Nicolai Bergmann×Chico Shigeta 対談（前篇）｜見た瞬間だけでなく、記憶のなかでも美しく

Nicolai Bergmann×Chico Shigeta 対談

自分らしく、リアルに生きるという提案（前篇）

見た瞬間だけでなく、記憶のなかでも美しく（1）

フランス発のオーガニックブランド「SHIGETA」を主宰するChico Shigetaさんが、日本の女性に向けて、自然体の自分らしさを見つけるためのメッセージを発信する対談企画第3弾。今回のゲストは、デンマークで培った感性と日本文化のエッセンスを融合した独自の世界観で多くのひとを魅了している、フラワーアーティストのNicolai Bergmannさん。花や植物、自然を相手とする仕事をもつふたりが、“美しさ”について語る。　後篇はこちら→

Photographs by JAMANDFIXText by YOSHIDA Kei

「自然には不思議な力があって、気付かなくても絶対に影響を受けている」

Chico　さきほど撮影用の背景のセッティングをされているのを見ていたのですが、Nicolaiさん細かいですね。

Nicolai　細かい？

Chico　そう、神経が細やかというか。本当にいろんなところを見ていて、まるで目が30個くらいあるみたい。

Nicolai　頭の後ろにも目がありそうな感じ？

Chico　そうそう、そんな感じ（笑）。Nicolaiさんがお店に入って来ただけで空間がキュッと引き締まりますね。このお店がNicolaiさんの仕事場だからだと思うのですが、隅々にまでアンテナを張り巡らしているように感じます。でも、それって意識せずに自然とそういう風にしているんだと思うんです。

Nicolai　そうですね。隅々までチェックしようなんて意識はしてないです。

Chico　溢れているパワーを少し抑えるような精油の香りもあるんですよ。無駄に溢れ出すことなく、適度に出せるように。

Nicolai　植物の力と香りにそんな効果があるんですね。僕もよく、花の力を感じることがあります。たとえばプレゼントしたときにひとを幸せな気持ちにさせる力、たとえば寂しい気持ちのひとを元気にする力。自然には不思議な力があって、自分が気付かなくても絶対になんらかの良い影響を受けているんだと思いますよ。

Chico　植物の香りにも力があると思いますか？

Nicolai　癒されたり元気になったり、力を感じますね。ブーケを作る時に、香りを意識してハーブを入れることもあります。アップルミントとかローズマリーとか。花と香りは関係が深いので、その組み合わせをいろいろ試すのもおもしろいと思います。

Chico　香りといえば、いま目の前のテーブルにも飾ってあるバラの花は世界中で人気ですよね。とくに女性に。うちの商品でもローズウォーターを使っているものは、皆さんの食いつきがスゴい（笑）。

Nicolai　女性を惹き付ける不思議な力があるのかも。

Chico　そうですね。Nicolaiさんはなにか香水をつけていますか？

Nicolai　つけてますよ。僕がプロデュースしているフレグランスシリーズ「floral notes」の“スウィートオーキッド”とか。甘さのなかにも渋みのある香りが好きなんです。でも、それも気分によって使い分けています。天気によっても気分は変わりますから。それに、香りとおなじく、晴れの日と雨の日では作りたくなるブーケも違ってくるんです。たとえば、晴れの日は元気な明るい色、雨の日は落ち着いた色、といったように。

Chico　作品に自分の心が欲しがっているものがあらわれるってことですね。天気によって変わるってところは、ヨーロッパっぽいかも。日本ではあまり感じないけど、パリだと曇りの日はみんな機嫌が悪いんですよ。逆に晴れているときは「お？　なんか今日はサービスいいね」って（笑）。

