メディテーション山岳映画『MERU/メルー』監督 ジミー・チンインタビュー|INTERVIEW

INTERVIEW|メディテーション山岳映画『MERU/メルー』監督 ジミー・チンインタビュー

LOUNGE INTERVIEW

瞑想的・山岳ドキュメンタリー『MERU/メルー』監督インタビュー

ジミー・チンは、なぜ山に挑み続けるのか?(1)

全国で大ヒット上映中の山岳映画『MERU/メルー』は、ヒマラヤ山脈・メルー中央峰(通称「シャークスフィン」)に挑む3人のトップ・クライマーたちのヒューマン・ドキュメンタリー。同映画の監督・プロデュース・撮影、そして出演を果たしたジミー・チンによるダイナミックかつドラマチックな映像と、超人的なメンタリティを備えたクライマーたちの逞しさ、また困難に立ち向かう人間の粘り強さから、いかに「情熱を持って生きる」ことの大切さを感じさせられる作品だ。「山に登ることは、瞑想に近い感覚」。こんな監督の言葉から、“メディテーション・ムービー”とも謳われる『MERU/メルー』に込められた思いについて、世界の山岳シーンで活躍する写真家・ドキュメンタリー映像作家であり、自身もトップクライマーであるジミー・チン監督に伺った。

Photographs by TANAKA TsutomuText by ASAKURA Nao

登山家を陰で支える妻の心境も綿密に描かれる

――映画を観た感想からお伝えすると、素人目線で、登山家のみなさんの無謀とも思える挑戦に、心配を通り越して怒りまで感じてしまいました(笑)。命の危険を犯してまで、次々と難関な登山に挑む理由は何なのでしょうか。

この映画の製作意図として、まず「自分の人生に意義を持たせること」、また「意味のあることを見つけること」はとても大切である。そしてそれを見つけることができたら、本当に情熱を持って追求すべきかどうか、どんなに困難でもそれを追求することが正統化されるのかどうか、という問題提起をみなさんにしたいというのがありました。

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例えば、登山家に「なぜ山に登るのか?」と訊ねることは世界的に活躍しているミュージシャンに「なぜ音楽活動しているのか?」と聞くことと同じで、人生には白黒はっきりつけられないこともたくさんある、ということを伝えたかったんだ。

――「情熱を持って生きる」ということですよね。

そうですね。登山と音楽活動では生死をかけているかどうかという点でリスクの大小に差はあるかもしれないけれど。

――私は女性なので、どうしても無事を祈って待っている奥さん側の目線で観てしまい、始終ハラハラしてしまいました。この映画はそういう人たちにも焦点を当て、どういう心境でいるのかも伝えられていますよね。

僕の妻のチャイ・バサヒリィも、周りの人たちにそういう質問をされることは多々あります。でも彼女は僕の一番の理解者だし、登山にどういう危険があるかもよく知っている。そもそも自分の運命は全てコントロールできるわけではないし、命を懸けて、情熱を燃やして生きることの大切さを彼女はよくわかっているし理解しているので、そこまで心配していないし、むしろ応援してくれています。

――そういう陰で支えてくれる人たちの力は大きいですよね。

とても。僕も、今回共にメルー峰登頂に挑んだコンラッド・アンカーもレナン・オズタークも待っている家族や、周りの人たちが大事ということもよくわかっている。でもこういう仕事にそういった危険や不安な気持ちはつきものなのだ、ということもきちんと見せたかった。決して正統化しようとしているわけではないんだけど、人生は複雑だからね。フィルムメーカーとして、そういう部分も探求していきたいと思っています。

――もちろん、そういう不安を煽る部分だけでなく、観る人に勇気を与えたり、何かを乗り越えることの大切さを教えてくれる作品だと思います。

そうであってほしいね。僕の信念である、大きな目標を成し遂げるのに近道はないし、大変でも意義あるものを一生懸命追求することの大切さを伝えたかったから。

メンタルの強さが肉体を超える瞬間

――一度メルー峰登頂に失敗し、その後再び挑戦するまでの3年の間に悲惨な事故に会い、深刻な怪我を負ったレナン氏の凄まじい回復力は本人の強靭的な意志によるもので、人間のメンタルの強さは肉体をも超えるのだと感服しました。

本当にその通りなんだよ。僕はアスリートなどとよく仕事をするので、メンタルが肉体を超えるという現象には、よく遭遇するね。一般的に起こることではないけれど。でも、今回は正にそういう奇跡のひとつが起こる瞬間を見ました。

――メルー頂上付近でレナン氏の健康状態に異変が起き、一晩をテントで過ごしたとき、あなたとコンラッド氏はどういう心境だったのですか。

あのような状況で感情的になるのは、エネルギーの無駄遣いになる。パニックしたり慌てたりせず、冷静に何をすべきかということにエネルギーを使います。登っている間は常にどうやって下りるか、不足の事態に備えて行動している。ただ彼の状態が良くのを待つしかないという感じでしたね。

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