スマートグリッド関連キーワード集
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2015年3月13日

スマートグリッド関連キーワード集

ポスト3.11 私たちがめざすべき社会へ──

スマートグリッド関連キーワード集

OPENERSがいま取り組んでいる、来るべきあたらしい時代を目指すための企画「すすめ! ニッポン」。主に次世代のエネルギー活用の仕方に焦点をあてているが、なかでも重要なのが「スマートグリッド」という概念だ。「スマートグリッド」ふくめ、この分野での記事には聞きなれない単語も多い。ここでは、スマートグリッドを理解するために知っておきたい専門用語を紹介していく。

イラスト=ハマダミノル文=OPENERS

スマートグリッドとは?

スマートグリッドは、一般的に「次世代送電網」、もしくは「情報化電力網」と訳される。各家庭やオフィスなどでどの電気製品にどのくらいの電力を使っているか、使用電力をスマートメーターで“見える化”し、つねにコンピューターで管理。余った電力は、蓄電池などで蓄電しておき、電力供給が足りないときに使ったり、電力会社などに売ったりすることができる。それらのデータをネットワークをつうじてリアルタイムで可視化することにより、貴重な電力を効率的に使うことができるようになる。このように可視化され、インタラクティブになった電気のネットワークのことを、スマートグリッドと呼ぶ。

オバマ大統領が進めるグリーンニューディール政策の基盤ともなる理論で、日本では横浜市、豊田市、京都府(けいはんな学研都市)、北九州市の4カ所で、経済産業省主導の大規模なスマートグリッド実証実験がおこなわれている。普及すれば、電気を貯められるときに貯めておいて、使いたいときに使うことができるので、供給が不安定な太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの普及も見込まれる。原発の存続、撤廃にかかわらず、電力不足が懸念される現在、より注目を浴びている。

あ~


エネファーム(燃料電池)
家庭用の燃料電池。都市ガスやLPガス、灯油などから水素を抽出し、空気中に存在している酸素と反応させることで電気を作り出すシステム。発電のさいは副産物として熱が出されるが、これを給湯に利用できる。

東京ガスのエネファーム


エネルギーマネジメントシステム(EMS)
家庭内、ビル内、工場内、地域内などの限定されたエリアにおいて、個々の電気機器とネットワークでつながることで、各機器への電力供給量を最適化するシステム。スマートグリッドにおける頭脳の役割。電気機器の制御だけでなく、各機器の制御状況の「見える化」、さらには電力使用量の予測値をもとにエリア内の電力供給量を最適化することも見込まれている。


固定価格買い取り制度
エネルギー源の確保、環境汚染への対処などの一環として、おもに再生可能エネルギーにより発電された電気の買い取り価格を法律で定める助成制度。


再生可能エネルギー
太陽光、水力、風力、地熱など、自然環境のなかで半永久的に起こる現象から得られるエネルギーのこと。石油や石炭、原子力など有限で環境に影響をあたえる危険性の高いこれまでのエネルギーに対して、環境への負荷が格段に低いというメリットがある。水力発電をふくむ各国の比率は現在のところ、日本9.8パーセント、ドイツ14.4パーセント、イタリア19.5パーセント(08年のデータ)。日本は2020年代の早い時期に20パーセント、ドイツは2020年までに35パーセントを目指すとしている。


スマートシティ
スマートグリッド技術を駆使してエネルギー供給の最適化を図ることで、街全体として低炭素・省エネを実現した次世代都市。再生可能エネルギーを用いた分散型発電システムや電気自動車の充電システム、およびビル、住宅などの都市システムが結合され環境負荷の低い社会インフラが整備される。


スマートタップ
電力センサーと通信モジュールを内蔵したリアルタイムの消費電力測定器。家庭のコンセントにこのスマートタップを差し込み、電力消費量を把握したい電気製品をつなげて使用する。計測したデータはコンピューターに集約される。


スマートハウス
EMSや太陽光発電、省エネ家電、電気自動車などを導入し、家庭におけるエネルギーの需要と供給にかんする情報を効率的に管理して、最適制御する機能を備えた住宅。給湯システムにおいて必要な湯量だけを沸かすようにしたり、部屋の照明のオン・オフをひとの動きで制御する、あるいは外部の天気にあわせて自動調整したりする。


スマートメーター
通信機能を備えた電力メーター。電力会社とデータをやり取りしたり、つながっている家電製品を制御したりし、電力料金や使用量をリアルタイムに表示してくれる。スマートメーターが備える機能を活用することで、供給が不安定な再生可能エネルギーの導入や、節電が格段に容易になる。


電気二重層キャパシタ
キャパシタはコンデンサーとも呼ばれる、電気エネルギーを蓄えたり、放出したりする受動素子。電気二重層キャパシタは通常のキャパシタよりも蓄電性能が高く、エネルギーの化学反応なしに電気を電気のまま充放電することができ、原理的には半永久的な使用が可能。


ピークシフト
電力需要が最大になる時間をずらすこと。それにより原発停止などで発電能力が低くなっても電力危機を回避できるのではないかという議論が起こっている。


NAS電池
ナトリウム硫黄電池。二次電池であり、とくに大規模な電力を貯蔵する能力が高く、スマートグリッドにおける電力貯蔵用の電源としても期待される。需要量を発電量が上まわったさいの余剰電量をNAS電池に貯蔵しておき、需要量が多くなる時間帯にNAS電池から電力をとる。それによって需要がピークの時間帯の、系統への負荷低減を実現する。

