世界の道ばたから

ベルリンを拠点とする写真家、アンネ・シュヴァルベ。彼女の代名詞となりつつあるのが、野生の草花、鉱石、水面など、“名もなきもの”を捉えた作品。2011年には、自宅周辺で何年にもわたって撮りつづけた草花の写真を集めて『Wiese』を発表。その続編に当たるのが『Wiese XXI - XLVIII』だ。今回はカリブ海に浮かぶ小さな島から、ドイツの田舎町、昨年個展で訪れた東京まで、世界の道ばたで捉えた草花が収録されている。写っているのは、なんてことない日常の景色なのに、心が揺さぶられるのはなぜだろう。ファインダーからそっと彼らを見つめるシュヴァルベの眼差しが、優しさに満ちているからであろうか。

『Wiese XXI - XLVIII』
作者｜アンネ・シュヴァルベ（Anne Schwalbe）
出版社｜自費出版
サイズ｜240 x 315 mm / ソフトカバー
ページ数｜64ページ
価格｜5400円（税抜）
販売先｜twelvebooks 全国取扱店舗（IMA CONCEPT STORE、代官山蔦屋書店、SHELFほか）
2014年刊
※1000部限定発行

EXPERIENCE 『Wiese XXI - XLVIII』

　二人の視点が重なるとき

ピーター・フィッシュリとダヴィッド・ヴァイスのアーティストユニット。ともにスイス・チューリッヒ生まれの二人は、1970年代後半から、映像や写真、インスタレーションなど、さまざまなメディアを自在に駆使しながら、ありふれた日常をユーモアにあふれた視点で切り取ってきた。パリとニューヨーク、2カ所でおこなわれる個展『Peter Fischli & David Weiss』のために、彼らが1年費やして取り組んだあるプロジェクト。それは多重露光を使って、二人の写真を重ね合わせるというものだった。与えられたルールはただひとつ。草花を撮ること。二人の繰り広げるキャッチボールが、心地よいハーモニーとなって、見る者の眠っていた感性を呼び起こす。

『Peter Fischli & David Weiss』
作者｜ピーター・フィッシュリ＆ダヴィッド・ヴァイス（Peter Fischli & David Weiss）
出版社｜Walther König
サイズ｜275 x 215 mm / ソフトカバー
ページ数｜80ページ
1999年刊
※私物

EXPERIENCE 『Peter Fischli & David Weiss』

　花を使って“アート”する

ドイツ生まれのアーティスト、コリエ・ショア。ファッション写真家としても活躍する彼女の作品は、どこかスタイリッシュな雰囲気をたたえている。生まれ故郷である、シュヴェービッシュ・グミュント（ドイツ南部の町）を舞台にした作品集『Blumen』もしかり。ただし今回のモデルは人ではなく花。さまざまなポージングを花に施しては、椅子やプラスター、標識、プラムの木、標識など、シュヴェービッシュ・グミュントで見つけた“名もなきもの”と組み合わせてシャッターを切る。フラワーアレンジメントの域を超えた、花のアートがここにはある。

『Blumen』
作者｜コリエ・ショア（Collier Schorr）
出版社｜SteidlMACK
サイズ｜250 x 314 mm / ハードカバー
ページ数｜104ページ
価格｜オープンプライス
販売先｜IMA CONCEPT STORE、代官山蔦屋書店ほか
2010年刊

EXPERIENCE 『Blumen』

濱中敦史｜HAMANAKA Atsushi
twelvebooks代表。2010年3月、現代写真を中心に、独自のスタイルをもつ出版社やアーティストの活動をプロモーションするプラットフォームとして、「twelvebooks」を設立。洋書や洋雑誌の国内流通を手がけるほか、写真展の企画や選書、ディレクションまで、書籍やイメージに関わる活動を展開する。www.twelve-books.com

Photo by Daisuke Hamada