レクサスGS アウトバーンをゆく|Lexus
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2014年12月11日

レクサスGS アウトバーンをゆく|Lexus

Lexus GS250 & GS450h|レクサス GS250 & GS450h

レクサスGS アウトバーンをゆく

OPENERSでもおなじみの島下泰久氏が欧州に飛んだ。聞けば欧州ジャーナリストに混じって、レクサスのあらたな「GS」シリーズに乗るためだという。走りを磨きこんだと謳われる、新型レクサス「GS」。日本の公道では知ることのできない時速200kmオーバーの世界における、その実力はいかなるものなのか。そして、ジャーマンプレミアムブランドの本丸において、その存在感はいかほどか。GS450hとGS250を欧州から紐解く、異例のインプレッションが到着した!

Text by SHIMASHITA Yasuhisa
Photographs by LEXUS & SHIMASHITA Yasuhisa

欧州向け試乗会に参加してきた!

昨年8月のペブルビーチで世界に公開され、日本では今年1月に販売された新型「レクサスGS」は、当初1カ月の受注が目標のじつに10倍の6千台に達するなど、非常に順調な立ち上がりを見せた。要因は色々と想像できるが、簡潔に言えばやはり斬新なスタイリング、そしてこれまでの先入観をくつがえす走りっぷりといったあたりに集約されるのだろう。いまもモデルによっては納車待ちの列ができている状況だという。

そのレクサスGSが、いよいよ今夏よりヨーロッパに導入されることになり、それにともなって現地のプレス向けの試乗会が開催された。これは本来、ヨーロッパのジャーナリストのためのイベントだったのだが、何度かの試乗にて、その走りの実力の高さに感心していた筆者は、「ヨーロッパでその走りっぷりを試してみたい」と単独で渡欧し、急遽、現地での試乗会に参加した。ここでは、その時に得た印象について報告したい。

レクサスGS アウトバーンをゆく|Lexus

レクサスGS アウトバーンをゆく|Lexus

集合場所にしてスタート地点として指定されていたのはドイツ ミュンヘン空港。飛行機を降り立ち外へ出ると、空港前の広場には様々な仕様とボディカラーの新型GSがずらり並んでいた。受付を済ませてルートブックを受け取る。コースはミュンヘンからオーストリアはチロル州にあるウインタースポーツのメッカ、キッツビュールまでで、走行距離は初日約260km、2日目は約180km。こうした国際試乗会としてもかなり長めの設定だった。これは「しっかり乗って評価してほしい」という開発陣のたっての願いに拠るものだということだった。

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レクサスGS アウトバーンをゆく(2)

GS450h F SPORTでアウトバーンへ

まずキーを受け取ったのは「GS450h F SPORT」である。左側のドアを開けてドライバーズシートへ身体を滑り込ませると、定評のあるインテリアが見慣れたものとは左右反転して目に飛び込んできた。嬉しいのはドライビングポジション。着座位置やステアリングホイールの角度などが吟味されたおかげで、しっくりと身体に馴染む運転姿勢をすぐに得ることができるのは右ハンドルでの印象と共通だ。それだけでも、ヨーロッパのユーザーにはしっかりと響くにちがいない。

薄曇りの空の下、空港から出て走り出すと、程なくしてアウトバーン92号線へと合流する。空港周辺だけに交通量は少なくないが、こういう所ではGS450hのハイブリッドパワートレインならではの鋭い瞬発力が、とても有り難い。アクセルペダルに乗せた右足に軽く力を入れるだけで、すぐに加速体勢に入り、スイスイと流れを縫って行くことができる。

ミュンヘン市街を迂回するかたちで通り抜け、95号線でひたすら南を目指す。

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交通量が落ち着いてきて、クルマときちんと向き合えるようになったところで、まず強い印象を残したのは、じつは乗り心地だった。日本での試乗の際には、サスペンションはやや硬めと感じていた。特にリアの重いGS450hは、路面の継ぎ目を乗り越える際などに、もう少ししなやかでもいいのでは? とおもっていたのだが、この日はそれをほとんど意識させられることがなく、むしろちょうど良い案配と感じさせたのだ。

それは速度域のせいかもしれない。日本の高速道路より格段に高い巡航速度になると、かえってすべてがしっくり来るというわけである。5年で100万マイルにも及んだという世界における走り込みの成果のあらわれと言えそうだが、それは一方で、日本では公道走行試験の機会がどうしても限定されるという現状があることをしめしているとも言えるだろう。

GS450hの真骨頂と言えば、その爽快な加速だ。前が開けたところでアクセルペダルを踏み込むと、途端に背中からグイッと押されるかのような強力な推進力がもたらされる。しかもGS450hのハイブリッドシステムはステップ付きのギアボックスとはことなる無段変速だから、加速に段付きや途切れがない。それゆえに、その勢いがまるで終わりなくつづき、吸い込まれていくかのような爽快感なのだ。

