EVENT|仏教の聖地でプロジェクションマッピング
EVENT|仏教の聖地でプロジェクションマッピング
高野山、開創1200年の記念イヤーを彩る光と音の響演
昨年、古墳でプロジェクションマッピングをおこなうという、前代未聞の企画を成功させたクリエイティブ・チーム「COSMIC LAB」。空海が高野山を開創してから1200年目の今年。彼らが再び歴史的建造物を舞台に、最新の映像技術を駆使した壮大な映像体験を繰り広げる。
Text by TANAKA Junko (OPENERS)
空海が一目で魅せられた高野山
幼いころから「世のなかの困っている人びとをお救いしたい」と願って止まなかった弘法大師空海。国内での修行に飽き足らず、唐(中国)にわたったのは804年のこと。そこで真言密教の第七祖、恵果和尚(けいかかしょう)から直々に仏の教えを受けることになる。
遍照金剛(へんじょうこんごう)の法号を授けられた空海は、「真言密教を日本に広める」という使命をもって806年に帰国。その拠点を築くのにふさわしい場所を求めて、各地を巡っていた矢先、大和国(奈良県)で出会った狩人から紀州(和歌山県)によい場所があることを聞く。その狩人が連れていた白と黒、2匹の犬の案内で高野山へたどり着いた空海。
「山の上とは思われない広い野原があり、周囲の山々はまるで蓮の花びらのようにそびえ、これこそ真言密教を広めるのに適したところだ」と喜びを露わにしたという。早速、高野山を真言密教の根本道場に定め、多数の弟子や職人とともに、木を切り、山を拓いて、堂塔を建て、釈迦を造った。816年のことだ。
空海が高野山開創に込めた願いはふたつ。ひとつには、国、社会の安寧とそこに住まう人びとの幸福のために祈りを捧げる場所=寺院を建立すること。もうひとつは、国、社会の安寧とそこに住まう人びとの幸せに寄与しうる人材を育成する場所=道場を建立することである。実際、空海は約20年にわたって、高野山を拠点として、全国に仏の教えを説き、上は天皇から下は老若男女の苦しめる者、悩める者にいたるまで、救いの手を差し伸べつづけたという。
かつてない光と音の響演!
高野山開創に際して、空海が真っ先に整備に着手したのが「壇上伽藍(だんじょうがらん)」。高野山全体をひとつの寺院として見たとき、その境内の核にあたる場所で、古くから信仰の中心として大切にされてきた。
そして、道場のシンボルとして建てたのが「大塔」。胎蔵大日如来(たいぞうだいにちにょらい)が祀られた周りを四仏が取り囲み、16本の柱には十六大菩薩、四隅の壁には密教を伝えた八祖(空海)像が描かれ、堂内そのものが立体の曼荼羅(悟りの世界や仏の教えを示した図絵)として構成されている。
道場が開かれて今年で1200周年。記念イヤーを祝して、高野山では現在さまざまな催しがおこなわれている。そのハイライトと言えるのが、5月12日(火)から17日(日)まで開催される「高野山1200年の光」である。
総合演出を手がけるのは、大阪を拠点にプロジェクションマッピングや参加型のインスタレーションなど、国内外でさまざまなアートプロジェクトを手がけるCOSMIC LAB。VJでプロデューサーのColo GraPhonic、インタラクティブ・アーティストのJamie Goodenough、ライティング・アーティストのYAMACHANGをはじめ、多数のアーティストが一丸となって、かつてないスケールの映像表現に挑む。
今回のために開発したという、最新の映像技術を駆使して映し出すのは、空海が心血を注いで大塔の堂内に描いた立体の曼荼羅。植木陽史の叩く和太鼓のリズム、僧侶が読み上げる声明(節のついたお経)と連動して、3D空間にレーザーアニメーションとマッピング映像が展開されていくという。
1200年のときを越え、参拝者と空海を結ぶ光と音の響演。空海の遺徳に思いを馳せながら、奇跡の瞬間を見届けたい。