ART│ラットホールギャラリーでグレン・ライゴンによる日本初の個展を開催
LOUNGE / ART
2015年4月17日

ART│ラットホールギャラリーでグレン・ライゴンによる日本初の個展を開催

ART│オバマ大統領のセレクトにより、ホワイトハウスにも作品を展示

ラットホールギャラリーでグレン・ライゴンによる日本初の個展を開催

ニューヨークに拠点を置くアーティスト、グレン・ライゴンによる日本初の個展が3月29日(金)から6月30日(日)まで南青山のラットホールギャラリーで開催され、新作のペインティングやネオン作品、ドローイングなどが並べられる。

Text by YANAKA Tomomi

代表作のテキストを用いた抽象画やネオン作品を紹介

グレン・ライゴン個展 02

© Glenn Ligon Courtesy of the artist

1960年にニューヨークのブロンクスに生まれたグレン・ライゴンはペインティングやネオン、シルクスクリーン、写真、インスタレーション、ビデオなど多岐にわたるメディウムを使って制作することで知られている。なかでも1980年代後半から制作されたテキストを用いた抽象画のシリーズは代表作として名高いもの。また、近年でもオバマ大統領のセレクトにより、ホワイトハウスへの貸し出しが決まるなど、アメリカを代表するアーティストのひとりだ。

その作風は、人種やセクシュアリティ、アイデンティティを問うものから、従来のモダニズム絵画やコンセプチュアル・アート潮流にあるものまで多彩に展開。さらに、アメリカ文学から絵本、そして奴隷体験記に至まで幅広いソースから引用されたテキストやイメージをもちいて、アメリカの歴史や文化に対する鋭い考察をももたらしている。

本展では、ライゴンの平面作品での特徴である引用されたテキストを反復して描いた作品を展示。反復という形式的な面と、テキストそれ自体が保有する感情的な面との間で対話が生み出され、いつしか引用されたテキストは判読不能となり、抽象的なコンポジションへと昇華されてゆく。

なかでも、ひとりのアフリカン・アメリカンとしてジェームズ・ボールドウィンがスイスの小村を訪れたときの経験を綴った1953年のエッセイ『Stranger in the Village』を引用し、粉炭が塗り込められたテキスト・ペインティングの「Stranger」シリーズなど、意欲作が並ぶ。

このほかにも、光が生み出す黒と白の対比により、人種や社会、政治問題の複雑さへの隠喩を含むとともに、光と影や生と死といった相反する概念への思考をもたらす2点のネオン作品も紹介される。

言葉の影響力やひとつの言葉が世代間で異なる意味をもつことへの興味、そして文化・歴史と切り離せない自己アイデンティティといった概念を変化させることに興味をもち、アーティストとして表現しているグレン・ライゴンの世界を、日本ではじめて体感できるこの機会。自由な国でありながら、かつて奴隷制度や南北戦争など複雑な歴史をもつアメリカという国のコアな部分を、アートをとおして体感することができるのではないだろうか。

『グレン・ライゴン』
期間│3月29日(金)~6月30日(日) ※月曜休み
時間│12:00~20:00
会場│ラットホールギャラリー
東京都港区南青山5-5-3 B1
Tel.03-6419-3581

           
Photo Gallery