Nicolai　デンマークでもおなじですよ。日照時間が短いせいかな。太陽が出ているのと出てないのとでは大違い。それはもう、ひとが変わるくらい（笑）。

Nicolai Bergmann×Chico Shigeta 対談

自分らしく、リアルに生きるという提案（前編）

見た瞬間だけでなく、記憶のなかでも美しく（2）

「花を見たひとの思い出に残ってほしいんです」

Chico　なんだか、こうやってお話していると、作品を通して感じていたことについてスゴく納得します。Nicolaiさんの作品って、見た目はスタイリッシュでモダンで、とても洗練されているんだけど、内側に優しさが秘められているような気がしていたんです。“between lines＝行間”に漂う表現というか。まさに、そこがNicolaiさんの作品とNicolaiさん自身の魅力なんだなって。

Nicolai　ありがとうございます。日本の女性は花をみて、まず「かわいい」って言うでしょう？　でも、「かわいい」って言葉にはたくさんの意味が含まれているんです。大人っぽいとか、シンプルとか、ちょっとシブいとか。僕はシックな雰囲気が好きなので、そこをベースにして優しい色……たとえば淡いピンクを加えたりします。そういったコントラストがおもしろいと思うんですよ。

Chico　なるほど。

Nicolai　うちの店もグレーや黒といった渋めのカラーをベースにしているでしょう。そこに女性が好みそうな、柔らかな印象のカラーを散りばめているんです。フラワーボックスもそうですね。箱は真っ黒ですから。でも、フタを開けると中は優しいカラーで溢れてる。そういったコントラストが僕自身にも当てはまるのかも。

Chico　そう、このフラワーボックス。とってもユニークな作品ですよね。Nicolaiさんはサプライズがお好きなんですね？

Nicolai　もちろん！

Chico　やっぱり！　この作品には、どんな想いが込められているんですか？

Nicolai　まずはフタを開けた瞬間にハッピーなサプライズが起こること。あとは、1回かぎりではなく、何度でも見たくなるような、印象的な花にしたいと思っています。たとえばレストランのテーブルに花が置いてあったとします。男性8人がそこで食事をしたとして、きっと誰も花について話さないでしょう。でも、それが見たこともないような色や形だったら？

Chico　たしかに気になるかも。

Nicolai　花を見たひとの思い出に残ってほしいんです。見た瞬間だけ“美しい”と感じるのではなく、あるとき「あのレストランで見た花は美しかった」と思い出してほしい。そんな願いを込めて作っていますね。

Chico　見たひとの人生に刻まれるような印象的な花……素敵ですね。

──「どんなときも基本が重要」と語るNicolaiさんの美意識に迫る、対談後篇はこちら→

ニコライバーグマンフローレッセンスフローラルアートエキシビション開催

ニコライ・バーグマン待望の作品集『FLORESCENCE』発売を記念して、9月21日（金）から23日（日）までの3日間、表参道ヒルズにてエキシビションを開催。フローラルアートの展示はもちろん、ニコライさん自身が会場空間全体をプロデュースし、観るだけではなく、作品を全身で体感できる内容となっている。また、会期中はニコライさん自身も会場に立ち、作品集を購入された方にサインもおこなっているので、この機会にぜひお話してみてほしい。きっと、気さくなニコライさんのファンになるだろう。

エキシビションの開催にさいし、ニコライさんは「今回の展示会は、ひとつひとつのフローラルアートはもちろん、会場の空間全体、そしてご来場いただいた皆様に愉しんでいただくための演出まで、そのすべてをひとつの大きな作品として作り上げます。皆様が想像しているような花の展示会とはまったく違うかもしれません。静かに鑑賞する展示会ではなく、私の作品から皆様の笑顔や驚きの表情、楽しい会話が生まれるような展示会にしたいと思います。普段お花に触れる機会が少ない方にもきっと楽しんでいただけると思います。会場で皆様にお会いできることを楽しみにしています」と語る。

いったいどんなサプライズで来場者を驚かせてくれるのか。美しいフローラルアートの世界に飛び込んで、植物のダイナミズムを体感したい。

作品集『FLORESCENCE』
価格｜9450円
発売日｜9月21日（金）
販売｜Nicolai Bergmann Flowers & Design各店舗
Nicolai Bergmann Online Store
https://www.nicolaibergmann.com/shop/

Nicolai Bergmann Flowers & Design
Tel. 03-5464-0716