NISSAN LEAF|日産 リーフ 第3回
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月15日

NISSAN LEAF|日産 リーフ 第3回

NISSAN LEAF|日産 リーフ

日産リーフを導入! 第3回

リーフは休日旅行の足たりえるのか?

リーフに乗って週末旅行に行こう。そんな話がもちあがり、OPENERS編集部有志3人は金曜日の深夜、仕事を終えてからちょっとした旅行に出かけることにした。リーフははたして休日旅行の足たりえるのか? リーフ長期リポート第3回!

text & photo by SUZUKI Fumihiko(OPENERS)

往くは東名高速道路

シティコミューターといわれる電気自動車とくらべると、ちょっと大きい日産リーフ。しかし、街中での利便性はなかなかのもので、普段から編集部では、買い出しの荷物運びや、週末の移動に大活躍だけれど、調べてみると
リーフを使って旅をしている人も多い様子。だったら編集部でも長距離移動をしてみよう。ということで、筆者ふくむ30代半ばの妻帯者3人は、金曜日の深夜、編集部を飛び出し、西に向かって走りだした。今日は家には帰らない!

とそんな今回のルートとなるのは、前回とおなじ東名高速道路であることをまずお断りしておく。というのも、リーフで長距離移動をしようとする場合、よほど時間に余裕がないかぎりは急速充電器がある施設のあいだを点々と移動しつつ先に進むという形になり、こういった移動が現在可能な高速道路はサービスエリア(SA)ごとに急速充電器が利用可能な東名高速だけだからだ。旦那がリーフで家出しても捜索は容易といえる。今回は東京都内から静岡までいったところで東京が恋しくなり、静岡で充電したあと東京へともどるというコースになった。

予想航続可能距離はめやす

さて、パネルにも大々的に表示されているせいか航続可能距離が槍玉にあげられがちなリーフなので、まずは、これについてのデータを提示したい。パネルに表示される予想航続可能距離は路面の上り下りや運転方法によって簡単に変動するため、惑わされがちだ。

今回リーフ初ドライブとなる編集KとOを標準的なドライバーとして考えた場合、ECOモードを選択して、一般的なクルマとおなじペースで走ると、平均気温3℃、暖房は電力消費を極力おさえるオートモードにして、都内、首都高をふくむ、極端な渋滞のない東名高速道路走行での電費は、高低差がほぼない区間で1パーセントあたり1.6km。5km程度の渋滞ならば電費にほぼ悪影響はなく、海老名―足柄間の平均斜度4パーセント、最大標高差420mの上り坂という今回もっとも過酷な条件でも1パーセントあたり1.1km走った。

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あいにくの悪天候。足柄サービスエリアは雪化粧

いっぽう今回もっとも電費を稼げたのは足柄から富士川までの最大標高差434m、平均斜度3.5パーセントの下り坂区間。ここをリーフドライブに一日の長がある筆者が乗って1パーセントあたり2.4kmの電費を記録した。

ここから考えると、30分以内に完了する80パーセントまでの急速充電での航続可能距離は、最低88km、最高192kmとなり、40kmから60kmごとに24時間利用可能なSAがある東名高速では、全SAで充電するならば、まず立ち往生の心配はないということになる。それどころか、電費をかせぐ走行のコツをつかめば1SAとばしも可能だろう。たしかにガソリン自動車よりも充電によってとまる時間は長くなるけれど、東名ならば1充電100円。充電による停車はエネルギーの安さとトレードオフといったところだろう。

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車窓からは美しい駿河湾の夜明け

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フロントウインドウに目を向けるとエコドライブのためどんどん抜かれてゆく。

クルマはまったく問題なし!

