなさにひそむ揺るぎないもの。目に見えないものと共生しているという神秘。この得体の知れない存在を通して、それらについて現代社会に問いかけたかったのです」とコメントしている。

雪女
監督|杉野希妃
音楽|sow jow
出演|杉野希妃、青木崇高、山口まゆ、佐野史郎、水野久美、宮崎美子、山本剛史、松岡広大、梅野渚 ほか
配給|和エンタテインメント
公開日|2017年3月4日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマ・ジャック&ベティ 4月1日(土)よりシネ・リーブル梅田、大阪シネ・ヌーヴォ、京都みなみ会館、神戸元町映画館 ほか全国順次公開

2016年/日本/日本語(英語字幕付)/96 分/カラー&モノクロ/シネマスコープ/Stereo
©©Snow Woman Film Partners

問い合わせ先

雪女

http://snowwomanfilm.com/

           
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