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2026年4月17日
終わりを始まりに変える会社が描く、資源循環業の未来
LOUNGE|丸幸 代表取締役 渡邉均/専務取締役 渡邉俊介
今日、なにを捨てましたか? ペットボトル、菓子袋、紙くず。あるいはコンビニで押し込んだレシート。捨てた瞬間に頭の中から消えたそれらが、実はどこへ向かうのかを、ほとんどの人は考えたことがない。燃やされるか、埋められるか、どこかに積まれていくか。ざっくり言えば、そのどれかだろう。そのざっくりを「もったいない」と思ってきた親子がいる。
Text by TSUZUMI Aoyama | Photograph by KEN Takayanagi | Interview by OPENERS
千葉県に本社を置く丸幸。廃棄物を固形燃料に変える会社だ。率いるのは社長の渡邉均さんと、専務の渡邉俊介さん親子だ。均さんが18歳でこの仕事に入ったのは、もう42年前のことだ。当時の言葉で言えば「3K」、あるいは「4K」。きつい、汚い、臭い、苦しい。それが産廃業界の正直な姿で、均さんは家族を養うためにその中を這いつくばって生き抜いてきた。
ゴミを集め、分け、処理する。社会には必要だが、誰も「かっこいい」とは言わない仕事。そしてその仕事が、今の地球環境に欠かせない産業へと変わりつつある時代が来た。
「環境を前提に考えた経済活動をしていかなければ、世の中は変わらない」。環境省の元副大臣と交わした言葉が、均さんの中で“何か”を確信に変えた。
代替燃料をいかにクリーンエネルギーで製造するか
丸幸が軸に据えるのが、当該記事のトップの写真、RPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)だ。プラスチックフィルムを主原料に、紙くずや木くず、繊維くずを配合して成形する廃棄物由来の固形燃料で、工場やボイラーで石炭・重油の代替として使われる。化石燃料に比べてCO2排出量をおよそ3割削減できるとされ、年間製造量は2万4000トン。東京・関東近県から集まった「燃えるゴミ」たちが、ここで形を変える。
ただし、RPFはもう20数年前からある技術だ。目新しい魔法があるわけではない。では丸幸の独自性はどこにあるのかといえば、製造に使う電力の話になる。
工場に隣接するメガソーラーで発電した再生可能エネルギーをRPFの製造に充てる。その商品を「G-RPF」、つまりグリーンRPFと名付け、商標申請中だ。
製造工程での再エネ率は90%超。工場全体でも50%弱に達し、今年中に2工場間で電力を融通し年間100%自家消費を目指す体制を整える。
「RPFって電気をめちゃくちゃ使うんですよ、正直」と俊介さんは笑う。どれだけCO2を削減しても、作る電力源が化石燃料なら帳尻が合わなくなる。だからこそ電力源を変える。
理屈は単純だ。だがそれを実際に稼働させている会社は、いま全国でほぼ存在しない。
誇りをもった素晴らしい仕事であることを伝えたい
ここで少し、ビジネスの話から離れたい。
俊介さんが幼いころ、父・均さんはいつも作業着で帰ってきた。他の家の父親たちはスーツを着ていた。その差が、どこか恥ずかしかった。この業界で育った二世・三世なら、同じ感覚を持っている人は多いはずだ、と俊介さんは言う。サッカー一筋の青年期を経て、プロの夢が断たれ、スーツを着てサラリーマンになった。そのあいだ、父の仕事への興味はほぼゼロだった。
転機が来たのは、ある日、父の会社を訪ねたときだ。
そこに「自分自身が作り上げた身勝手な3K」はなかった。代わりにあったのは、若い人たちが笑顔で、生き生きと動き回る現場だった。俊介さんの頭の中にあったイメージが、一瞬にして崩れた。
「なんか勘違いしてたな、と思った」と俊介さんは言う。30歳前後になって、父親への見方が変わり始め、その先に「ごめんね」という言葉が生まれた。
自分が父の仕事を恥ずかしいと感じたように、今この会社で働く従業員の子どもたちも、同じ劣等感を抱えているかもしれない。それは社員にとって不幸なことだ。その不幸の根っこにあるのは、社会が「ゴミ屋さん」というイメージを手放せていないことではないか。
「業界を盛り上げて、こんな素晴らしい業界なんだよと伝えていくきっかけを作らなければいけない」。そう思い始めたのが、30代に入ったころだという。
「廃棄物処理業」から「資源循環業」へ
「廃棄物処理業」を「資源循環業」と呼ぼう。俊介さんが提唱するその言語転換は、仕事の定義そのものを変えることだ。廃棄物をただ処理する時代は終わった。集め、選別し、エネルギーとして循環させる。その全体を製造業として担う産業へと、自分たちを位置付け直す。
さらに社長である均さんは「動脈産業と静脈産業」という言葉を使う。製造・消費・廃棄という動脈の流れに対して、廃棄物を回収し循環させる静脈がある。人間の血液と同じ構造で、どちらが欠けても社会の体は動かない。かつて「影」とされてきたその静脈産業だったが、限られた地球の資源を有効活用するサスティナブルな社会を目指す中で、ようやく光が当たってきた。
