草一&久美子の 輝け! 東京オートサロン2012
CAR / FEATURES
2014年12月16日

草一&久美子の 輝け! 東京オートサロン2012

東京オートサロン2012|TOKYO AUTO SALON 2012

草一&久美子のダブル清水による

輝け!東京オートサロン2012

2012年も、1月13日(金)から15日(日)までの3日間、カスタムカーのイベントでは日本最大の祭典である「東京オートサロン2012」が千葉、幕張メッセで開催された。カスタムカー、つまり市販車を改造したクルマや、そのためのパーツの展示会とされながらも、日産やホンダ、トヨタ、マツダなど大手メーカーもブースを出展し、近年、広く注目を集めつつあるこのイベント。OPENERSでは今年、清水草一、清水久美子の両人とともに取材をおこなった。

Text by SUZUKI Fumihiko(OPENERS)
Photo by ARAKAWA Masayuki

いざ、クルマ文化の大祭典へ

ほとんどの市販車には多くの人が買い、乗って、満足できるようにとメーカーの創意工夫がこらされているものだ。しかし、クルマを愛しかたは人それぞれ。購入したクルマに改造をくわえて特定の目的に特化した極端な性能を目指したり、あるいはおどろくほどに派手にかざったりするところに、クルマの楽しみを見出している人たちも存在している。また、愛車にちょっとした一味をくわえるだけで、クルマの魅力がぐっと増すことだってあるだろう。

メーカーオプションだけではカバーしきれないカスタマイズやチューニングによってもたらされるカーライフ。その楽しみをサポートするつくり手が主役になって毎年開催される祭典が「東京オートサロン」だ。

かつては違法改造車の祭典と批判されたこと、また、ほかの展示会には例がないほどに多くの、そして過激なコスチュームのコンパニオンが話題になることでも知られるこのイベント。このたびOPENERSでは、普段あまり接点のないクルマ文化に触れてみようということで、「大乗フェラーリ教」教祖にしてエコカー評論家でもある清水草一氏と、愛車のR35 GT-Rにリア4灯同時点灯キットとカーボン内装をほどこしたばかりのGT-Rマニア清水久美子さんとともに東京オートサロ2012をめぐった。この異色のダブル清水、東京オートサロンをどう見る?

金も職もないのにクルマがいじれるかっ!

草一 いやー、今年もつまんなかったねぇ。

久美子 えええ!? わたしはそこそこ楽しめましたけど。

草一 「ヴェイルサイド」が昔、ガルウイングですっごい花吹雪ぃ!とかやってたときは──

久美子 あった、ありました! なつかしぃ。

草一 おおっ、来てるなぁ! て感じがあったんだけど。

久美子 華やかでしたよね、前はいまよりも。「ヴェイル」っていうとワタシ、「トヨタ・スープラ」の最高速がどこまで伸びるか! とかフェラーリそっくりのライトのR32 GT-R用のカウルとか、日本車を改造しているイメージが強かったんですよね。

草一 若いパワーがないんだよ。むかしは日本車を改造して六甲とか走ってたヤンキーがね、いま30越えて、アルファ・ロメオの中古とか、メルセデスとか改造して、外車にいってるんじゃないかな。それでオートサロンもオッサンのためのものになった。

久美子 なりつつありますね。

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草一「ヴェイルサイドってもっと派手だったような気がするんだけど、すごい落ち着いてる。」

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久美子「ヴェイルサイドじゃないけど、花吹雪はありましたね。」

草一 あるいは、むかしの焼き直し。だからどうしても攻撃的な印象が薄いよね? こう、小さくまとまったようなね。

久美子 なっちゃってますよねぇ。規模も少しずつ小さくなって、出展者も少なくなった気がする。実際の数でいえば、むしろ増えているくらいですが。

── データによると、2012年の出展者数は361。2011年では384ですが、4年前の2008年は264で2009年は267だそうです。

草一 また、日産であるとか、メーカーがやりはじめたからね。それはまではチューナーとかショップがやってたものを。裏社会のものが表になっちゃったね。なんといってもキャンギャルの人数の少なさにほんとに驚いた! 俺は4年ぶりくらいなんで10分の1になったんじゃないかなみたいな気がする。

久美子 じゅ、10分の1ではないにしても、ワタシも3年ぶりなんですけど、だいぶ減ったようにおもいますね。前は大体3日連続きてたんですけど、初日の一般公開前ももっと混んでたし。来場者数、今年はどうでしょうね?

草一 東京モーターショーは去年よりも全然増えてよかったんですけれど、どうかなぁ。ここまでは、こういう改造を楽しむ層は減ってるんだろうか? 街中ではあんまりみなくなったからね。

── 2012年の来場者数は過去最高の25万5,709人だそうです。でも、そのすべてがクルマの改造に熱をあげているわけではないかもしれないですね。キャンギャル撮影目当ての人だっているでしょうし。

久美子 若者のクルマ離れなんていわれますしね。

草一 それはもうしょうがないことなんだよね。金がないんだから。

久美子 職までないみたいですからね。

草一 そうだよ! 金も職もないのにクルマに金かけられるわけねえだろっ!

