新型「Cクラス カブリオレ」に試乗|Mercedes-Benz
CAR / IMPRESSION
2016年7月12日

新型「Cクラス カブリオレ」に試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

きちんと“実”があるオープン4シーター

2016年3月のジュネーブモーターショーでワールドプレミアされたメルセデス・ベンツ「Cクラス カブリオレ」。日本でも6月に発表された同モデルに、小川フミオ氏が試乗した。

Text by OGAWA Fumio

4色のソフトトップを用意

2016年はカブリオレの年。そう謳うメルセデス・ベンツは、数多くの新車を発表した。2016年に入り新型「SL」「Sクラス カブリオレ」「SLK」にマイナーチェンジを施して車名も改めた「SLC」といった具合だ。これらは2016年6月初頭に日本でも発売開始されて話題になっている。そして欧州では、「Cクラス カブリオレ」が早くも登場した。

試乗会が行われたのは、イタリアはトリエステ。トリエステ海(アドリア海の一部)に面しており、背後にはスロベニア国境がある。クロアチアも近い。かつてハプスブルグを戴き、第二次大戦までは国境の移動も激しい地方だった。平和な時代になってからは海水浴客でにぎわってきたが、近年は海岸線を新たに開発し、マリーナとして富裕層へのアピールを図っている。

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

C300カブリオレの車体寸法は全長4,686mm、全幅1,810mm。全高1,409mm(欧州値)

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

空力を表すCd値は0.28とかなりよい

メルセデス・ベンツは海風の吹く海岸線とスロベニアの丘陵地帯で、優雅なCクラス カブリオレを体験させてくれた。本国でのモデルラインナップは多岐にわたり、1.6リッターの「C 180 カブリオレ」や2.1リッターディーゼルの「C 220 d」にはじまり、上は375kW(510ps)のメルセデスAMGによる「C 63 S カブリオレ」まで、豊富なバリエーションを誇る。日本にはそのなかから、「C 300 カブリオレ」「メルセデスAMGのC 43 4MATIC カブリオレ」、それに「C 63 S カブリオレ」が導入される予定と聞く。

Sクラスと同様のスタイリングテーマを持つCクラスだけに、その発展型のCクラス カブリオレもやはり流麗なスタイルが目を惹く。3層というレイヤーを持つソフトトップは4色。内装色も鮮やかな赤色があるなど、カブリオレはたんに乗るためでなく、見て(見せて)楽しむものだというメルセデス・ベンツの主張が感じられる。運転するとたいへん印象がいい。作りも驚くほどのものがある。

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

きちんと“実”があるオープン4シーター (2)

やせガマンは必要ない

メルセデス・ベンツC 300 カブリオレが、最初に運転したモデルだ。1,991ccの4気筒エンジンは180kW(245ps)の最高出力と370Nmの最大トルクを持ち、9段オートマチック変速機を介して後輪を駆動する。全長4,686mm(欧州値)の車体にとって出力は十分。1,300rpmから最大トルクを発生するため走りはスムーズだ。回転を2,000rpm以上上げると、今度はパワフルな印象が強くなる。

乗り心地もよく、路面の凹凸からの干渉は少ない。フルオープンにしても風の巻き込みが異常(という言葉も変だけれど)なほど少ないのはいたく感心させられた。乗ったクルマはオプションのエアキャップがついていた。スイッチで後席後方のスクリーンと、ウィンドシールド上端のスポイラーが立ち上がり風の巻き込みを防ぐシステムだ。こちらはより高速になると効果を発揮する。

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

内装の基本テーマはCクラス クーペに準じている

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

セダンより車高は15mm低められている

個人的にはシフトレバー近くに設けられたダイナミックセレクトというドライブモードセレクターが気に入っている。というのは通常の「コンフォート」でもいいのだが、「スポーツ」そしてその上の「スポーツプラス」を選ぶと、C 300 カブリオレが持つポテンシャルが引き出されるからだ。力強いトルクととともに乗り心地は引き締まり、操縦する楽しさが一段と高まる。とりわけワイン用のぶどう畑が多いスロベニアで、村と村とをつなぐ田舎道を走るとき、カーブではじつに気持ちよかった。

天候は目まぐるしく変わる。5月末で早くもビーチには人が来ていたが、スロベニアの丘陵地帯は意外なほどひんやりとしていた。強力なヒーターのため寒さを感じることは少ない。サイドウィンドウを上げると風が室内に入ってくる量は減るが、せっかくスタイリッシュなこのクルマなのだから、フルオープンでのカッコよさをほかの人にも見せたくなるのである。ゆえにオープンドライビングには多少のやせガマンが必要なものだけれど、Cクラス カブリオレに関するかぎりほとんど必要のない感じだ。ウィンドシールドなど絶妙な角度なのと、ピラーやサイドミラーやボディの形状に工夫があることを、試乗会会場でメルセデス・ベンツのエンジニアが教えてくれた。

