ALFRED DUNHILLにおもいを馳せ、福岡から京都へ|RALLY NIPPON 2014
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2015年1月30日

ALFRED DUNHILLにおもいを馳せ、福岡から京都へ|RALLY NIPPON 2014

RALLY NIPPON 2014|ラリーニッポン 2014

世界遺産、文化遺産をクラシックカーで巡る4日間

ALFRED DUNHILLにおもいを馳せ、福岡から京都へ

「日本の歴史や文化を再発見し、誇りと美しさを世界に発信する」ことをテーマに、2009年にスタートした「ラリーニッポン」。今年で開催6回目を迎えた今回、愛車1968年型のトライアンフ「スピットファイア」を駆り、モータージャーナリストの九島辰也が参加。福岡・太宰府天満宮から、京都・上賀茂神社までの4日間の自動車旅行に出かけた。

Text by KUSHIMA Tatsuya

太宰府天満宮をスタートし、上賀茂神社を目指す

アルフレッド・ダンヒルがクルマ好きであったことは周知の事実である。馬具からはじまった商品群も自動車が普及されるころには、“自動車旅行用品"に取って代わろうとした。自動車以外はすべて揃っている―――と言わしめたほどだ。

そんなダンヒルが協賛するクラシックカーイベントがある。ラリーニッポンである。世界遺産、文化遺産を巡りながらクラシックカーを走らせるちょっと“オツ"なそれは、今年第6回目を数えた。当初は東京 - 京都間を4日間で走ったが、2012年は京都 - 東京間を、昨年はついに台湾一周というルートを巡ったりもした。

そして迎えた今年のラリーニッポン2014は福岡 - 京都間というもの。太宰府天満宮をスタートし、上賀茂神社を目指す4日間の自動車旅行となった。

RALLY NIPPON 2014|ラリーニッポン  2014

RALLY NIPPON 2014|ラリーニッポン  2014

ⓒdunhill

クルマは1968年型トライアンフ「スピットファイア」。ドンガラの状態を見つけ、およそ13ヵ月かけてフルレストアレーションしたシロモノだ。トライアンフのパーツは、英国のみならずアメリカからも容易に手に入れられる。新品パーツやらリビルト品やら、なんら不自由はない。ボディカラーはブラックにした。当時なかった現代的な顔料だ。パールこそ入っていないが、それに近い光沢を見せる。言ってしまえば、某ヨーロッパプレミアムブランドで使っているものとおなじだ。

そして内装はチョコレートブラウンを選択。レザーやカーペットを自ら手に取り選んだ。シートには黒のパイピングを入れて―――。じつはこれもまたビスポークだと信じている。スーツをつくるのとおなじだ。テーラードを誂える際にシルエットからボタンの糸の色までこだわるように、スピットファイアを仕上げた。

ちなみに、このクルマのデザインを手がけたのはイタリア人カーデザイナー、ジョバンニ・ミケロッティ。ボンネットのラインがセクシーに見えるのは、そんな彼の“血"なのかも知れない。

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世界遺産、文化遺産をクラシックカーで巡る4日間

ALFRED DUNHILLにおもいを馳せ、福岡から京都へ (2)

歴史ある建造物には、おもいのほか雨が似合う

スタートは去る11月7日の金曜日。早朝、どこからともなくクラシックカーたちが太宰府へ集まってきた。ナンバープレートを見ると関東圏も多いが、関西、中国、九州地方も目立つ。今回のコースの特性だろう。常連もいれば普段こういったイベントにはあまり出てこない方々もいる。

スタート前には交通安全を祈願する。このイベントの特色でもある行事だ。頭を下げその言葉に耳を傾ける。なぜか心が穏やかになる瞬間だ。普段は立ち入れない境内にクルマごと入れたり、宮司の話を直接聞くことができるのも、このイベントの醍醐味と言えよう。