久美子 いじりたくてもいじれないですよね!

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草一「OPENERS読者の皆様はこういうのいかがですか?」

草一 せいぜい携帯しかいじれないよねぇ。まぁだからオッサンがね、しみじみ楽しむものでいいんじゃないかなとおもうけどね。俺のフェラーリも「ちょっとホイールかえてみようかぁ」ぐらいのところなんだよ。だいたい、俺の周囲のフェラーリ乗ってる人も「ホイール換える」つっても店にあった中古品だからね。「コレつけようかなぁ?」「やすくしますよぉ」って。新品を買うって人は非常に減ってるね。節約なんだよ。グルグルまわしてるもん。

久美子 節約は草一さんのモットーですよね?

草一 モットー。それでいいっていやぁ、いいんだよね。気分が変わればいいんだから。それで1年くらい使って、またちがうのにしようかなぁって。もうヤフオク感覚なんだよ。グルグルまわしちゃう。フェラーリ自体もそうで、普通の人がね、そんなに収入がない人でも、買い換えるペースが超はやい。

久美子 そうなんですか。はじめて知りました。

草一 もう、3年前に初めてフェラーリ買いましたっていうサラリーマンの人が7台目よ。

久美子 でも最初に買うのが大変では?

草一 最初に買うのは、まぁ貯金が……大体ローンなんだよね。

久美子 家が買えちゃいますよ。

草一 そんなことないよ。フェラーリは1000万円くらいだもん。ワンルームも買えないんだよ。それに比べたらクルマはさ、頂点が買えるんだからさ。もうやめられなくなっちゃうんだよ。麻薬。それでどんどん買い換える。

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草一&久美子のダブル清水による

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力は正義なり

久美子 でもそういう状況ってオートサロン系の業界にとっては問題では?

草一 まぁそうだね、クルマを買い換えちゃうんで、1台のクルマに金かけないんだよね。でもさ、たしかにフェラーリとかランボルギーニだったら、ノーマルの、マフラー交換のみくらいのをね、どんどん買い換えていくだけでも十分刺激的だけれど、もうちょっと普通のクルマはいじんないとしょうがないんだよね。

久美子 そうなんですよ。ワタシの場合、まずノーマルの仕様のまま乗っているのがかっこわるいっておもっちゃって、いじんないとダメだったんですよ。フェラーリとかランボルギーニみたいに完成されてなかったんです!

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草一「フェラーリはいじってもまず成功しない。欠陥をなおすのはずいぶん一生懸命やったけど」

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草一「ランボルギーニはえらいなぁとおもう。12気筒ミッドシップをやってくれるんだもん」

草一 それとね、いじんないと目立てないから、しょうがないんだよ。まわりのクルマがどかないんだよ!

久美子 どかないとピキってきますよねっ!

草一 いやいやいやいや、俺はそんなことないよ。

久美子 右車線はワタシの車線みたいになってきちゃいますよね?

草一 ふーん、なってきちゃうんだ?(笑)

久美子 ええ!?

草一 だって俺が乗ってるのはいつも車高が低くて、ミニバンのバックミラーに映んないんだよ。だから全然どいてくれない。でも「ポルシェ・カイエン」とか乗っちゃうとさぁ、やっぱり、オラオラどけどけーって。ノーマル仕様でもどくわけじゃん。さらにギトギトに改造すればバッタみたいに避けるんだとおもうよ。

久美子 危険人物がキターって感じで?

草一 それがやめらんないんだよ。そうなんだよ。このザコどけーって。

久美子 快感ではありますよね。

草一 快感だよ。やっぱり力は正義なりっていうのを証明できるんだよね。世の中いろいろ権利とかシガラミがバリバリで、力が正義なんていう理屈はとおらないんだけど、ギトギトのクルマにのると、それがとおるんだよね。それは素晴らしいよね。結局そういうことなんだよ。GT-Rでもどくでしょ?

久美子 ワタシは気にしてないんですけど、どかれちゃうんですよ。乗ってると自分がどうみられてるか分からないんですけどね。

草一 結局、オートサロンの総括としては、いかに上品にどかせるか。

久美子 オラオラ系じゃなく、上品にね。パッシングもせずに。存在だけでどかせる。

草一 そういうのが一番エラい。エレガントにどかせる。

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草一「フェラーリに乗ってる金持ちはGT-Rにどう対抗するかという大きな問題がある。速さじゃかなわない」

草一 この人にはひれ伏さなきゃいけないなっていうオーラを出したいんだよね。それが総括でしょ! イライラしてるとおもうよ、金持ちの人は。なんで俺はこんな金があるのに、渋滞に巻き込まれなきゃいけないんだ! 順番まもらなきゃいけないんだ! って。だって、たいていのことは金で解決できるわけじゃない? でも渋滞はさぁ、解決できないんだよね。でもとりあえず前のヴィッツがどいてくれれば、ああチューニングしてよかったって。ヴィッツが何台よけてくれるかっていうところに存在意義がある。たまにカエルの面にションベンのムーヴがいてね、後ろなんかいっさい見てないの。そこで「ああ俺の金もここまでだったか」って。世の中、完全には支配できないなぁっていうことを知って丸く収まる。