ドライブの楽しさでいうと、さらに上を行くのがメルセデスAMGモデルである。

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

きちんと“実”があるオープン4シーター (3)

感情が揺さぶられるようなドライブ体験

メルセデスAMGモデルはよく売れているそうだ。メルセデス・ベンツCクラス カブリオレの試乗会で会ったメルセデスAMGの技術者は、工場設備を拡張して生産を増強したと語っていた。今回のCクラス カブリオレでも3モデルが用意される。C 43 4MATIC カブリオレ、C 63 カブリオレ、C 63 S カブリオレだ。さきに触れたように日本に導入されるのは、C 43 4MATIC カブリオレとC 63 S カブリオレである。

C 43 4MATIC カブリオレは、2,996ccのV型6気筒エンジン搭載。最高出力は270kW(367ps)、最大トルクは520Nm。フルタイム4WDシステムが組み合わされていて、通常前輪に31パーセント、後輪に69パーセントのトルクを配分する。これは素晴らしいクルマだ。V6エンジンのポテンシャルをフルに活かしていると感じる設定で、アクセルペダルの最初のひと踏みから、心が躍るような興奮を味わえる。

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

ソフトトップは3層で構成されている

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

時速50kmまでなら20秒で開閉可能のソフトトップ

加速性はよく、かつ加速していくときのフィールはじつに繊細。アクセルペダルに載せた足の微妙な動きにエンジンが即座に反応するため、脚と直結したようなスポーツカー的なドライブフィールが堪能できるのも大きな魅力だ。ハンドリングは正確だし、カーブを曲がるときも(通常の速度域なら)4WD的なネガは一切感じられない。ノーズは気持ちよく内側に入り、カーブを抜けていくときの素早さたるや、嘆息しそうになる爽快さなのだ。Cクラス クーペから導入されたV6ツインターボエンジン搭載のC 43ラインは、軽快でとてもいい出来である。

ダイナミックセレクトでは「コンフォート」で十分に速いけれど「スポーツ」あるいはその上の「スポーツプラス」を選ぶと、繊細さが際だってくる。9段トランスミッションのギアの選択も見事だ。変速のパラメーターとしては、前後の加速度や車体の傾きも考慮されるという。つねに最も太いトルクバンドを使えるので、研ぎ澄まされた感覚がある。メルセデスAMGのエンジン開発担当者はこの「スポーツプラス」モードのことを「エモーショナル ファンクション」と評した。よくわかる。感情が揺さぶられるようなドライブが出来るからだ。

さらに上には超がつくほどパワフルなメルセデスAMGモデルが用意されている。

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きちんと“実”があるオープン4シーター (4)

別世界の乗りもの

メルセデス・ベンツCクラス カブリオレのラインナップ中、最もパワフルなのがメルセデスAMGのC 63 S カブリオレだ。3,982ccV型8気筒エンジンを搭載。先に紹介したC 43 4MATIC カブリオレがフルタイム4WDであるのに対して、後輪駆動になる。最高出力は375kW(510ps)、最大トルクは700Nmを誇る。その下には基本的には同じV8エンジンを搭載したC 63 カブリオレがあるが、こちらは350kW(467ps)、650Nmと、出力とトルクともにやや控えめだ。

このV8エンジンはドライサンプにして重心高を下げるという凝った設計だ。さらにC 63 S カブリオレは電気式リミテッド スリップ ディファレンシャルと、油圧によるダイナミック エンジンマウントと、セラミック ブレーキを専用装備として搭載している。「ひとことで言うと、サーキットで使えるような装備を盛り込んでいるのです」とメルセデスAMGの広報担当者は説明してくれた。変速機は7段の「スピードシフト」。オートマチック変速機をベースにトルクコンバーターでなく湿式多板クラッチを使いシフトスピードを早めているのが特徴である。

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

C 63 S カブリオレは静止から時速100kmまでを4.1秒で加速する

Mercedes-Benz C Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ Cクラス カブリオレ

C 63 S カブリオレの3,982cc V8は最高出力375(510ps)/5,500-6,250rpm、最大トルク700Nm/1,750-4,500rpm

実際に操縦すると、別世界の乗りものだ。驚くほど速い。加速はもちろん、安定した姿勢制御によるコーナリング、強力なブレーキによる制動など、ほかのモデルとは一線を画している。ボディのよれはいっさい感じられない。補強といっても重くなってはいけないので並大抵の苦労ではなかっただろう。ここまでのパワフルなエンジンが、エレガントな感じすらある4座のフルオープンに必要か。ロジカルな答えは出ない。

ライナップは、4気筒、V6、さらにV8と豊富だ。その理由として、「ステップアップしていくユーザーがいるからです」とメルセデスAMGの広報担当者は話す。より大きな排気量や、より大馬力に憧れる心理をうまくついたのが、Cクラス カブリオレのラインナップなのだ。たんにエレガントで雰囲気重視の4人乗りフルオープンではない。そこにはきちんと“実”がある。それゆえ常にホンモノなのだ。日本にも遠くない未来、導入される予定である。

           
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