リーフのドライブモードにはドライブとECOの2種類があるけれど、通常の自動車のイメージに近い運転感覚なのはECOモード。ドライブモードではまさにタガが外れたかのように分厚いトルクを発揮し、かつ路面をすべるかのようにリーフが加速する。瞬発的に力が欲しい場合には素晴らしいけれど、通常走行向けには力がありすぎてやや過剰だ。また、電費的にもドライブ常用は不利にはたらく。積極的にドライブを使用した走行では下り坂の多い、足柄SAから海老名SAまでの走行でも1パーセントあたり約1kmという電費だった。

電費を稼ごうとする場合、重要なのはパネル上部に表示される円の連なった弧の形のメーターに注意をはらうことで、停車時には左から5つ目の円に点灯している白丸が右に伸びれば伸びるほど、電力消費が大きいこと、逆に左に伸びた場合は、回生ブレーキによって電力を回復していることを意味する。右にメーターを伸ばさないことが、長距離連続走行のコツだ。しかし、なんにしても60km程度の連続走行は問題ない。

居住性は、今回のように大人の男性3人が多少の旅支度をもって乗っても十分で、走行時もエンジン音がないため室内はおどろくほどに静か。高速道路走行中にCDを小音量で流してもちゃんと聞き取れるのはガソリン自動車にはない特徴だ。音質があまりよくないのは残念ではあるけれど。

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POWERと書かれたメーターが電力消費をあらわす。ちなみに右が電池残量と予想航続可能距離計、左は電池温度計だ。

唯一難点を挙げるならば、フル充電した場合は回生ブレーキがほぼ効かず、ブレーキの感覚がやや変わることで、これは一度、確認をしておいたほうがよい。

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日産リーフを導入! 第3回

リーフは休日旅行の足たりえるのか?(2)

問題はインフラ

最大のネガはやはりインフラということになるだろう。東名での充電事情にかんしては前述のとおり問題ないけれど、ひとつ気をつけなくてはいけないのは、充電器を使用するのに事前登録が必要な点。今回、旅の途中で出会ったレンタカーのリーフに乗っていた男性は、これを知らずにいて、充電器がロックされていて使えず、あわてて担当部署に連絡し、特別にロックを解除してもらったと語っていた。知らずにいれば立ち往生の可能性もあるのだから、さらなる周知が必要だろう。

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STARTボタンを押すには登録が必要だが、STOPボタンは誰でも押せる。いたずらで押さないように。

またリーフに搭載されたナビゲーションシステムは非常に優秀で使いやすいものだけれど、充電施設の情報がどうにもアテにならない。筆者は残り予想航続可能距離20kmという、早急に充電が必要な状況で、ナビゲーション上ではあるとされている場所に充電施設がないという経験をしている。そのときは深夜であったためディーラーは開店しておらず、無人駐車場だけが頼みの状況で肝をひやした。今回も、静岡三菱自動車販売静岡南店で急速充電器を利用したけれど、ナビ上ではここが表示されず、リーフの公式ホームページ上でも充電器設置台数0台と表示されるなど、いまだ情報網が未完成な感はいなめない。またディーラーを充電施設として表示する場合、営業時間、日時など、利用可能状況の表示も必要だと感じた。

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日産リーフ公式ホームページ上の情報。実際はここに1台、急速充電器があった。

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ナビでは周囲の充電施設を検索しても、三菱のディーラーは出てこないようだ。

充電器の増設を望みながら

充電料金がまちまちなのも気になるところだ。平置きの駐車場であれば、駐車料金は発生するものの充電自体は無料。三菱自動車も無料だった。いっぽう東名高速道路はカードが必要で1回100円で最大30分の急速充電のみ利用可能。日産のディーラーは80パーセントまでの急速充電で525円、通常充電が60分105円だ。

また、ささいなことかもしれないけれど、今回のように寒く、外は雨という環境では、SAの急速充電器を、ショッピングコンプレックスからもうすこし近くに設置してほしい、充電器の上に雨よけの屋根はほしい、と切におもった。

クルマ自体は電気自動車だから、という言い訳がほぼ必要のない完成度なだけに、あとはガソリン自動車の給油以上に頻繁に必要になる充電を、どれだけ快適にするか、がリーフをストレスのないクルマにするか否かの分かれ目になるだろう。せっかく各地のサービスエリアも充実してきているのだし、それを楽しみつつ、好きな音楽を聴きながら、急がずのんびりとリーフと旅行に出かける週末が、はやく東名高速とその周囲以外でも過ごせるようになることを願うばかりだ。

           
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