日本ガイシのNAS電池。


鉛蓄電池
原材料の鉛が安価で、比較的高い電圧を取り出せるという点から、生産量世界第一位の二次電池である。短時間の大電流放電や長時間にわたる少量の放電に対しても安定している。自動車のエンジン始動、電気自動車の電力など自動車バッテリーの利用が大半。


二次電池
使いきったら充電して何度も再利用できる電池。1960年代はじめにアメリカでニッケルカドミウム(ニカド)電池が開発されたが、カドミウムは有害物質のため、90年代に入ってニッケル水素電池とリチウムイオン電池が登場して主流となった。使い捨ての一次電池に比べ、充電器が必要で製品価格も高いが、数百回から1000回程度繰り返し使用できる。


ニッケル水素電池
電極にニッケルと水素吸蔵合金を使用した二次電池の一種。ニカド電池(電極にニッケルとカドミウムを使用)の改良版として登場した電池。トヨタ自動車のプリウス、ホンダのインサイトといったHV(ハイブリッドカー)で採用されているが、EVやプラグイン方式のHV(PHV)の二次電池はニッケル水素電池よりエネルギー密度で勝るリチウムイオン電池が搭載されている。


パワーコンディショナー
太陽光発電システムやエネファーム(家庭用燃料電池)において発電した電気を家庭などで利用できるように変換する機器のこと。太陽電池が発電する電気は直流だが、これを交流に変換することで通常利用が可能な電気にする。


ヒートポンプ
空気中に散らばっている熱を汲み上げるポンプのこと。自然の熱をかき集め、少ない電力で大きな熱エネルギーを得る仕組み。圧縮すると温度が上昇し、膨張すると温度が下降する気体の性質を利用している。大気や水などの熱を集め、冷却または加熱に用いるシステム。


マイクログリッド
複数の小規模な発電施設を各地域に設け、そこで発電した電力をその地域内で有効利用する仕組み。原発などの大規模発電で広範にわたる地域に送電するこれまでのようなシステムに対し、極力それを分散化しようというもの。分散型電力網とも呼ばれる。エネルギー供給源としては再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマスなど)が利用され、蓄電池も設置される。これらの発電施設を地域内に作り、ネットワーク化して連結する。


リチウムイオン電池
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う電池のこと。一般には蓄電池(二次電池)用途として使われることが多い電池。高い電圧と、高いエネルギー密度が特徴。日産のリーフやトヨタのプリウスなどEVやプラグインハイブリット(PHV)に採用されている。

A~


BEMS
「Building Energy Management System」。情報技術を駆使して業務用ビルなどのエネルギーを管理するシステム。ビルなどの建築物において、各種設備のエネルギー使用状況を把握し、電力供給量を制御することでビル内の快適な環境を維持しながら省エネを推進することができる。「ビルエネルギー管理システム」ともいう。


CEMS
「Cluster Energy Management System」。風力発電や大規模太陽光発電など系統電力の供給側と、戸建住宅、マンションやオフィスビル、電気自動車充電システムなどの需要側のシステムを連携させ、管理、運用する。


FEMS
「Factory Energy Manegement System」。工場において、従来おこなわれてきた受変電設備のエネルギー管理にくわえて、生産設備のエネルギー使用状況・稼働状況を把握し、エネルギー使用の合理化および工場内の設備・機器のトータルライフサイクル管理の最適化を図るためのシステム。


HEMS
「Home Energy Management System」。家庭内のエネルギー管理をおこなうために、家電製品や給湯機器をネットワークでつなぎ、自動制御する。各機器の電気使用量を「見える化」して需要家に対して省エネ意識を喚起したり、状況に応じて家電製品への電力供給量を制限することでエネルギー消費量を抑制できる。


PHV
「Plug-In Hybrid Vehicles」。電気自動車とハイブリッド車の双方の長所を併せもつエコカーで、通勤や買い物など近距離走行であれば電気とモーターで走るため、ガソリンはほとんど使わない。走行中は二酸化炭素を出さない。ガソリンは中長距離走行のさいにのみ使用するため、ガソリン車にくらべ燃費もきわめてよい。また、EVと同様に家庭用コンセントなどの外部電源で充電できる。トヨタの プリウスや、GMのシボレー ボルトなどがある。


SNV
次世代のEV(電気自動車)やプラグインハイブリッドカーについての呼称。スマートグリッドの導入に向け、日米をはじめ各国で実証実験がおこなわれているが、そのさい、蓄電池の役割を果たすものとして想定されているのが、EVやハイブリッドカーに搭載されている高性能バッテリーである。スマートグリッド社会において、EVやハイブリッドカーは蓄電池として、ネットワーク化された電力網の一端を担うことになる。それは、自動車が歴史上はじめて、「走る」こと以外の役割、つまり電力供給といういわば社会的な役割を担うおとを意味する。昨今一般化してきたTwitterやfacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)では、ユーザー同士がオンライン上で情報をやりとりする。そのアナロジーとして、電力網とつながりインタラクティブに電気エネルギーを出し入れできる次世代のEVをOPENERSではSNVと命名。

           
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