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輝け!東京オートサロン2012(3)

オラオラのクルマとエコカーとの幸せな関係

草一 あとやっぱエコカーブームでさぁ、平均速度がジワジワジワジワさがってるよね。最近俺、エコランしてるわけよ。どんだけ燃費だせるかって、常に燃費計と戦ってるんだよ。そういう立場からすると、飛ばしてくれるオラオラのクルマって見ていて楽しいの。こう、頑張ってるんだなぁって。芸能人を見ている気分なんだよね。パンピーとして、スターが、エリートがとおったとかそういう感じで、すごい嬉しくなるんだよ。

久美子 ワタシもプリウスに乗ってるときに、そういうクルマが後ろから来ると、はやくよけなきゃ! はやくよけなきゃ! ってなります。

草一 だから抜いてくれると「抜いてくれたー!」ってさ。幸せだなぁって。お互いに幸せなんだよ。だから左側からはできれば抜かないでほしいなぁ。よけますから。すぐよけますから、左側からは抜かないでください。

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久美子「ワタシがゼロヨンやってたときはNITTOってドラッグタイヤだったんです。」

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久美子「32GT-Rの時代にトミーカイラ仕様がすごい欲しかった」

アイドルになる

草一 「カウンタック」に乗ってたときはすごかった。大喜びで手ふりながら追いかけてくる人もいた。

久美子 アイドルですよね。

草一 ほんとね。完全にスター気分で「じゃあ音きかせてやるよー」「リトラクタブル・ヘッドライトだしてやろうかぁ?」って。サービスエリアでは──

久美子 みんな集まってきて写メタイムですよ。

草一 もう、ママと子どもがあつまってきて。「○○ちゃんすごい、すごいクルマよぉ! 絶対さわっちゃダメよー」って。「絶対さわっちゃダメ」ってのがまたウレシイ。さわったらタダじゃおかないみたいなニオイが。俺こわがられたことないから。こわがられてウレシー。ウレシイよね? 超ウレシイ。子どもとママとが一家で俺のクルマと写真とってるところを写真とっちゃったりして。うれしくてうれしくて。走ってるときはさ、乱暴者のほうが期待に応えるけど、パーキングエリアではアイドル。「座っていいよー」って。自分の持ち物でさ、「ほんとですか?座ってもいいんですか?」ってさぁ、喜んでくれるなんてないじゃない。GT-Rでもそういう経験あるの?

久美子 発売から1年しかたってないときはありました。やっぱり、なんか違うんですよね。自分のクルマほめられるのウレシイですよね。

草一 人に喜んでもらえることほどウレシイことはない。結局クルマって普通の人間がすごいクルマに乗るとスターになれるってことなんだよね。車好きのあいだでは。

久美子 自分を輝かせてくれる道具ですよね。

やめときゃよかった?

草一 でもなんかオートサロンは見飽きたよね。ここから新しいクルマ文化が生まれるっていう熱気はなかった。金のランボルギーニとかさ、見たことないからよかたなぁってくらいで。だから、今年もつまんなかったねってことで。まぁもう10年くらい前からつまらないんじゃないかな。

久美子 10年前だったらワタシは楽しかった。でも、ワタシはR32 GT-Rで、ブーストアップからフルチューンまで経験してきて、最終的におもったことは、「やめときゃよかった」なんです。途中はよかった。300馬力くらいからはじまって、それに満足できなくて次が500馬力。このへんが一番楽しい。

輝け!東京オートサロン2012 12

草一「こういうのも昔っからだよねぇ」

でも700馬力、800馬力になると苦しいんです。街乗りもキツイし、レースでのみんなの期待もすごくなってきちゃって。そうすると、クルマをどれだけエスカレートさせるかっていうところが先行しちゃって、プレッシャーになる。いまのクルマってそれなりによくできてるじゃないですか。実はもう、いじるところないんですよね。それに気づいたのがやっといまごろ。でもチューニングをつづけている人は、みんな1200馬力ですよ。苦しい世界になっちゃった。

草一 1200馬力でも驚かなくなっちゃうんだよね。だから、かけるお金の量と満足度をどうシンクロさせるかなんだよ。プラス100馬力でほかのクルマがバッタみたいによければ勝利っていう感じでしょ。でも1000万円かけて、なんだバッタのよけ、たいしてかわらねぇじゃんってなると、やめときゃよかったってなる。フェラーリなんてまさにそうで、300万円の「348」だろうが、最新の「458」だろうが、フェラーリはフェラーリで変わらないんだよね、普通の人にとってはさ。でも毎年買い換えれば俺はうれしいんで。やったーって。1台にお金かけ過ぎるとそれができなくなっちゃう。

久美子 うらやましいなぁ

草一 GT-Rは毎年買い換えてもしょうがないから、フェラーリに換えたら?(笑)

           
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