TOKYO PREMIUM BAKERIES|第16回 天然酵母パン エリゾー

TOKYO PREMIUM BAKERIES|第16回 天然酵母パン エリゾー

カラダもよろこぶ、東京の自然派素材パン屋

第16回 erizo|天然酵母パン エリゾー

住宅街のまんなかにある 「100%あこ天然酵母」 のパン屋さん

東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第16回は、京王線のつつじヶ丘駅からバスで10分ほど走った住宅街のまんなかにある『エリゾー』。食べることの大好きな安部枝里さんが、修行の末に自宅敷地内に開いた「あこ天然酵母パン」のお店です。

取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ

「ここのパンなら食べられる」と具合の悪い子どもが言ったパン

京王線のつつじヶ丘駅から、深大寺行きのバスに揺られること数分。調布市立上ノ原小学校の真裏の住宅街に、洒落た一軒家が建っている。グリーンのドアとドアまでの長いアプローチは、小さなフレンチレストランのようだ。ここは安部枝里さんが実家を改装して店舗としての設えを整え、2007年4月にオープンした「あこ天然酵母100%」のパン屋さん、『エリゾー』だ。

29歳まではOLをしていたという安部さん。もともとおいしいものが大好きで、祖父母も自宅でパンを焼き、自分も好きでパンを焼いていたそうだ。この辺りは近所にパン屋さんがなかったこともあり、だんだんと地域の知り合いに頼まれてパンを焼くようになる。そして他店での修行の末、まわりのひとたちにも後押しされ、晴れてパン屋のオープンとなった。

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『エリゾー』のパンは、100%「あこ天然酵母」を使用。クセがなくふっくらとした小麦の味が濃いパンだ。小麦は主に北海道江別産の国産小麦ハルユタカのブレンド粉、甘みはミネラルが豊富な甜菜糖、塩は沖縄の天然塩シママースと、できるかぎり身体にやさしく納得のいく素材を厳選している。

人気の「いよかん」は、洗双糖で仕上げた四国産の「いよかんピール」を使用。「いよかんピール」のほろ苦さが爽やかな一品だ。またカスタードクリームは卵の黄身だけを使って毎朝炊き上げ、チョコレートクリームもベルギー・カレボー社製の高級チョコレートを使用した自家製だ。「値段は張るんですが、やっぱりつくるからにはおいしいものでなくちゃ!」と、安部さんは微笑む。

パンの生地には卵と牛乳を使用していないため、『エリゾー』のパンはアレルギーのある子どものお得意さんも多いそうだ。

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店内を対面式とパンを自分でお盆に載せる両方のスタイルにしたのにはワケがある。「主婦にとって、自分の気に入ったパンをポイポイッとお盆に載せる瞬間が、ちょっと贅たくでワクワクするんですって。日々の暮らしのなかで、そういうのっていいでしょう?」。お母さんの友人のアドバイスだそうだが、言われてみると、わかる気がする。また、身体の不自由な方や小さなお子さんのためには、対面で会話しながら、スタッフがパンを取ってお盆に載せているそうだ。

いま、安部さんのお守りがわりとなっているのは、母方のお祖父さんの遺品のなかから見つかった、パンのつくり方を細かく書き留めたノートと、昭和22年発行の『パンのつくり方』の本だ。安部さんの記憶では、家でパンを焼いていたのはお祖母さんで、このノートを見るまで、お祖父さんがここまで本格的にパンの勉強をしていたことを、知らなかったそうだ。

「祖父は、昭和10年前後に大学の教授にパンのつくり方を習いに行き、物のない戦後すぐのころには配給の粉でパンを焼いて、近所に配っていたようなんです。祖父は結局パン屋にはならなかったけれど、わたしがいまこうしてパン屋をしていること、喜んでくれていると思うんですよね」と安部さん。おいしいものをつくってお客さんに食べてもらう充実感に溢れている笑顔は、底抜けに明るい。

住宅街のまんなかで「からだに安心でおいしい『エリゾー』の天然酵母パン」が気軽に手に入る、つつじヶ丘の人たちは本当にラッキーだ。おいしいものがひとを笑顔にすることを実感できる、なんとも頼もしい地域のパン屋さんである。

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『天然酵母パン エリゾー』

東京都調布市柴崎2-28-4
Tel. 042-441-0396
10:00~(土曜 11:00~)
日・月・祝休み
(京王線、つつじヶ丘駅より深大寺行きバス
「上ノ原小学校」停留所下車徒歩5分)
http://www.erizo.jp/