ランボルギーニ ウラカン初試乗|Lamborghini
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2015年1月9日

ランボルギーニ ウラカン初試乗|Lamborghini

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4

新世代ベビーランボ

ランボルギーニ ウラカン初試乗

史上もっとも成功したランボルギーニ、「ガヤルド」の後継としてジュネーブモーターショーで華々しいデビューを飾った「ウラカン」。新開発の5.2リッターV10エンジンから最高出力610ps、最大トルク560Nmを発揮、0-100km/h加速をわずか3.2秒でこなす実力をそなえたスーパーカーだ。そんな新世代ベビーランボを、大谷達也氏がランボルギーニの故郷サンタガタと、ポール・リカール・サーキットで初試乗した。

Text by OTANI Tatsuya

ミウラに比肩する美しさ

誠に申し訳ないが、ランボルギーニのデザインで心から美しいと思ったのは、この「ウラカン」が初めてかもしれない。

いやいや、1台だけ例外があった。ミッドシップ ランボの礎を築いた「ミウラ」は抜群に美しい。けれども、現代までつづくランボルギーニ デザインの系譜は、すべてその後継モデルである「カウンタック」に端を発している。

カウンタックこそは、自動車デザインの常識を根底から覆した傑作で、私も子供だった頃に大いに憧れた記憶がある。今回はイタリア・サンターガタのランボルギーニ本社を訪れ、そのミュージアムでオリジナル カウンタックを目の当たりにしてきたけれど、あのプロポーションで自動車としての機能を全うしたマルチェロ・ガンディーニ氏は文字どおりの天才だと思う。

その衝撃はすさまじく、ランボルギーニのアイコンとしていまだに親しまれているのはご存じのとおり。裏を返せば、カウンタックのインパクトがあまりに強かったために、ミウラの美しさはランボルギーニの歴史から消え去ってしまったともいえる。

Lamborghini Countach

Lamborghini Miura

そして「アヴェンタドール」が出てきた。これもカウンタックのプロポーションをベースとしていながら、そこに多角形のモチーフを散りばめるスタイリングにより、ランボルギーニ デザインの歴史にあらたな1ページを切り開いた傑作である。

繰り返しになるけれど、カウンタックもアヴェンタドールもデザイン的な観点からいえば高く評価されてしかるべき作品だが、個人的に美しいと思ったランボルギーニは、ミウラに続いてこのウラカンが2台目である。別に、それ以外のランボルギーニが美しくなかったというつもりはない。ただ、それらは視覚的なインパクトがあまりに強く、自分から近づいていって手を添えたいという気持ちがあまり沸き起こらなかった。つまり、どちらかといえば畏怖の念のほうが強かったのである。

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4

新世代ベビーランボ

ランボルギーニ ウラカン初試乗 (2)

多くの人々に受け入れられるために

けれども、ウラカンには芸術的な美しさとともに、ある種の親しみを覚える。それは、人を威圧する攻撃的なモチーフがないと同時に、まろやかで、どこか優雅ささえ漂わせているからだ。

たとえば、ウラカンを真後ろから眺めていただきたい。ダックテールと、それと階層を織りなすように組み合わされたリア コンビネーションランプはシャープな直線で構成されているけれど、リアフェンダーはふくよかな曲線を描いていて、女性的な優しささえ感じる。

また、サイドビューにもこれ見よがしなエアスクープなどは設けられておらず、すっきりとした曲面で構成されている。これはフロントセクションも同様で、チンスポイラー部のエアインテークには前作「ガヤルド」とよく似た六角形(ランボルギーニのデザイン言語)が採り入れられているけれど、ガヤルドにくらべるとずっと柔らかな造形となっていて、攻撃性を感じさせない。この辺が、ランボルギーニ ファミリーとおなじ血が流れていながらも、より多くの人々に受け入れてもらいやすい素地を形成するひとつの要因になっているように思う。

そう、ウラカンにとっては、この「多くの人々に受け入れられる」ことが、極めて重要なテーマだったのである。

なぜなら、ウラカンにはガヤルドの成功を受け継ぐという重要な使命が課せられていたからだ。

2003年にデビューしたガヤルドは、その後の10年間で合計1万4,022台が生産され、ランボルギーニ史上最大のヒット作となった。いわば、この10年間、ランボルギーニの経営を支えつづけてきたのがガヤルドだったわけだ。その後継モデルに大きな期待がかかるのは当然のこと。できれば、より多くの人に受け入れられることで、前作を凌ぐセールスを記録したいところだろう。

そうした思いが、このデザインにあらわれているといえる。

いや、デザインだけではない。そのエンジン、ギアボックス、ハンドリング、そして乗り心地に至るまで、ランボルギーニらしさを忘れない範囲で、いかに多くの人に受け入れてもらえるかがウラカン開発の大きなテーマだったと推測される。

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4

新世代ベビーランボ

ランボルギーニ ウラカン初試乗 (3)

ランボルギーニらしさは大前提

こう聞くと、「“猛牛”も堕落したなあ」と思われるかもしれないが、あの“跳ね馬”のクルマ作りに反発し、「完璧なグランツーリズモを生み出す」ことを生涯の夢としたフルッチョ・ランボルギーニ氏の意思を受け継ぐ彼らが、それほど安易なクルマ作りに手を染めるはずがない。

