デザイナー落合宏理が語る、初の海外コレクション|FACETASM
FASHION / MEN
2015年8月4日

デザイナー落合宏理が語る、初の海外コレクション|FACETASM

FACETASM|ファセッタズム

ジョルジオ・アルマーニ選出の“若手デザイナー支援ブランド”としてミラノで披露

デザイナー落合宏理が語る、ブランド初の海外コレクション(1)

ジョルジオ・アルマーニ氏が推し進めている“若手デザイナー支援ブランド”に「FACETASM(ファセッタズム)」がアジアのブランドでは初めて選出され、6月22日にミラノ「アルマーニ/テアトロ」で2016年春夏コレクションのショーを開催した。「僕たちみたいなインデペンデントなブランドがショーをできるところではないので、演出を含めて服のおもしろさをどう表現するかがいちばん大変でした」とデザイナーの落合宏理氏は感想を語った。

Photographs by SUZUKI Shimpei (INTERVIEW)Text by KAJII Makoto (OPENERS)

世界に向けて視野を広げようと思ったタイミング

インタビュー取材は、ミラノでのショーを終え、パリでの展示会/受注会を終えて帰国した翌日のこと。「ミラノ メンズ コレクションの公式スケジュールに単独で掲載されて、世界に向けて披露できたのはとてもよかった。でもミラノに入ってモデルがなかなか決まらなかったり、さまざまな問題が山積していろんなことが巻き起こって、これが世界なんだなと思いました」と落合氏。

これまでアルマーニの“若手デザイナー支援ブランド”でアルマーニ/テアトロでショーをおこなったデザイナーは延べ9人。ファセッタズムはアジアでは初の選出で、ほかはすべてイタリアで活躍している若手デザイナーたちだ。ファセッタズムはブランド創設8年目にして初の海外ショーとなった。

若手デザイナー支援ブランドに選ばれた経緯を尋ねると、「最終的にアルマーニさんご本人に直接選んでいただいたとうかがっています。2015-16年秋冬の東京コレクションでは最終日にショーをやらせていただいて、パリで展示会/受注会を開いて全世界のドーバー ストリート マーケットに入ったり、世界に向けて視野を広げようと思ったタイミングだったので、とてもうれしかったですね」

東京では味わえない体験をしたショー終了後

本来、2016年春夏コレクションは10月の東京コレクションで発表する予定だったが、ミラノでのショーが6月なので、ほとんど準備期間がなかったという。「準備期間は実質1カ月ちょっとで、タイトな時間でしたが33ルックを発表しました」

「アルマーニ/テアトロは安藤忠雄さんの建築で、会場に入ったら、僕らの規模がショーをできる会場じゃない。メイクルームなども完ぺきな広さがあり、想像以上でした。なんだか、歌舞伎座で外人が歌舞伎をするような感じだな(笑)と思いながらも、名誉なことであることは実感しました」という。

ショーが終了して、バックステージに『VOGUE ITALIA』の編集長が「ライブが良いね!」と激励にきたり、ユナイテッドアローズ顧問の栗野宏文さんも登場して、「お誉めいただいて、東京では味わえない体験をしました」

FACETASM|ミラノコレクション

FACETASM|ミラノコレクション

FACETASM|ミラノコレクション

デザイナーとしてどう海外と向き合うか

「ファセッタズムのショーの場としてミラノという選択肢はなかったので、アルマーニさんの力を借りながら、メンズの王道であるミラノに飛び込めたのはよかった。良い時期にミラノでショーをできたと思います」。

良い時期という意味を聞くと、「自分たちがこのタイミングで、インデペンデントな雰囲気をもったままミラノに行けたのはとてもよかった。ラッキーでした。いまのこの匂いを出せるのはあと何年かだろうし、世界に向けて良いアピールができました」と答える。「ミラノにすんなり入れたので、ここからは地力で、デザイナーとしてどう海外と向き合うかの選択肢が広がりました」