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率直に言って日本では、そんな魅力は瞬間的にか、あるいは法をかいぐぐってしか味わうことができない。しかし、ここはアウトバーン。95号線はいつしか速度無制限区間に入り、その実力をフルに発揮させることができた。速度リミッターの働く250km/hまで、途中いささかも勢いの衰えない、それこそ離陸しそうなほどの圧倒的な伸び。これぞ燃費だけではないレクサスハイブリッドの実力、そして魅力と言えるだろう。交通量の少なさを良いことに、おもい切り堪能してしまった。

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レクサスGS アウトバーンをゆく(3)

ジャーマンプレミアムと真っ向勝負できる

この唯一無二の動力性能を臆することなく存分に味わうことができた背景には、高いシャシー性能という裏付けがある。面白いのは、100km/hを超えるあたりまでは十分に満足できるものの、特筆するほどではないという印象だったスタビリティが、さらに速度域が上がっていくと、おぉーっと唸らせる鉄壁の安定感に変わってくることだ。

おそらく、それは空力のおかげにちがいない。車体を路面に押し付けるだけでなく、左右から挟み込むようにして直進性を高める。そんな効果を如実に体感できるのだ。とりわけこの領域での安心感は、ジャーマンプレミアム勢をも青ざめさせるものだと言っても過言ではない。

青ざめさせると言えば、存在感という意味でも新型GSはちょっとしたものだと感じた。

追い越し車線で速度を高めていくと、前のクルマが素直に道を譲ってくれる。本来、ドイツは基本的にそういうところではあるが、まだ相当な距離があるうちから隣の車線にスッとよけてくれるのだ。なかには、めずらしい存在だけに、一旦譲ってこちらを観察しているクルマの姿も。いずれにせよ、あたらしいフロントマスクの効果は、なかなか大きそうである。

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ワインディングロードへ

キルンベルグまで気持ち良く飛ばしてきてアウトバーンを降り、一般道へと入っていく。コーヒーストップの用意されていたバートテルツの街を抜けたあたりからが、お楽しみのワインディングロードだ。

ここではドライブモードセレクトのダイヤルスイッチを右に2回ひねって「SPORT S+」モードへ。するとステアリングの操舵力、スロットルのレスポンス、サスペンションのダンピング、さらには「LDH」と呼ばれる4輪アクティブ操舵システムが、よりダイナミックな設定に変更される。

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ステアリングの重さ、操舵力は、個人的にはこれでちょうど良いという感じ。アクセルレスポンスはさらに鋭さを増し、欲しい時に欲しいだけのトルクを確実に供給してくれる。アップダウンを繰り返しながら、徐々に標高を高めていくドイツからオーストリアにかけてのワインディングロードでは、この特性がとても頼もしい。望めばステアリングシフトパドルを使うこともできるが、少なくとも加速時にはその必要はない。一方でエンジンブレーキの欲しい下り坂では、パドルシフトがとても有用だった。

フットワークは軽快そのもの。とにかくステアリングレスポンスが活き活きとしていて、コーナーへのターンインが気持ち良い。しかも単にノーズが反応するだけでなく、自分を軸にクルマ全体が曲がり込んでいくような感覚が新鮮である。これは、まさにLDHの後輪操舵の効果だろう。

しかも、従来の4輪操舵システムでは避けられなかった挙動の一体感の欠如、違和感が99パーセントないことにも感心させられた。運転操作にたいするクルマの反応がつねに一貫していて、予期せぬ挙動を見せることがないのだ。これみよがしにハイテクを使うのではなく、自然なドライビングフィールに配慮されているのが嬉しい。時折、雨が激しく降るなかでも不安なくハイペースを保つことができたのは、まさにその恩恵である。

結局、ほとんど休むこともなく目的地のキッツビュールまで、約260kmを一気に走りきってしまった。

疲れは皆無だが、いずれにせよこの日の走行は終わり。ケンピンスキー・ダス・チロル・ホテルへとチェックインし、プロダクトプレゼンテーションを受けて1日を終えた。

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レクサスGS アウトバーンをゆく(4)

帰路、GS250

翌日も残念ながら雨ではあったが、降りはだいぶ弱くなってきた。2日目の供として選んだのは「GS250」である。ヨーロッパにおけるGSは、ハイブリッドのGS450hがメイン。そして一部地域にGS250が投入される。そこで今回の試乗会は、この2種類が用意されていたのである。

基本的には来た道を戻るというわけで、いきなり山岳路での試乗と相成ったのだが、前日にステアリングを握っていたGS450h F SPORTとくらべても、そのフットワークには意外や、それほど遜色を感じることはなかったのだった。LDHはないし、タイヤもサスペンションも穏やかな設定だが、車重が軽いだけに動きがシャキッとしているし、ステアリングの操舵感も、様々な機構を挟まないぶんダイレクト感がある。直進中でもコーナリング中でも、掌にしかと安心感が伝わってくる。こちらのフットワークも悪くない。

