連載・和醸和楽|第22回 つねに自然体で醸す「雅山流」
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2015年5月27日

連載・和醸和楽|第22回 つねに自然体で醸す「雅山流」

なにごとにもとらわれない自由な発想で自由奔放?

つねに自然体で醸す 「雅山流」

今回は、雪深い山形県米沢市にある有限会社新藤酒造店の醸し出す「雅山流」の精神論!? についてのお話です。

文=和醸和楽Photo by JAMANDFIX(TOP)

酒造り=音づくり? 切っても切れない共通点

先日、米国滞在中にうれしいニュースが入ってきました。全国新酒鑑評会金賞受賞&インターナショナルワインチャレンジ2部門金賞受賞。昨年に引きつづいての受賞で、必ずそれを目指しているわけではありませんが、蔵人たちの技術が認められたようで製造責任者としてうれしい限りです。

じつはわたくし、地元でバンドなるものをやっております。根っからの音楽好きで小学生のころから独学でピアノを覚え、現在では共同出資のバンドスタジオまで構える羽目に……。えっ楽器ですか? キーボード・ベース・サックス・ドラムひと通りなんでもやりますよ! なんせ弱小バンドのバンドマスターですからなんでもできないと! まさに地方の中小地酒蔵とそっくりではないですか!!!

ヤル気・感性・学ぶことが大事

我われ地方の小規模な“地酒蔵”は、酒造期間も冬季のあいだだけ。決して多くの従業員を通年雇用できるほどの体力はありません。その結果出稼ぎ季節労働であるいわゆる“杜氏”という集団が重宝されてきたわけですが、それらの人口減少もあり現在では自前で蔵人を育成する蔵元や、後継者が自ら製造に携わる蔵元が多くなってきています。考えてみれば当然ですよね。外部のバンドに演奏依頼するより、自前のバンドで演奏したほうが自分の音楽がつくれるのですから。酒造りもまた同じです。

私もまた冬場は製造責任者としてなんでもやります、しなくてはなりません。朝7時から夜中3時まで、洗米・分析・麹・酒母・もろみ・事務・その他雑用、なんでもお申し付けください。小学3年生時より祖父から蔵に入れられ叩き込まれた感性と経験を生かし、グーの音の出ないほど、きちっと指導させていただきます。

最近、弊社では毎年1名ずつ通年雇用で社員を採用しています。すべて新卒のまだ何色にも染まっていないフレッシュな人材です。やはり通年で清酒製造に携わる人間は大切です。わたし色に染めさせていただきます。バンド経験者なら考えるはず。どんなに下手なバンドでも一曲一曲を何百回とともに練習を重ねれば、お互いの目や仕草を見るだけでなにをしたいかが理解できるし、たとえなにが起ころうとも曲は破綻しないのです。私は自分の蔵もまた、そんな蔵に仕上げて行きたいと、常々そう考えています。

魂に火をつけろ!

そんななかで「雅山流」は仕込まれています。雅山流の「山流」とは、自然のなかの万物を固定した物事で捕らえてはならないという教えです。一見、山は動かず・川は流れているように見えるが、長い時間をかければ山も動くし川も流れを止めるときもある。酒造りもまた同じくひとつの物事に凝り固まって酒を醸してはならないと思います。

つねにひとより2歩前・2ランク上の酒質を目指し、クリーンでフレッシュなまるで音楽のようなさまざまなスタイルの自由な酒を醸す、それが私の酒造りのスタイルであり、なにごとにも捕らわれない自由な発想でつねに自然体で醸す酒、そんな思いが込められ命名されたのがこの「雅山流」です。

時代は否が応でも前進します。伝統は保守的に守れば朽ち果てます。本当の意味で伝統を守るということは、受け継いだ伝統を自分なりに見つめ直して咀嚼(そしゃく)し・それを力としあらたな伝統を積み上げ・次の世代へより良いものとして受け渡すことだと私は思います。

お近くにまだ残っていませんか? 「当社デハ江戸時代カラ続ク伝統ヲ頑ナニ守リ……」なんていまだに言っているひと。

さあ皆さん、今日も楽しいお酒とのひとときが待っています。皆さんの魂を完全燃焼にいざなう今夜のパートナーはどんな日本酒でしょう。熱く激しく燃やすのか? 綺麗に美しく燃やすのか? それはあなたの魂次第です。

SAKURA × 永富千晴対談(後編-2) 「絶対注目のスーパー美容液」

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ウェブマガジン オウプナーズでの「和醸和楽 SAKEアカデミー」の連載で毎回紹介する日本酒(720mL)を3名さまにプレゼント。

ご希望の方は下記の応募フォームよりご応募ください。
当選された方には追ってご連絡させていただきます。

応募期間|2010年7月1日(木)~7月30日(金/午後12時)まで

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たくさんのご応募ありがとうございました。

           
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