シトロエン、プラグインハイブリッドのSUVコンセプト「エアクロス」を公開|Citroen
CAR / MOTOR SHOW
2015年4月20日

シトロエン、プラグインハイブリッドのSUVコンセプト「エアクロス」を公開|Citroen

Citroen Aircross|シトロエン エアクロス

C4カクタスをよりタフなイメージに

シトロエン、PHEVのSUVコンセプト「エアクロス」を公開

シトロエンは、同社の設立95周年を記念するSUVコンセプトカー「エアクロス」を、4月22日から一般公開がはじまった中国の上海モーターショーでワールドプレミアした。95年前に創設以来、シトロエンは世界累計販売台数5,000万台を達成。この「エアクロス」は、そうしたシトロエンの販売台数をさらに飛躍させるポテンシャルを、全世界に向けて発信するモデルでもある。

Text by SAKURAI Kenichi

SUVのバリエーション拡大を狙うシトロエン

4月22日から中国で開催されている上海モーターショーで、シトロエンはSUVのコンセプトカー「エアクロス」を初公開した。このモデルはシトロエン設立95周年と、世界累計販売台数が5,000万台を達成したことを記念するモデルでもあるという。

全長4,580mm×全幅2,100mm×全高1,730mm、ホイールベース2,800mmと発表されたボディサイズは、本国で発売されているクロスオーバーモデル「カクタス」(日本未導入)よりも423mm長く、371mm幅広く、200mm高い数値。ホイールベースは205mm延長されている。もっともコンセプトカーの場合は、一桁の数値を省略するケースも少なくないので、正確なデータとはいえないが、おおむねひとまわりほど大きなボディサイズを持つ。この「エアクロス」は、シトロエンのSUV/クロスオーバーモデルのフラッグシップに位置するモデルになり得るとの判断が可能だ。

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

ちなみにシトロエンは、本国ではこの「エアクロス」のネーミングを持つ「C4エアクロス」をすでに販売している。C4エアクロスは、三菱「RVR」(現行モデル)をベースにした2,670mmのホイールベースを持つ全長4,341mmのコンパクトSUVで(ホイールベース値は両車同一)、このモデルの後継車と予想することも可能である。

ただし、エアクロスのボディデザインがC4カクタスの延長線上にあるといえること、そしてシトロエンはコンセプトカー発表の時点では「C4」や「C5」といった車格を車名に入れないことを最近の基本ルールとしていることなどを合わせて分析すれば、安易な車名予想などは無意味だ。

これまで発表してきたコンセプトカーを市販化に結びつけてきたシトロエンの戦略から、この「エアクロス」もほぼ確実に市販化されると見込まれるが、「C4エアクロス」の純然たる後継モデルなのか、あるいはボディサイズを理由に「C5エアクロス」になるのか、その真実を知るのはシトロエン自身のみとなる。

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

もちろん、欧州をはじめとするグローバル市場でクロスオーバーやSUVモデルのニーズが本格化しているいま、その開発や発売に力を入れているシトロエンが単なるコンセプトカーに終わらせないというのは、モータージャーナリストの間での共通した意見でもある。

C4カクタスとともに、個性派SUVをそれぞれのクラスに――と、気の早い期待もしたくなる。

Citroen Aircross|シトロエン エアクロス

C4カクタスをよりタフなイメージに

シトロエン、PHEVのSUVコンセプト「エアクロス」を公開(2)

マッシブで力強いエクステリア

いかにもマッシブで力強いタフなイメージをもたらすエクステリアデザインは、短いオーバーハングと天地を狭めたグリーンハウスが特徴だ。滑らかで調和のとれたフロントとリアのバンパーは完全にシトロエンのアイデンティティを伝え、フロントフェイスには「C4ピカソ」から採用されたあたらしいデザインのダブルシェブロンが収まる。ルーフはブラックアウトされたグリーンハウス上に乗るフローティングスタイルを採用。これはC4カクタスにも共通するイメージである。

