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2026年4月21日
世界が気づく前に知っておきたい、宮崎発・至高のカラスミ『天乃頂』
AMANO ITADAKI|天乃頂
日本三大珍味のひとつ、カラスミ。ウニやイクラとともに食卓の「特別な一品」として長く親しまれてきたが、近年、世界の食材市場における位置づけが静かに変わりつつある。ウニやキャビアの価格が高騰を続けるなか、カラスミはほぼ唯一、値上がりが限定的に留まっている。その理由は単純だ——まだ世界にカラスミという存在が知られていないからである。そうしたなか、宮崎のカラスミ職人・小濱ゆうき氏が、10年以上をかけて磨き上げた技術の集大成『天乃頂(あまのいただき)』が2026年5月1日に全国発売される。
Text & Edit by TSUCHIDA Takashi
日向灘という、隠れた奇跡の産地
宮崎県日向灘は、黒潮が直接当たる豊饒の海だ。日本有数のボラの産地でありながら、水揚げされたボラのほとんどは県外・国外へ出荷されてきたため、「宮崎のボラ」はほぼ無名のまま流通の川を下ってきた。その状況を変えたのが2013年、小濱ゆうき氏のボラとの運命的な出会いだった。
外洋の清浄な水域で育ち、冬に沖合へ回遊する「寒ボラ」はクセがなく、弾力のある白身魚。その真子(まこ)が、日本最高峰のカラスミになり得るという事実もまた、長く見過ごされてきた。小濱氏はまったくの未経験からカラスミ作りを始め、やがてボラの魅力に取り憑かれるように独自の技術体系を確立。2016年には自身のカラスミ製造に最適化された工場を宮崎市に建設した。その情熱は漁業関係者たちをも巻き込み、宮崎にカラスミムーブメントを起こす。
しかし長い間、小濱氏のカラスミは生産も流通も限定的で、ごく限られた人しか知らない“幻のカラスミ”であり続けた。今回初めて全国の食卓に届く『天乃頂』は、その小濱氏が「これ以上のカラスミは存在しない」と言い切る最高品質の一品である。
「引き算のカラスミ」——塩だけが届ける純粋な甘み
小濱ゆうき氏に「『天乃頂』の美味しさの違いをひとつ挙げるとすれば」と問うと、少し考えてから彼女はこう語った。「甘みを感じないですか? 本来は甘みはないはずなんです。甘くすることなんてしていないんですけど。でもそれを感じていただけるような、シンプルな製法——それが、お塩だけで仕上げるということです」。
多くのカラスミは清酒や焼酎、その他調味料で漬け込まれ、作り手の個性が複雑な香りとして表れる。それはそれで職人的な美学だが、小濱氏はその道を選ばなかった。「カラスミを食べたことがない人が増えてきている中で、その複雑な味のカラスミを食べた時に、ほんとに美味しいって思うのかな? と思ったんです」。試行錯誤の末にたどり着いたのが、引き算の美学だった。「引き算のカラスミ——それをこだわって大事にしています」。
使用するのは宮崎産の天日塩と平釜塩を複数ブレンドした日向灘の海塩のみ。真子の個体差を見極めながら塩の当て方・乾燥・熟成をコントロールし、最終仕上げには職人が一本ずつカラスミのために切り出し、乾燥・エイジングさせた無垢の杉板を使う。小濱氏がかつて「天変地異等災害があったらこの板だけは何があっても抱えて逃げる」と言い切ったほどの、製法の根幹をなす道具だ。
こうして生まれる『天乃頂』には、他のカラスミに漂いがちな独特の臭みがない。素材が本来持つ旨みと、塩だけが引き出す甘みが、食べる者を驚かせる。
キャビアのその次へ——無限の可能性と料理人たちへの期待
2026年3月末に行われた発表会の試食では、カリフラワーとカラスミのカナッペに甘やかな紅茶が合わせられた。その甘やかさは、まるでブルゴーニュのシャルドネが発する樽香を思わせるが、カラスミがまったく磯臭くなく、軽やかにマッチングする。
続けてカラスミ大学芋というスイーツが登場した。芋のカラメル感とカラスミの旨みが溶け合うその一皿は、会場をざわめかせた。「実はカラスミはフローラルなものとかキャラメル香が強いものとかにすごく合う特性があります」と語られたように、『天乃頂』の可能性は従来の「パスタに削る」「日本酒のあてにする」という枠組みをはるかに超えている。
この臭みのなさこそが、世界市場への扉を開く鍵でもある。
発表会でプロデューサーが示した資料によれば、ウニやキャビアは2013年比で2〜5倍の価格上昇を記録しているが、カラスミはほぼ横ばいのまま。漁業コストの上昇分が反映されている程度にすぎない。一方、カラスミには他の高級食材にない強みがある。常温で365日の賞味期限を持つため、保存性が低いウニやイクラと比べ、世界への安定供給が格段に容易なのだ。「海外の方々がカラスミという日本の伝統食材に気づかれた瞬間に、価格も異常なぐらい上がっていく」という読みは、あながち誇張ではない。
「Japanese Style of Caviar(ジャパニーズスタイル・オブ・キャビア)」——そのキャッチフレーズを掲げ、ニューヨーク進出も視野に入れながら、『天乃頂』は国際展開への足がかりを着々と築きつつある。
国内では、2026年5月1日より公式HP(amanoitadaki.jp)および大丸松坂屋百貨店の2026年お中元企画「ザ・プレミアムセレクト」にて販売が開始される。決して気軽に手を出せるアイテムではないが、さらに価格が上がってしまう前の今がまさにチャンスである。
日本の食文化の中でも屈指の可能性を秘めたこの食材を、世界の料理人たちがどう解釈し、どんな皿の上に昇華させるか——その問いに答えが出始める日は、もうすぐそこまで来ている。
小サイズ(150g以上)2万円(税別・送料別)
中サイズ(200g以上)3万円(税別・送料別)
大サイズ(300g以上)4万8000円(税別・送料別)
※画像は盛り付け例。
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