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2015年5月7日

第11章 アメリカの憂鬱と複雑な思い

第11章 アメリカの憂鬱と複雑な思い

文=今 静行

──先進国でアメリカだけが人口増大、なぜか?──

アメリカの人口は昨年(06年)秋、初めて3億人を突破しました。2億人を超えたのが1967年なので39年かかっていることになります。

西欧諸国、日本などの先進国では人口の減少傾向が続いており、少子化が最大関心事になっています。もっともフランスのように微増という国もありますが、あくまでも例外的流れと言い切れます。
人口が増加すれば経済成長をもたらす、つまり経済という輪がひろがり消費や労働力を生み出し、活力ある社会をつくり出すことができます。

若い世代の拡大は、高齢化社会では社会保障費負担に大きく貢献してくれます。心強い限りです。経済活性化の原動力そのものです。

どうして先進国の中でアメリカだけが飛び抜けて人口が増えているのでしょうか。
アメリカの特異な事情があることをよく知る必要があります。

じつは移民の激増によってアメリカ全体の人口を増やしているのです。1967年以降に増えた1億人の過半数は、移民とその子孫によるものです。外国生まれでアメリカ国籍を取得した移民たちなのです。

白人の減少と移民の増加

ここで具体的に数字をあげてみます。

アメリカでは女性が一生に産む子どもの数(合計特殊出生率)は、白人が1.8に対し、アフリカ系アメリカ人(黒人)が2.2、スペイン語を話す中南米系のヒスパニック系が3です。
2040年代には人口4億人突破も予想されていますが、50年には移民を主としたいわゆる有色人種(少数民族)と白人との割合はほぼ同じになります。中国、韓国、日本などのアジア系も増え続けています。
それ以降は間違いなく逆転することがはっきりしています。

日本のような単一民族国家とは本質的に違うのです。人種構成の変化が政治、経済、文化などあらゆる面に大きな影響を与えることになることが当然です。
これまでの白人優位のアメリカは移民によってとって代わられる時代が訪れるのです。すでにヒスパニック系の政治パワーは目覚ましいものがあります。

白人の高齢化に伴い、その年金を人口多数派になる移民層が支えることになるのです。政治的きしみがアメリカを大きく変えることになるでしょう。過去の延長線上に立つアメリカを見、アメリカと付き合っては戸惑うことになります。実態をよく知る努力を怠らないようにしましょう。

参考までに示しておくと、アメリカの合計特殊出生率は2.05(04年)で、日本は1.25(05年)です。日本を大きく上回っています。
またアメリカの人口は国連推計によると、中国約13億2千万人、インド約11億1千万人に次ぐ世界第3位です。

           
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