特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方|スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也

特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方|スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也

「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方

特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方

スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也

今年も「恵比寿映像祭」がやってくる! 第5回目を迎えるこの映像祭は、世界のさまざまな映像表現を展示する“国際フェスティバル”である。2日間の休館日を除く、2月8日(金)から24日(日)までの15日間、18カ国80人の作品が恵比寿に集結する。オウプナーズでは、今回のイベントに参加するアーティスト・鈴木康広氏と、担当キュレーター・山峰潤也氏との対談を独占でお届けする。

Photographs by YONEDA WataruText by IWANAGA Morito(OPENERS)

恵比寿映像祭への参加の契機

──今回、鈴木さんが出品されることになったきっかけは?

鈴木康広(以下、鈴木) 昨年の5月に恵比寿の書店「NADiff a/p/a/r/t」で開催した「本の消息」展で会ったのがきっかけになるんですかね? その後、山峰さんから声をかけていただきました。

山峰潤也(以下、山峰) そうですね。空間を作る方で、かつ「パブリック ⇄ ダイアリー」っていうテーマを考えていたときに鈴木さんの展示を見て、「これだな」とおもったんですね。そのときにお会いして、ちょうどノートでたくさんメモをとられているっていう話を聞いて、そのノートを使った何かを共有していくことができたら、というのが最初ですね。

もともと鈴木さんの作品を展示したいという気持ちがありましたし、ああいうパブリックスペースの展示は鈴木さんにすごく合うんじゃないかとおもっていて。チャンスをゆっくり待とうかと思っていたら、いきなり来たっていう感じですね。

「本」というかたち

鈴木 「本の消息」展を開催したのは、作品集を出版したのがきっかけなんですね。
作品集は商品なので、販促なども兼ねて展示の機会をいただけたんです。

作品集を作ったのは、身近な人に作品を見てもらったり、展覧会で作品を発表する活動をつづけていくうちに、自分のなかに展示だけでは伝えきれない部分がうまれてきたからです。

スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也02

あとは、記録として残すということ。それも創作の一部なのかなと感じつつ、「本」というかたちにまとめて、自分のアートワークを客観的に捉えたかったのかもしれません。

それがきっかけで、「本」という紙が綴じられた構造に興味を持ちはじめました。紙が1枚だけぺラッとあっても、保存できないですよね? 保存にはふさわしいんですけど、めくらなければ何も起こらない。閉じたら石とおなじというか、「固体」ですよね。

山峰 そうですよね。

鈴木 でも僕は、本の正体は「流体」だとおもっていて。人間がめくることではじめてそこに意味が生まれる。しかも人の頭のなかで勝手に動き出す。つねに人とともに変化するものだと思っていて。本には「定着」と「流動」というものが同時にあるんです。そういう関心から、「本の消息」展では、空気でページがめくれる作品を作りました。

山峰 巨大な本を使った展示もありましたね。

鈴木 あれは幅1メートル、高さ70センチぐらいかな? 通常のA4やB5のサイズを大きくした本に、波打ち際の映像を投影しました。

山峰 ノドに吸い込まれていくように波が引いていく、見た目にもおもしろいものでした。

鈴木 本やノートの表面は、僕にとって波打ち際のように「生きているもの」に感じられるんです。実際は本の内容は変化せず、本を見る側が変化しているのかなと。そんなことに薄々気づいていて、波の動きという流動的なものを投影し、再認識するきっかけになりました。その作品を山峰さんに見ていただいたときに、「本」というモチーフについてお互いの興味が合致したのかな、と。

山峰 そうですね。事前にこういうテーマでこういう場所で展示をしてほしいんですって伝えて、「本の消息」展で見たものをきっかけに、話がすすんでいきました。

鈴木 あと、日記の話にもなりましたよね。日記といえるかわからないですけど、僕は10年ぐらいずっとおなじノートを使っているんです。さすがにそれだけつづけていると、ノートについて僕なりの思いというか考えが生まれてきたのですが、その話をしたところ、とてもおもしろいと言ってくださって。

すごくプライベートな使い方をしていたものなので、誰かにそこまで話したことはなかったんです。本当は話す必要もないことというか。

スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也03

山峰 これだけいっしょにノートの話をふたりでしているんですけど、置いてあるノートを気軽にめくれない距離感がある。それぐらい鈴木さんのノートにはプライベートが詰まっている。

鈴木 でも人によってその距離感もちがうんです。勝手にパラパラめくる人もいる(笑)。でも一方で僕がめくっていても、あえて見ないようにする人もいるんですよ。

──本当に人それぞれなんですね。

鈴木 なんというか、他人のお財布に似ているような。人のお財布からお札がチラッと見えると、なんとも言えない気分になりますよね? 普段はお札という公共的な機能をもった「紙」も、ある人が所有しているうちは極めてプライベートなものになる。紙自体がパブリックとプライベートを行き来する代表的なマテリアルですね。

山峰 プライベートのステータスをあらわすものなのかもしれませんね。

鈴木 そのぐらい、ノートは僕にとっての内面というか。僕のなかでは、新品のノートというのは固まっているもので、切り口を入れて自分の内面にあるものを映し込んでいくイメージです。

ABOUT
SUZUKI Yasuhiro

1979年静岡県浜松市生まれ。2001年東京造形大学卒業。2001年NHKデジタル・スタジアムで発表した公園の […]