工場の外壁は、あえてフェンスにした。外から廃棄物が燃料に変わる課程、従業員が働く姿を眺めることができる。廃棄物処理施設が塀に囲まれていることが当たり前だった時代から、均さんは近所の人が公園のようにお茶でも飲みに来られるような場所にしたい、と思い続けてきた。
「世の中にゴミなんてないんだね」
今、丸幸が大手コンビニエンスストアグループとひそかに動かしているプロジェクトがある。コンビニ店舗のゴミ箱に捨てられたごみを丸幸が一手に回収し、RPFに変えるという試みだ。一般廃棄物を燃料化できる許可を持つ事業者は日本でごく少数。コンビニごみのRPF化は国内初の試みになる。うまくいけばニュースリリースをする予定だ、と俊介さんは言う。
千葉県内の小学校17校、約1700人の子どもたちへの環境学習も続けている。机の上に並べたものを分別していくと、最後にゴミが一つもなくなる。全部が何かの資源だったと気づいた子どもたちは「世の中にゴミなんてないんだね」という言葉を口にする。
その感覚が家庭に持ち帰られ、地域へ波及していく。ゴミとは、まだ使い道が決まっていないものの名前に過ぎないのかもしれない。
そして鯖江で製造中の、ペットボトルキャップ100%素材のサングラスがある。フレームはキャップの再利用、レンズは生分解性。土に埋めれば消える。子どもや学生向けに、強烈な紫外線から目を守る文化を広げようという構想だ。サングラスをかけた子どもが「かっこつけてる」と見られる日本の空気を、少しずつ変えていく。
採用の現場でも、変化が起きている
パーパスに共感した学生が、真剣に会社説明会に耳を傾ける。だが壁は学生の外にあった。大学まで出した我が子には、できれば有名企業に行ってもらいたい。親世代の反対で入社辞退してきた学生が出たとき、均さんがとった行動は、その親を工場に招いて説明会を開くことだった。「娘さんを、私の会社にください」という覚悟で。
富山出身の新入社員が、自然環境に貢献したいからという理由で上京してくる時代が来た。
「廃棄物処理業もゴミ屋さんも、大きな業界の中に共存していていい。ゴミ屋さんはゴミ屋さんでやっていけばいい。でも僕らはもっと先端を尖らせて、資源循環業というところの一部になっていく必要があるんだと思っています」(俊介さん)
渡邉均
丸幸・代表取締役。高校卒業後、父親が経営していた廃品回収やチリ紙交換を主軸とした個人商店・丸幸紙業(のちに丸幸へ称号変更と共に法人化)の手伝いを始める。20歳の頃よりさまざまな新規事業に参入。廃棄物処理業から資源循環業へと転換を図り今日に至る。現在は脱炭素経営をテーマに地球温暖化対策に力を入れて取り組んでいる。
渡邉俊介(右)
丸幸・専務取締役。幼少期からサッカーに明け暮れ、高校時代は市立船橋高校でFWとして全国高校サッカー選手権に出場。怪我によりプロの道を断念後はオフィスコンサルティング事業に従事。25歳で丸幸へ入社。以降、産業廃棄物処理業の営業から工場管理、また企画運営に携わり、業界底上げのためにさまざまな発信や企画を行っている。
地球にやさしい会社になる 「RPF活用型」脱炭素経営
渡邉均 (著), 渡邉俊介 (著)/彩図社/¥1980(税込)
産業革命以降、石炭や石油などを燃やすことで、人間は生活に必要なエネルギーを生みだしてきました。世界でこれだけ企業経済が発展したのも、こうしたエネルギーのおかげであるのは言うまでもありません。そこで排出されるCO₂をはじめとした温室効果ガスの量は、ここ200年ほどの間に急激に増加し、特に2005年以降、さらに恐ろしいスピードで垂直に伸び続けています。
この本は、企業が未来に向けて「脱炭素経営」を行うことで、地球環境を守りながら、収益性の増加を実現するための具体的なアクションを提案する一冊です。また、環境対策と同時に、コスト削減・企業ブランドの向上・競争力の強化・リスク管理・長期安定性の確保・新たなビジネスチャンス創出など、企業が得られるメリットを数多く提示しています。
本書の内容を実践することで、地球にやさしく、かつ収益性の高い経営を実現し、社員や社会からも愛される企業への第一歩を踏み出すことができます。 つまり、本書を読んでくださったあなたの行動が、地球と会社の未来を、同時に輝かせる「次世代のエネルギー」になるのです。
(はじめに より)
この本は、企業が未来に向けて「脱炭素経営」を行うことで、地球環境を守りながら、収益性の増加を実現するための具体的なアクションを提案する一冊です。また、環境対策と同時に、コスト削減・企業ブランドの向上・競争力の強化・リスク管理・長期安定性の確保・新たなビジネスチャンス創出など、企業が得られるメリットを数多く提示しています。
本書の内容を実践することで、地球にやさしく、かつ収益性の高い経営を実現し、社員や社会からも愛される企業への第一歩を踏み出すことができます。 つまり、本書を読んでくださったあなたの行動が、地球と会社の未来を、同時に輝かせる「次世代のエネルギー」になるのです。
(はじめに より)