ボディサイドには、横方向の衝撃からボディを守る「アロイバンプ」を装備した。C4カクタスでは、同様の機能を持つ「エアバンプ」をボディサイドのドア中心部に備え、それが車両キャラクターを見事に表現していたが、素材や装着場所は異なるもの、エアクロスでも同様のコンセプトをあたらしい機能と表現で盛り込んでいる。タイヤは275/45R22サイズで、コンチネンタル製。スポークをリムにまで伸ばしたデザインのホイールが、もともと大きなサイズをさらにビッグに見せる効果を発揮している。

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

また、エアロダイナミクスでは、「エアサイン」と「エアカーテン」が機能とデザインを併せ持つキーデザインになっている。エアサインはサイドウィンドウに装着されたシルバーのグラフィックコンポーネントで、ボディ表面上の空気の流れを最適化すると共にリアドアウィンドウを強調する役割を持つという。エアカーテンは車両前方に位置するエアインテークで、こちらも車内への空気の取り入れを効果的におこなう機能デバイスである。さらに前後のホイールアーチ形状やウィングミラーと呼ばれるドアミラーもテーパー形状でデザインされ、空力特性の向上に寄与するとシトロエンはアナウンスしている。

ドアは、乗員が乗り込みやすい観音開きドアを採用。一見2ドアに見えるデザインも特徴といえそうだ。

観音開きドアはコンセプトカー用のモチーフとみるべきだろうが、「FJクルーザー」や「ホンダ エレメント」などクロスオーバーやSUVでの採用例があるだけに、ショー用のデザインだと断定することはできない。

ただし、SUVとしての性能を考慮すれば、モノコックボディの場合にはボディ剛性面で不利になることは否めず(FJクルーザーはラダーフレームを採用)、こちらも市販化の際にどうなるかが楽しみなパートである。

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

Citroen Aircross|シトロエン エアクロス

C4カクタスをよりタフなイメージに

シトロエン、PHEVのSUVコンセプト「エアクロス」を公開(3)

ポップでアバンギャルドなデザイン

インテリアはクリーンでポップな印象だ。小径ステアリングホイールの奥には、12インチのパナソニック製HD液晶モニターをつなぎ合わせたメーターパネルを持ち、スイッチ類を極力廃したシンプルさが潔い。このモニターに映し出される各種グラフィックも、まったくあたらしいデザインになる。また、右側のモニターは左右に可動し、ドライバー用にセンター配置するだけでなく、助手席用のモニターとして助手席の目の前に移動できる。

シートは、センタートンネルで明確に区分されたセパレートタイプの4座で、各々独立性が確保されているほか、シート上部とヘッドレスに使用されたファブリックは、斬新でスタイリッシュな印象をもたらす。シートやセンターコンソール、ドアに用いられたベルトをモチーフにしたデザインも、このクルマのキャラクターにマッチしたあたらしいアイデア。こうしたこだわりのインテリアデザインは、いかにもシトロエンの作といった印象である。

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

Citroën Aircross|シトロエン エアクロス

パワートレインは、1.6THPとシトロエンが呼ぶ、最高出力160kW(218ps)、最大トルク275Nm(29.0kgm)を発生する1.6リッター4気筒ガソリンターボエンジンと、最高出力70kW(95ps)、最大トルク200Nm(20.4kgm)を発生する電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッド。後輪の駆動は、この電気モーターが担当する4WDシステムを採用する。

バッテリーのフル充電で50kmのEV走行が可能なほか、加速が必要な際はブースト機能により、313ps相当のパワーを引き出すことができる。0-100km/h加速は4.5秒と俊足であるいっぽうで、リッターあたり58.8kmという圧倒的な低燃費性能(MVEG混合サイクル値)と、わずか39g/kmという低CO2排出量も「エアクロス」の特徴だ。

シトロエンはこれまで、「C4カクタス」や「C4ピカソ」など、個性的なコンセプトカーを市販化してきた実績を持つ“期待を裏切らない”メーカーだ。上海モーターショーでの反響次第という前提はあるのかもしれないが、やはり量産化を期待してしまう。アバンギャルドなデザインをまとった「エアクロス」が、街を走る日が待ち遠しいとおもうのは、生粋のシトロエンファンだけにとどまらないだろう。

           
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