住まいは「ととのう」ためのリカバリーデバイスへ。
DESIGN / FEATURES
2026年4月6日

住まいは「ととのう」ためのリカバリーデバイスへ。

 

THE GRANDUO|ザ・グランデュオ

 
二子玉川駅から多摩川へ向かって歩けば、五分とかからないうちに、ここが東京であることをわずかに忘れる。商業エリアの賑わいが、住宅街の穏やかさへと移り変わっていく。その境界のような場所に、ひとつの問いを抱えた建物が誕生した。
 
輻射空調システム「THEAR(シアー)」、ファイテンの「ナノメタックス技術」、そして世界初、空調機能付アイランドキッチン 「KUAIR(クエア)」による、『リカバリー・レジデンス』。リカバリーの仕組みを核心に据えた「THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA」は「どう生きるか」を問う空間として設計されている。
 
ファイテン代表の平田好宏さん、グリーンレイズ輻射空調エンジニアリング代表の藤原淳之介さん、そしてフェイスネットワーク代表の蜂谷二郎さんと執行役員の久野泰浩さんが、この空間について語り合う。
 

Text by AOYAMA Tsuzumi | Photograph by THE GRANDUO(FaithNetwork)

ラグジュアリーの意味が、ゆっくりと変わっている。フェイスネットワーク代表の蜂谷さんは、20年にわたって「デザイン」と向き合い続けてきた。
 
著名建築家との協働、一戸一設計の哲学、国内外から注目を集める空間の数々。それだけの蓄積を持ってなお、蜂谷さんはある問いを手放せなかったという。
 
2026年2月に竣工した、THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWAの外観。
 
THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWAの屋内イメージ。
 
ここに住んだ人が、自分が家を建てる時には必ず輻射パネルを入れたいなと思ってもらえるような物件を提供したい。それが、蜂谷さんがこの8年、9年という長い間、ずっと抱えてきた夢だった。
 
「デザイン性の高さを追求していった時に、やっぱりデザインには限りがないのだなとわかりました。でも、それ以上に“何か”が足りないってずっと思っていたんですよね。いろいろとチャレンジしている光、空気、水っていう観点こそ、住居に取り入れた時に、本当に人が生活したい空間っていうのが実現できるんじゃないかと考えました」(蜂谷さん)
 
蜂谷二郎(フェイスネットワーク 代表取締役) 2005年の創業以来、「ザ・グランディオ」シリーズを300件超牽引してきたビジョナリー。住まいを健康寿命を延伸させる能動的な空間へ、という命題をデベロッパーとして体現しようとしてきた。
 
 

鍾乳洞と「ととのえる空調」の話

 
日本の夏のエアコンは、もはや戦いだ。
 
「カフェとか電車の中とか、めちゃくちゃ寒いじゃないですか。飲食店でもバーッと冷気が当たって、もう止めてくれっていう時もあると思うんですけど」と風のでない空調機であるTHEARを提供した、藤原淳之介さんは笑って話す。
 
藤原淳之介(グリーンレイズ輻射空調エンジニアリング 代表取締役社長/最高経営責任者) 輻射空調システム「THEAR」の開発と普及に人生を賭けるエンジニア。「風のない空間」が人体に与える恩恵を、データと体感の両面から証明し続けている。
 
藤原さんが輻射空調について、とてもわかりやすく説明する。
 
「鍾乳洞をイメージしてください。鍾乳洞に入ると、すうっと冷気に包まれるような涼しさを感じますよね」(藤原さん)
 
夏は鍾乳洞のような涼しさ、冬は陽だまりの木陰のような温かさ。これが、THEARのもたらす新しい価値だ。
 
「風が当たり続けることにより、体内の水分は徐々に奪われていきます。水分が奪われると、気化熱の作用によって体温が低下します。
 
人間の体はデリケートであり、わずか1℃の体温の変化でも体調不良や活動低下を引き起こすことがあります。そのため、人体は本能的に身を守ろうと働き、細胞レベルで防御反応が起こります。具体的には、毛穴が閉じたり、身体が硬直したり、血管が収縮するといった変化が現れます。
 