であればこそ、CO2削減が声高に叫ばれている現代に新作のV10 NAエンジンを送り出すなど、徹底的に“ランボルギーニらしさ”にこだわりながらも、ガヤルドを凌ぐパフォーマンスのウラカンを完成させたのである。「より多くの人に受け入れられる」というコンセプトはランボルギーニらしさを維持することが前提であって、「万人受け」が優先されたわけではない。

言い換えれば、あくまでもクルマを仕上げる際に用いる最後のスパイスとして、「より多くの人に受け入れられる」味付けをひと振りしたと考えていただいたほうが正しいだろう。

ここでウラカンのスペックをざっと紹介すると、心臓部たるエンジンは排気量5.2リッターの自然吸気V10。ただし、ウラカンへの搭載にさいして直噴にくわえてポート噴射を盛り込み、エンジンの使用条件にあわせて両者を使い分けるIDS(Iniezione Diretta Stratificata)を採用、ドライバビリティ、パフォーマンス、エミッション性能などを高次元で両立させた。

また、これに組み合わされるギアボックスは、ランボルギーニにとって初のデュアルクラッチタイプとなるLDF(Lamborghini Doppia Frizione)。スムーズでありながら素早いシフトを実現させている。

モノコックにはアヴェンタドールのようなフルカーボンではなく、カーボンとアルミを組み合わせたハイブリッドシャシーを用いている。フルカーボンにくらべればこちらのほうが生産性は高く、しかも軽量かつ高剛性であることが、ハイブリッドシャシーを採用した理由だという。

そしてもうひとつ重要なのが、各種ドライブ コントロール システムを一括して制御するANIMA(Adaptive Network Intelligent Management)の搭載である。これは、アウディのドライブセレクトによく似たシステムで、ステアリングの下部に設けられたスイッチによりストラーダ(ストリート)、スポルト(スポーツ)、コルサ(サーキット)という3つのモードを選択できるもの。

ただし、説明を聞く限り、既存のものよりはるかに先進的で複雑なシステムとなっている。ちなみに、ANIMA(アニマ)はイタリア語で“魂”を意味する。それだけ、ウラカンにとっては重要なシステムというわけだ。

Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4

新世代ベビーランボ

ランボルギーニ ウラカン初試乗 (4)

ガヤルド以上に扱いやすい

まずはANIMAでストラーダを選んで公道を走り出す。すると、その乗り心地のよさに驚くことだろう。前:245/30ZR20、後:305/30ZR20という極太・超低扁平のピレリPゼロを履いているにもかかわらず、ハーシュネスの吸収が巧みで、まったく不快な感じがしない。それでいてボディはきちんとフラットに保たれる。ウラカンの快適性は、このクラスではマクラーレン「650S」と並んで最上級のものと評価できる。

ANIMAをスポルトに切り替えてイタリアの高速道路、アウトストラーダを走る。ステアリングは直進付近が適度にダルに設定されているので、長時間走りつづけても疲れにくい。つまり、グランツーリズモとしての適性も備えているわけだ。

また、従来型よりレスポンスが改善されたというエンジンは回転数によらずじゅうぶんなトルクを生み出し、実に扱いやすい。そして、いかにもNAエンジンらしい吹き上がりのシャープさには思わず舌を巻くほど。DCT式ギアボックスの動作も狙いどおりスムーズで素早く、これも快適性の向上に大きく貢献している。

今回はポールリカールのミニサーキットでも短時間の試乗が許された。そこではスポルトとコルサの両方を試したが、フルタイム4WDゆえに基本的にはアンダーステアに躾けられているものの、大きな横Gを掛けた状態でスロットルをオン/オフすれば、これにあわせてコーナリングの軌跡も変化するので、腕に覚えのあるドライバーであれば狙いどおりのラインをトレースできるはずだ。

いずれにせよ、ドライビングシチュエーションにあわせて足回り、エンジン、ギアボックスなどのセッティングを変更できるANIMAと、ドライバビリティの高いエンジン、そしてスムーズに作動するギアボックスのおかげで、ウラカンがガヤルド以上に扱いやすいスーパースポーツカーに仕上がっていることはまちがいない。サンターガタのエンジニアたちには心から拍手を贈りたい。

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Lamborghini Huracan LP 610-4|ランボルギーニ ウラカン LP 610-4

ボディ|全長 4,459 × 全幅 1,924 × 全高 1,165 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,668 / 1,620 mm
車輛重量|1,422 kg
エンジン|5,204cc V型10気筒
ボア×ストローク|84.5 × 92.8 mm
最高出力| 449 kW(610 ps)/8,250 rpm
最大トルク|560 Nm/6.500 rpm
トランスミッション|7段LDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ)
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン
タイヤ 前|245/30R20(Pirelli P Zero)
タイヤ 後|305/30R20(Pirelli P Zero)
ブレーキ 前|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク φ380 × 38 mm
ブレーキ 後|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク φ356 × 32 mm
最高速度|325 km/h
0-100km加速|3.2 秒
0-200km加速|9.9 秒
燃費|12.5 !/100 km(およそ8.0km/!)
CO2排出量|290 g/km
価格(消費税込み)|2,970 万円

           
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