RALLY NIPPON 2014|ラリーニッポン  2014

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ⓒdunhill

クルマは1920年代から70年代のモデルが顔を連ねる。おおよそ年代順にゼッケンが渡され、それに従ってスタートしていく。きっと戦前のモデルの中にはまさにアルフレッド・ダンヒルが愛したものもいることだろう。ベントレー、ブガッティ、ジャガー、ライレー……、どれも歴史と趣のある一台だ。当時アルフレッド・ダンヒルはポリスカーとカーチェイスをしたとかしないとか、なんて話もこぼれ聞く。やんちゃな一面に親しみを感じるのは私だけではないはずだ。

コースは一部高速道路を使うも、かなりの行程で一般道をトレースする。どこまでもつづく、まっすぐな田園エリアもあれば、高低差の激しいワインディングもある。それに住宅地や商店街も。嬉しいのは、私のような関東に住む者にとって馴染みのない景色がつづくこと。

観光ガイドやニュースでしか目にしない名所を観覧することができる。下関から眺める関門海峡、車中から目にした錦帯橋、赤間神宮、参拝した出雲大社、ガイド付きの姫路城散策……。

RALLY NIPPON 2014|ラリーニッポン  2014

仕事柄、広島の三次市に着いたとき、かつてこのそばにあるマツダのテストコースを訪れたことを思い出した。そのときは先代「アテンザ」のテストドライブだったか……。

今回は天候がよく初日はオープン日和。スピットファイアは初日のゴールまで幌を開けたままで走った。2日目は雨だったが、それもまたよし。歴史ある建造物には、おもいのほか雨が似合う。3日目雨は上がったが気温は低め。ただこれもまたよし。旧いクルマのエンジンには冷たい風がやさしい。

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世界遺産、文化遺産をクラシックカーで巡る4日間

ALFRED DUNHILLにおもいを馳せ、福岡から京都へ (3)

アルフレッド・ダンヒルがもしいま生きていたら

4日目はゲストドライバーを迎えた。SUPER GTにも参戦している現役レーシングドライバーの飯田章選手。友人でもあるクルマ趣味人だ。自ら旧いクルマも複数所有している。この日も日曜日のレースを終えた晩に私のオーダーで駆けつけてくれた。

そんな彼がステアリングを握って神戸をスタートし、いよいよ上賀茂神社へ。助手席では嵐山高雄パークウェイで赤く染まった紅葉に思わず目を奪われた。日本の四季は、捨てたもんじゃない。これもまた世界に誇れる“遺産"といえる。このラリーイベント、もしかするとドライバーとコドライバー(助手席)では見える景色がちがうかもしれない。

RALLY NIPPON 2014|ラリーニッポン  2014

RALLY NIPPON 2014|ラリーニッポン  2014

ⓒdunhill

4日間の全行程は1,140km。これがラリーニッポン2014のコースである。その間、スタンプを押したり、決められたタイムで決められた距離を走る競技をつづけながら、世界遺産、文化遺産を巡った。これがまさに現代の自動車旅行かもしれない。忙しい現代社会において、イベントとして参加しなければなかなか時間をつくるのは難しい。じつにいい機会だ。

走ってみると、ダンヒルがこのイベントをサポートしている理由がよくかわる。アルフレッド・ダンヒルがもしいま生きていたら、おもしろがって参加しそうだ。クルマの運転を楽しみながら、見聞を広げることができる。それに自分のだけでなく年代の異なる多くのクルマをたくさん目にすることも、ファッションを楽しんだりも。クルマに合わせたブルゾンやシューズを選ぶのは楽しい。

クルマで旅することが人生において素晴らしい体験であることを再確認させてくれたこのラリーイベント。さて来年はどんなコーディネイトで参加しようか。そんな妄想を膨らませながら、銀座にあるダンヒル3階のアクアリウムでグラスを傾ける。それもまた“オツ"なもんである。

ラリーニッポン 2014

http://www.rallynippon.asia/index.html

           
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