このような状態が長時間続くと、自律神経のバランスが乱れ、いわゆる冷房病や、頭痛などの不調を引き起こす原因となります。長時間風に当たり続けることは、私たちが思っている以上に人体へ大きな負担を与えているのです」(藤原さん)
 
さらに、一般的なエアコンが室内湿度を30〜40%まで下げてしまうのに対し、THEARのシステムでは快適域とされる50〜60%に収まりやすい。(※室内環境によって変動します)「乾燥しない空間」は、喉や肌にとっても別次元の住環境だ。
 
ファイテン輻射式冷暖房システム。室内に設置されたパネルにより、空間の温度を整える。
 
今回THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWAで採用している「ファイテン輻射式冷暖房システム」は、ファイテンとグリーンレイズの共同研究によって、輻射空調パネルの表面にファイテンのナノメタックスコーティングを施し、さらに内部を循環する冷媒水にもその効果を実装したもの。通常のモデルは暖かい、涼しい、風が出ないから、心地いい。これは空調の効果だ。
 
「そこにファイテンさんの『ととのう』がプラスになることで、「ととのう空調」になるんですよね」と藤原さんは言う。1+1が、3にも4にも10にもなるような効果が得られているのだ。
 

健康対策は「やめてしまう」から住居に宿す

 
健康でいたいが、健康的生活を維持し続けることは簡単ではない。そんな矛盾を43年にもわたり観察・研究し続けてきた、ファイテン代表の平田好宏さんは言う。
 
「せっかく健康のためにと取り組まれても、大半は途中で辞められてしまうんですね。体に問題を感じた時は解決まで頑張るんだけど、良くなれば結局サボっちゃう」。だから、「継続して健康によい生活をするのであれば、住居そのものを改善するしかない」と考えてきたそう。
 
平田好宏(ファイテン 代表取締役) 43年間にわたり独自の「水溶化メタル技術」研究・進化させてきたリラックス&リカバリーの第一人者。プロアスリートのコンディショニングで培った技術を、空間全体へ実装するという新たな試みに挑む。
 
「我々が本当のリカバリーだと思っているのは、元に戻す、ということです。ストレスは長く受け続けていると、興奮しっぱなしが続くんですよね。人間は本来、健康でいようとするのが当たり前の状態なので、元の状態に戻してあげるだけで良いと考えています」(平田さん)
 
つまり、邪魔なものを取り除くことがリカバリーであり、何かを足す必要はないという考え方だ。
 
「健康に関するものはつい機能優先でデザインが後回しになったものが多いじゃないですか。それをどういう風にスマートにしようかということは我々も苦労してますね」と平田さんは正直な想いを吐露する。
 
 
今回、壁面・天井全体に「ナノメタックスコーティング」が、その問題を解消した。一度施工すれば、ナノレベルで発揮するので、建材の自由度が飛躍的に高まった。さらに、藤原さんとの共同開発で平田さんが感じたのは、輻射熱との「相乗性」だった。
 
「暑いことに対するストレス、嫌な気持ち、寒い時の不安感、体の硬さ。そういうものがパネルから出る波長によって緩和される部分があるように感じました」(平田さん)
 
寝室での施工例。リビングとは異なり、部屋のインテリアにあわせたホワイトのパネルを設置。
 
温度を変えることは、温度に対する身体の反応を変えること。この視点が、両者の技術を繋いだ。
 
「暑さ寒さを超えた無意識の快適な空気が、提供できているんじゃないですかね。実際この部屋に入った時、なぜかほっとしませんでしたか?」(平田さん)
 

KUAIR誕生、沈黙の10分間

 
どんなに高性能な設備も、部屋の中で「浮いて」見えたら意味がない。輻射空調機は従来、大型のアルミ板をそのまま壁に設置する形だった。機能はいいが、どうしてもデザインが納得できるものではなかった、そう振り返るのはフェイスネットワーク執行役員の久野さんだ。
 
