2016年版ピレリカレンダーが登場|Pirelli
Pirelli|ピレリ
2016年版ピレリカレンダーが登場
際だった女性たちの、あるがままの姿
イタリアのタイヤメーカー、ピレリは年末恒例となるカレンダーについての発表をおこなった。43回めとなる今年は、アニー・リーボヴィッツを起用。これまでのセクシー路線とはことなり、さまざまな方面で活躍する女性たちの自然な姿を捉えたものになった。
Text by OGAWA Fumio
過去の路線との決別
2016年のピレリカレンダーが発表された。ひとつのアートとして認められるのが、ピレリカレンダーの特徴だ。その理由は、写真のクオリティ。今回、写真家にはアニー・リーボヴィッツを起用。「社会的、文化的、そしてスポーツやアートの世界で、きわだった業績を残した13人の女性」(ピレリ)が被写体になった。発表会は、さる2015年11月末日のロンドンで行われた。
ピレリと聞くと、そもそも、なにを思い浮かべるだろうか。F1とかイタリアのスポーツカーという人は、言うまでもなく、クルマ好き。ミラノに本社を置くピレリは、1872年創業。1890年から乗り物のタイヤを手がけてきたからだ。ジオ・ポンティに設計を依頼したミラノのピレリビル、という人は建築好きの技術志向。そして、ピレリカレンダーという人は、アート好きで、そして女性好き、のはず。
ピレリカレンダーは、1964年版から2016年版にいたるまで、43回発行されてきた。写真家も有名どころを起用して、被写体は美女、というケースが多い。たとえば、94年はハーブ・リッツがバハマのパラダイス島で、シンディ・クロフォードやケイト・モスを撮影している。
95年はリチャード・アベドンがニューヨークで被写体にしたのは、ナオミ・キャンベルやクリスティ・ターリントンら。96年のピーター・リンドバーグは、カリフォルニア州エルミラージを舞台に、ナスターシャ・キンスキやエヴァ・ハーツィゴヴァを撮影した。
どのケースにも共通するのは、女性のセクシーさを独自の視点でとらえ、表現している点だ。口の悪いメディアは、自動車修理工場向き(部品メーカーなどはヌードカレンダーをノベルティで配ってきた“伝統”がある)と揶揄していたほどだ。しかし、2016年は大きく変わった。
「ピレリの担当者が私に連絡してきた時、彼らは過去と決別したいと話してくれました。そのとき、女性は女性でも、際だった女性の写真というアイディアが提案されました。クライアントと私が合意した後は、あっというまに物事が進みました。私が表現したかったのは、あるがままの女性たち。作為を入れずに撮ろうと思いました」
アニー・リーボヴィッツは、かつて2000年にヌードの連作をピレリカレンダーのために撮ったことがある。しかし今回は、まったく違うアプローチを採用したと語るのだった。
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際だった女性たちの、あるがままの姿 (2)
登場する女性たち
2016年のピレリカレンダーに登場した女性は13人。列記すると下記のようになる。
序文のページはヤオ・チェン(中国の俳優。「微博(ウェイボー)」で始めたポスティングは、1,700万人のフォロワー。最初の中国人の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使も務める。少数民族や、国際的な紛争での犠牲者の状況も、彼女の重要なテーマ)、1月はナタリア・ヴォディアノヴァ(ロシア出身のスーパーモデル。子どものための慈善団体「ネイキッドハート ファウンデーション」を主宰)。2月はキャスリン・ケネディ(ルーカスフィルムCEO。「ET」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ジュラシックパーク」など60を超えるヒットの制作を手がける。最新作は「スターウォーズ/フォースの覚醒」)。
3月はアグネス・ガンド(米国の慈善家。ニューヨーク近代美術館名誉理事。自身のAGファウンデーションは、文化施設や女性団体に多額の寄付をしている)。4月はセリーナ・ウィリアムズ(テニスプレイヤー。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使として、暴力防止にも取り組む)。5月はフラン・リーボウィッツ(批評家にしてライター。サビルロウで注文するコート(米国ふうに言えばジャケット)に白いシャツ、ジーンズがトレードマーク。M・スコセッシは彼女に取材したドキュメンタリー「パブリックスピーキング」(2010年)を監督)。
6月はメロディ・ホブスン(シカゴの投資会社アリエルインベツトメンツ社長。夫のジョージ・ルーカスとともに、高校生に、アートなどを教えるカリキュラムを提供)。7月はアヴァ・デュヴァーナイ(映画監督。最新作はアフリカ系アメリカ人の選挙権を求める大行進に材を取った「グローリー/明日への行進」(2014年)。ハリウッドでごく少数のアフリカ系アメリカ人監督)。
8月以降には、10代のカリスマブロガーも登場する。
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際だった女性たちの、あるがままの姿 (3)
ネット時代ならではの女性も
2016年のピレリカレンダーで目にするのは、年齢に関係なく、ひとかどの業績を達成した女性たち。ひときわユニークなのは、「オールドメディアの時代なら彼女がここに出てくるにはもっと時間がかかっただろう」と注釈がつく、米国のタヴィ・ゲヴィンスンだ。8月に登場する。
1996年生まれのタヴィ・ゲヴィンスンは、ローティーンの時にファッションブログ「スタイルルーキー」を始め、SNSを活用し、ユニークな視点で短時間で新しいメディアを作り上げた現在19歳。
9月はシリン・ネシャット(イラン生まれの映像作家。ニューヨークに暮らすが、イランの女性たちの状況に多大な関心を寄せる。2009年に監督した映画「Women Without Men」でベニス映画祭で銀獅子賞受賞)。
10月はヨーコ・オノ(アーティスト。ミュージシャン。政治活動家。「レノンオノ平和賞」は、世界中の平和活動家を対象に隔年で賞を授与する基金)。11月はパティ・スミス(詩人。ロックシンガー。環境運動家、リベラルな政治家、チベットの人たちや、アーティストたちに、その歌(とりわけ「ピープル ハブ ザ パワー」)や言動は広く支持されている)。12月はエイミー・シューマー(スタンダップコメディアン。セックスをあけすけに描写しながら、女性と男性の役割についての批評を行っている)。