岡部美代治|おかべみよじ|Vol.21|真の美をつくる生活習慣美容
Beauty
2015年1月26日

岡部美代治|おかべみよじ|Vol.21|真の美をつくる生活習慣美容

岡部美代治 連載 最終回

Vol.21 真の美をつくる生活習慣美容(1)

大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。

語り=岡部美代冶
まとめ=染谷晴美

写真=高田みずほ

おなじ化粧品を使っているのに、きれいになれるひとと、そうなれないひとがいるのはなぜ? じつはそこには快適の法則があった。連載最後となる今回は、岡部さんが研究をつづける“生活習慣美容”についてのお話です。

“生活習慣美容”をかなえる4つのキーワード

Q. まずは“生活習慣美容”の意味を教えてください

日々の生活のなかで、“自分が感じる快適なこと”を実践することで、自然に美しく魅力的に向上する。それが生活習慣美容です。化粧品の研究を長年してきたなかで、化粧品だけではきれいになれない、化粧品を活かしてきれいになるためにはもっと大事なものがあると思ったのが、そもそものきっかけでした。大事なものとは、ずばり生活習慣。私は、研究のかたわら化粧品専門店に訪れるお客さまもたくさん見てきましたが、そこで気づいたのは、きれいな人は生活習慣がきちんとしているということ。

心地よく毎日を送っているひとほど、化粧品がより効果的に働いてきれいになっていく。その現実をまえに、生活習慣と美容は深い関係があると実感しました。以来、二つの言葉が一つになって“生活習慣美容”に。具体的な活動をはじめたのは5年前です。美しさの生活習慣を考え、それを美容の原点にしようと、医師や化粧品専門店のオーナー、ジャーナリストの仲間を集めて研究をスタートさせました。

Q. 生活習慣病ではなく、生活習慣美容。一字ちがいですが、意識してのことですか?

いいえ、生活習慣美容という言葉ありきでした。しかし、話し言葉だとどうしても生活習慣病と聞きまちがえられてしまうことが多く、ちょっと問題に感じていたところ、ある日、研究会のメンバーが気づいたのです、ひらがなにしてみると、病(びょう)は小さい“ょ”で、美容(びよう)は大きな「よ」であることに。すぐに、これはいろいろとおもしろく使えそうだとなりました。

一見ダジャレのようですが、じつはちがう。この「よ」は、余裕の余(よ)でもあるし、ひとにいろんなものを与える与(よ)でもある。単純に小さい“ょ”が大きくなっただけではない、とても大きな意味のある「よ」なんですね。たとえば、ちょっと忙しくてバタバタしているときは、余裕の「よ」がありません。そんな状況は美容とってマイナス。つまり「よ」がないときれいにはなれない。余裕というのはそれくらい大事。「よ」のある生活は、美容のいちばん大事なところである“快適”を生みだします。

Q. 生活習慣美容には4つのキーワードがあるとうかがいましたが

メンバーで生活習慣と美容に結びつく言葉を出し合ったところ、それらのほとんどが4つのキーワードに収まりました。
まず1つめは、「快適の法則」。快適な生活習慣を見つにけるために、料理がおいしかったとか、お風呂が気持ちよかったとか、友だちと会って楽しかったとか、自分にとっての快適をとことん追求していく。2つめは、「時空の流れ」を意識すること。私たちは流れる時間と空間のなかで生きているので、ときには外に出て風やにおいを感じたり、季節の変化を実感することが大切。そういう瞬間をもつことで余裕も生まれ、ゆとりある行動がよい結果をもたらします。

つづく3つめは、「感と勘」を鍛える。快適と感じるときに、いちばん大事なのは感覚、いわゆる五感です。視覚、聴覚、触角、味覚を日々習慣的に鍛えることで、自分にとっての快適さを感じ取れる術を身につけます。さらには第六感。たとえばひらめきなんていうのは、余裕のあるときにしか出てこない。ですから、五感で感じるだけじゃなくて、第六感まで感じられるような、そういう余裕のある状況をつくりましょうよと。