「いまの東京の服はおもしろいので、おごりでもなんでもなく、うちであれ、ほかのブランドであれ、海外でショーをやる機会があればある程度は評価されるという意識はありました」というが、「こうして東京にいるときは、メディアなどから“日本のブランドは世界で注目されているよ”って言われたんですが、ミラノにいってみたらそれはもうとんでもなく大げさな表現だったということを実感しました。東京ブランドってなにがあるの? ってよく聞かれました」と笑う。

アルマーニという言葉は、世界共通言語

ミラノでのショーを経験して「かなりタフになりました。ブランドのスタート時から、世界へは一つずつクリアしていこうと思っていましたが、こうしてアジアから跳べたので、いただいたチャンスは大切にしていきたい。準備期間中の日本でも現地でも思ったのは、“アルマーニ”という言葉は世界共通言語なんですね。いろんな部分でプラスになりました」

FACETASM|ファセッタズム

ジョルジオ・アルマーニ選出の“若手デザイナー支援ブランド”としてミラノで披露

デザイナー落合宏理が語る、ブランド初の海外コレクション(2)

自分が美しいと思ったものを私的にミックス

「FACETASM(ファセッタズム)」がミラノで2016年春夏コレクションのショーをおこなった。コレクションのテーマは「Ambiguous daze in my ambiguous days(曖昧な自己探求)」。そのテーマはなにを意味するのか?

コレクションの解説によると、今回のテーマは、「自己という極私的なイメージを想像させる言葉とそれに相反する曖昧といった言葉との組み合わせから生まれる違和感と矛盾、大きな自然のなかでたったひとつの場面を切り取ったようなおかしみを表現しました」とある。

そのテーマの具体性を問うと「今回のショーでは5人の黒人モデルを使いましたが、人種や年齢を問わず、自分が美しいと思ったものを私的にミックスしたのです。たとえば、オーバーサイズでジャンクなMA-1やナイロンジャケットにシンプルで構築的なデザインのボトムスを合わせたり。バランスを崩したスタイルで破壊と再生を表現し、いまの感覚でかっこいいな、おもしろいなと思えるものからの発想です」とデザイナーの落合宏理氏。

ちなみに2015-16年秋冬コレクションのテーマは「LOVE」で、テーマの発想は、いつもアンテナを張っているという。

FACETASM|ミラノコレクション

FACETASM|ミラノコレクション

FACETASM|ミラノコレクション

ブランドとして進化していればいい

2016年春夏コレクションでは、サマーウールを用いたストライプや格子柄、いつものストライプで構成したジャカード、オリジナルカラーのアイテムではブラウン、グリーン、ブルー、オレンジレッドを中心にブランドが表現する“儚いポップさ”も重ねて展開している。

「ファセッタズムのショーは、毎回楽しくやっているのでこうして声をかけてくれたのだと思っています。ブランドに可能性を感じてくれているのならこれ以上うれしいことはないし、海外でショーを披露したことでいろんなチャンスが生まれるはず。良いクリエイションを見せて、“服が好きなんだな”と思ってもらいたいです。自由にやっているぶん、リスクも多いですけれどね」と語る。

ファセッタズムのショーの音楽は、下北沢にある「CITY COUNTRY CITY(シティー カントリー シティー)」の店長が担当しているそうで、落合氏の高校の同級生だという。「1回目のショーから音楽をやってもらっていて、僕たちの匂いを少ない言葉で理解してくれます。純粋なシモキタの音楽好きにショーの音楽をつくってもらっている感覚で、それも僕らにしかできないチョイスだと思っています」と落合氏。

「クリエイションしていていちばん楽しいのは、何かの瞬間。ショーもブランドとしてグッと上がる手段だし、服が好きな学生と話をしていても気分は上がるし、それぞれの瞬間が楽しいですね」という。

問い合わせ先

FACETASM

Tel. 03-6434-9893

http://www.facetasm.jp/

           
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