前日のGS450hとくらべれば絶対的なパワーに余裕はないが、このGS250とてアウトバーンで200km/h巡航を余裕でこなせるだけの力は持っている。さすがに瞬発力に欠けるのは確か。特に今どきの直列4気筒ターボエンジンへと鞍替えしたライバル達とくらべれば、そういう印象は否めない。しかし一方で4気筒ではなく6気筒の、しかも自然吸気エンジンを回し気味にして走らせていると、「これはこれでクルマの根源的な気持ちの良さのひとつだよな」というおもいも湧く。あたらしくはないが、かえってドライバーに訴えかけてくるものは濃厚かもしれない。

レクサスGS アウトバーンをゆく|Lexus

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帰りのアウトバーンは至るところで工事がおこなわれていて、本来は片側2車線の道を黄色線でむりやり3車線として使うなど、アウトバーンではいつもの、シビレるおもいをする区間が長くつづいた。こんな場面でも、ボディサイズが手頃で左右の見切りも良いことや、中立付近で引き締まったステアリングフィールのおかげで、それほど難渋はしなかった。大型トラックと壁のあいだの、クルマ1台分の幅しかないような狭さをすり抜ける時にも安心感があるのは心強い。飛ばした時ばかりでなく、こういう日常的な場面でこそ、本来の意味における走りの良さが際立つのかもしれない。

そう、なにより、もっとも進化を実感したのは、やはり走りである。彼の地では200km/hオーバーでも不安なく走れるなんて、最低限の必要条件に過ぎない。その上で、どれだけの安心感を抱かせ、個性を感じさせ、愉悦をもたらすかが重要だ。新型GSには、それらが揃いつつある。特にGS450h F SPORTの200km/hオーバーでの走りっぷりには、いくばくかの感動を覚えてしまったほどだ。

そんな風に楽しんでいるうちに、昨日の出発地点であるミュンヘン空港に到着した。

ぞくぞくと戻ってきた他の車両ともども、あらためてじっくりとその姿を眺める。前述の通り、サイズアップは最小限に抑えた新型GSだが、4輪を車体の隅に配したディメンション、そして迫力を増した顔つきのおかげで、ヨーロッパの街中で、あるいはアウトバーンを走る姿に、決して埋没してはいない力強さを感じることができた。実際、今回おなじ組になった、地元オーストリアはじめヨーロッパのジャーナリストの意見も同様であった。

レクサスGS アウトバーンをゆく|Lexus

無論、ドイツ3大プレミアムブランドが幅を利かせている中で、輝きをしめすのは簡単ではない。少なくともハードウェアの部分では、ライバル達の持つダウンサイジングエンジンであったり、より幅広いギア比を備えたAT、アイドリングストップシステムなどは早急に揃えたいし、魅力的なAWD(全輪駆動)モデルも欲しい。その上でライバルにない、なにか、たとえば、より小排気量のハイブリッドモデルを用意するなどの展開を期待したくなる。

しかしながら新型GSの完成度が、GSの、あるいはレクサスというブランドの存在感を、少しずつでもポジティブに変化させていく、大きな契機になることは間違いないと確信することはできた。それだけでも、すでに知っているクルマに乗るために、わざわざ渡欧した甲斐は十分あったとおもえたのである。

spec

LEXUS GS450h|レクサス GS450h
ボディサイズ|全長4,850×全幅1,840×全高1,455mm
ホイールベース|2,850mm
トレッド幅 前/後|1,575/1,590mm
最低地上高|130mm
最小回転半径|5.3m(LDH装着車は5.1m)
車輛重量|1,860kg(I package1,820kg)
トランスミッション|電気式無段変速
エンジン|3,456ccV型6気筒DOHC
ボア×ストローク|94×83mm
圧縮比|13.0
エンジン最高出力|217kW(295ps)/6,000rpm
エンジン最大トルク|356Nm/4,500rpm
燃料供給装置|筒内直接+ポート燃料噴射装置(D-4S)
モーター最高出力|147kW(200ps)
モーター最大トルク|275Nm
駆動用電池|ニッケル水素電池
駆動方式|後輪駆動
燃費|18.2km/ℓ(JC08モード) 20.5km/ℓ(10・15モード)
価格|700万円(version Lは790万円、F SPORTは800万円 I packageは740万円)

LEXUS GS250|レクサス GS250
ボディサイズ|全長4,850×全幅1,840×全高1,455mm
ホイールベース|2,850mm
トレッド幅 前/後|1,575/1,590mm
最低地上高|130mm
最小回転半径|5.3m
車輛重量|1,640kg(F SPORTとversion Lは1,670kg)
トランスミッション|6段オートマチック
エンジン|2,499ccV型6気筒DOHC
ボア×ストローク|83×77mm
圧縮比|12.0
最高出力|158kW(215ps)/6,400rpm
最大トルク|260Nm/3,800rpm
燃料供給装置|筒内直接燃料噴射装置(D-4)
駆動方式|後輪駆動
燃費|10.8km/ℓ(JC08モード) 11.6km/ℓ(10・15モード)
価格|510万円(version Lは600万円、F SPORTは590万円 I packageは550万円)

           
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