そして最後の4つめが、「人間関係」。きれいになるためには、ひとと会うこと、話すこと、触れ合うことが必要です。なぜなら、ひととひととの関係のなかにも美容はあるから。出会いを楽しんだり、ひとに見られることを意識することで、あたらしい感覚や感性が磨かれていくのです。

岡部美代治 連載

Vol.21 真の美をつくる生活習慣美容(2)

快適は日常にいくらでもある。だからおもしろい

Q. 自分にとっての快適の追求とは、具体的にどうすればいいのでしょう

決まりごとはありません。単純に、自分が満足できること、気持ちいいと思えることを習慣にすればよいのです。たとえば、自分は音楽が好き、だから部屋にはいつもそのとき自分が聴きたい音楽が流れていると。それはまちがいなく快適ですよね。さらには、部屋に誰かを招いたときは、相手のことを考えながら、その場面にぴったりの音楽をあれこれ探す。うきうきしますよね。つまりはその瞬間も快適なわけです。

そんなふうに快適は日常にいくらでもあるんですよ。だからおもしろい。現に私にとっては、いまこうしてお話をしている時間も快適です(笑)。

Q. なるほど。では、時空の流れを意識するというのも簡単ですね

そうです。通りを歩きながらふと街路樹を見たら葉っぱがきれいだったとか、西の空を見たら夕陽がきれいだったとか、今日の街は冬のにおいがするとか、風の流れや季節の変化は、ほんのちょっと意識するだけで感じられます。

Q. きれいなものを毎日1つ見つけてみるのもいいですね

でも逆に、見つけよう見つけようとすると、その時点で快適ではなくなりますよ。習慣というのは無意識的にすること。義務にしてはいけません。私は写真が趣味で、いつもカメラをもち歩いているのですが、ふとしたときに「これきれいだな」と思えばさっと撮る。ほとんど条件反射です。要は、習慣になっているんですね。きれいなもの、こころが震えるものに出合ったらシャッターを押すという行動が、自然にからだに染みついている。自然と五感も磨かれます。


スキンケアもそう。心身の状態が日常の生活習慣のなかで快適に磨かれていると、肌は元気になるし、もしなにかあれば、なんか今日はちがうなって、その日の肌状態のちょっとした変化にも気づくことができます。

Q. それが、冒頭におっしゃっていた“きれいな人は生活習慣がきちんとしている”につながるのですね

そうです。おなじ化粧品を使っているのに、きれいなひととそうなれないひとがいる。あるいは、どんなに高い化粧品をつけてもきれいになれないひとがいる半面、決して高級ではないけれど、自分に合う化粧品を使いどんどんきれいになるひとがいる。さて、その差はなにかといえば、快適の法則。生活が充実しているひとはまちがないなくきれいです。

Q. 生活習慣病と生活習慣美容。そのちがいの大きさがだんだんわかってきました

生活習慣病を意識するのももちろん大事ですが、~しなければいけない、~してはいけない、というように決まりごとをつくりすぎるのは賛成しません。だって、そんな生活つまらないでしょ。つまらないという状況は明らかに快適ではないので、きれいは遠のきます。極端なことをいえば、たとえば病気を患っていたとしても、そのひとに「よ」があって、積極的に快適な日々を送れているなら、きれいも磨かれて、こころすこやかに魅力的な人生を歩めるはずなんです。

いずれにしても、人生は楽しむことがいちばん。すごくシンプルなのだけれど、意外とみんな忘れているんですよね。だからときには思い出してみてください、自分にとっての快適はなんなのかを。家に帰ってのビールの1杯でもよし、時間をかけたゆったりお風呂もよし。

やっぱり化粧品だけではきれいになれない。この連載では、科学的見地からひろく美容を語ってきましたが、真の美容をかなえるなら、五感で感じる心地よさやひととの触れ合いに勝るものはありません。もっともっと生活を楽しく快適に。そう生き方が、つまるところ、きれいになるいちばんの知識と言えるのではないでしょうか。

           
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