「部屋の中にポンとあるとずいぶんとインパクトがあるよな、とは思いました。それならいっそ、家具みたいな扱いをすれば、パネルの存在がデザインとして一つの形になるんじゃないかと発想を変えてみました」(久野さん)
 
久野泰浩(フェイスネットワーク 執行役員 企画デザイン部) 技術と空間をつなぐ実装の担い手。本プロジェクトでは世界初のキッチン一体型輻射パネル「KUAIR」のアイデアを発案・具現化し、デザインと機能の同時達成を果たした。
 
こうして誕生したのが「KUAIR(クエア)」。世界で初めてとなる空調機能を備えたアイランドキッチンだ。もともと、キッチンは水まわり設備であるため、給水管や排水管が必要となる。一方で、輻射空調機にも給水管や結露水を排出するドレン配管が必要だ。KUAIRは、これらの設備要件を合理的に統合したユニークな製品だ。
 
キッチン設計・建築設計・空調設計といった多様な要素が複雑に絡み合う、極めて難易度の高いプロジェクトの完成までの道のりは、決して平坦ではなかった。限られた工期の中で現場は混乱する局面もあったというが、チーム一丸となって挑み、乗り越えた。
 
アイランドキッチンにもTHEARのパネルを施工。排水効率、リビングの空調効果が高いソリューション。
 
「これまでなかったものを作るわけですから、もちろん大変でした。しかし、やるんだという思いの方が強かった」と久野さんは振り返る。
 
今、最上階の住戸では、キッチンに立つだけで、そのまわりのリビングに座っているだけで輻射熱のやわらかさに包まれるという体験が生まれている。意識しなければ、ただ「なんとなく快適なキッチン」ですが、そこが良い。
 

全ての価値は、見えないものへ

 
藤原さんがグリーンレイズ輻射空調エンジニアリングを設立したのは2024年の12月。
 
「あえて社名に『輻射空調』という言葉を入れました。まだ認知度が低く、難易度が高いこの領域で勝負するなんて無謀じゃないかと言われたこともあるんですけど、『このすばらしい空調を世の中に普及させたい』という決意で取り組んでいます」(藤原さん)
 
「THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA」は、環境性能や室内の快適性、景観といった建築物の品質評価である「CASBEE」では最高位Sランクを取得。さらに住まいの断熱性や省エネ性能と太陽光発電などでのエネルギー創出により年間の一次消費エネルギー量の収支がゼロ(または限りなくゼロに近い)の共同住宅に与えられる「ZEH-M Ready」も取得。外断熱工法と輻射空調の相乗効果で、環境負荷を下げながら住む人の健康を底上げする。
 
 
THEARもKUAIRも水冷式のため、エアコンに必須とされる室外機は、パネル5台に対して1台で済むという利点も。「室外機が何層にも並んだ光景は美しいだろうか?」という蜂谷の長年の問いにも、ひとつの答えが出ている。
 
「見えない価値を評価して、それを取り入れる、本物を見抜いてくださる入居者さまが増えたなというのを、すごく実感しているんです」(蜂谷さん)
 
そして平田さんのこの一言は、執念とすらいえる思いを凝縮している。「43年間、ずっと同じこと(健康課題の解決)をやっている」。
 
人間の、元からある力に戻すという一点に向けて、43年間技術を磨いてきたファイテンと、風も音もない、究極の心地よさを追求し続けるグリーンレイズ、城南エリアで賃貸住宅の常識に挑んできたフェイスネットワークが交わって、住まいはまた進化を遂げた。
 
あなたがそこに住んだとして、最初は何も気づかないかもしれない。気づかないまま、日々が少しずつ整っていく。数週間後に「なんとなく、体調がいい気がする」と思ったとき、この家が成功したことがわかるだろう。
 
 
THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA
〒158-0094 東京都世田谷区玉川2-10-14
 
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